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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第116話 波乱の入学式#1

 情報屋の話を聞いてから数週間。

 僕達が必死こいてしていた試験勉強もついに終わりを迎えた。

 入学試験をやり終えたのだ。非常に難しかったけど。


 その試験でやった実技試験を測るのは当然問題ない。というか、あれは周りの実力が低すぎて浮き過ぎてしまうので調整しなければいけないのが大変だったが。


 問題は筆記試験の方だ。この学院街オストレアにやってきてから数週間が経ち、その間ずっと勉強していたがそれでもちんぷんかんぷんな部分は多かった。


 しかし、もう本番なので分からないところは一度飛ばして解ける問題を全て解いた後に余った時間でトライしようという方針に切り替えて四苦八苦しながらもなんとか無事に試験を終えた。


 そして、試験を終えてからしばらくぶりののんびりを味わっている所にやってきたのは試験の結果通知。

 一人一人に宛てられて書かれたような封筒の中に試験結果が入っているようだ。


 僕達は一つの部屋んに集まりそれぞれの名前が書かれた封筒に入っていた合否結果の紙を手に持つと緊張の瞬間を迎えた。


「開けるよ?」


 そう皆を見ながら聞いてみれば僕達異世界男子組は緊張した様子でコクリと頷いた。

 ヨナとミクモさんはなんだかもう結果が見えてるみたいな感じで、メイファは単純に興味が無い感じだったが。


 僕は「せーの」と声をかけて三枚折りにされていた紙を広げていく。

 そこに書かれていたのは―――合格であった。


「「「「よっしゃああああ!」」」」


 僕達異世界男子組は盛大に喜んでいく。どうやら皆も合格結果が出たようだ。

 セナとミクモさんは言わずもがな。メイファも受かっている。


 今更ながら、どうして学院に潜入するのにわざわざ正規の方法で入学しているのか説明しておこうと思う。


 僕達悪役(ヴィラン)なら試験をするよりも当然ながら潜入した方が早い。

 しかし、それは学院のセキュリティシステムによってより困難にさせられたのだ。


 学院に使われてるセキュリティシステムは学院側が独自に作った()()()()()な魔法陣なのだ。

 つまりは警備を抜けるためにその魔法陣を解除しなければいけないのだが非常に時間がかかる。


 さらに言えば、それは学院に侵入するためのセキュリティ。

 僕が目指そうとしているのは学院図書館の奥にある禁書エリア。

 そこは尚のこと厳しいセキュリティになっているだろう。


 つまり部外者として学院に居続けるのはリスクが高すぎるんだ。

 よって、この作戦が出来ないことを前提とした正規の侵入方法である“学院試験を受ける”という方法も同時進行で進めていたのだ。


 そして、結果は御覧のとおり。僕は何度かこっそり学院に近づいて色々と試してみたが最初の魔法陣ですら数十分じゃ済まなそうだったからこっちに切り替えたってわけ。


 それに学院にいること自体はそう悪いことでもない。むしろ、メリットの方が高いかもしれない。

 というのも、学院のオリジナル魔法陣の情報を見つけられるかもしれないからだ。


 オリジナル魔法陣の基本は複数の既存の魔法陣を上手いことこねくり回して作成したもの。

 つまりその既存の魔法陣の内容さえわかれば解除するのもそう時間がかからないかもしれないというわけだ。


 また、僕達の能力のヒントもあるかもしれない。

 これまでの僕達の錬魔による魔法の修行はどれもゾルさんが持っていた限られた知識の中だけだ。


 しかし、これから入るのは学び舎。つまりはさらにパワーアップさせるヒントが残ってるかもしれない。


 それに情報というのは何も学院の仕組みが分かってる教師ばかりではない。

 学院の中でどうやって教師にバレないように裏をかいて悪さをしようかという学生もいるはず。


 その人達の情報はある種特殊なものだ。だから、それらの情報から何かヒントが得られるかもしれない。


 とまぁ、これらのメリットと先ほどのデメリットを比較しても学院に正規の生徒として入った方がお得というわけだ。コソコソ暮らさなくていい利点も大きい。


 合格結果が届いてからまた数日、僕達に学院の制服が届いた。

 僕達異世界男子組の方は黒の制服で、ヨナ達の方は白の制服だった。

 ちなみに、この色の違いは男女に寄ってのものじゃない。

 単に優劣の証を分かりやすくしたものだ。


 あの学院は様々な場所から学びを得るために人がやってくる。

 その中には当然貴族から平民と身分の違いが出てくる。亜人という種族の違いも出てくる。


 だけど、あの学院は中立街なので亜人による攻撃はご法度。

 そこで顕著に表れるのが人間同士の身分差別だ。つまりは貴族の人間が自分達より身分の低い者を虐げるもの。


 この黒と白の制服は基本的には入学段階での成績でより優秀な教育を受けさせるものかどうかを決めるためのもので、亜人であるヨナ達は純粋なる能力値から白の制服に選ばれた感じだろう。


 しかし、僕達は違う。能力値を抑え気味にやってたとはいえ、それ以上に出自もわからない存在に白の制服を与えることなど貴族優遇の教師が許さなかったのだろう。


 白の制服の方が授業内容のレベルが高いが、その代わり様々な部分で優遇される。商品の割引券やら黒より優先して物を買えるとか。


 逆に黒の制服はその制服を着ていること自体が負け犬の証みたいなもので冷遇さが半端ないらしい。

 一部では黒服に限り通常の値段より高く売る店もあるとかないとか。


 ともかく、そんな黒服に選ばれてしまった僕達だが、別に言うほど困っていない。

 というのも、僕達が学院に入るのは禁書エリアに入りガレオスさんから聞いた話の謎―――約500年前にこの世界で起きた真実を知るためだ。


 それはつまり僕がそのエリアにあるセキュリティシステムを突破するまでの時間を表している。

 ま、もともとそっちが目的なんだからこの世界での授業なんて二の次よな。

 そんな感じで黒の制服であろうと特に問題ないってわけ。


 もちろん、白の制服の方が様々な点で優遇されるけど、僕が目指そうとしてるのは禁書エリアでそこは白の制服であろうと問答無用でしょっ引かれるらしいしね。関係ないんだよ。


 僕はその制服を<空間収納>でしまうと合否結果が出たことをソラスさんに伝えに行った。

 彼女とは僕がこの街を去るまでは長い付き合いになる。だから、一応報告をと思って。


 ソラスさんの娼館を訪れていつも通りの暗号で裏口から迎えられる。

 そして、VIPルームに案内されると学院に無事入れたことを伝えた。


「へぇ~、良かったじゃない。ということは、これからは学生を抱けるのね」


「一度も身を預けた記憶がありませんが」


 ソラスさんは相変わらずかましてくる。ここにミクモさんを呼んでみようかと考えたこともあるけど、ただただ会話がカオスになりそうなので止めておいて正解だったかも。


 ソラスさんは口に咥えたキセルを話してふぅーと煙を吐いていく。そして、僕の気持ちを見透かしたように言葉を伝えてきた。


「わかってるわ。これから学生の身としてこういう場所は行きづらくなるんでしょ?」


「そうなる。これまでは数日おきに細かく情報を集めてたけど、これからは僕が直々に学院に入るからね。その代わり頼みがある」


「頼み?」


「学院の教師の情報を集めて欲しい。後、今じゃないけど僕が調べて欲しいと言った人物に関しての情報も」


 ソラスさんはキセルを吸いながら僕の話を聞くとふぅーと息を吐いて口を開く。


「対価は?」


「僕に出来ることならなんでも」


 そう返答するとソラスさんはニヤッとした顔をしてキセルの灰を灰皿に捨ててそれを置くとまるで誘惑するように体を動かしていく。


 スリットの入った衣装から艶めかしく白く長い脚が顔を覗かせて、股間あたりが服で隠れてるのをいいことに大胆に脚を開いていった。


「なら、気持ちよくさせてぇな。こっちもずっとおっさん相手ばかりで若いエキスが欲しいのよ」


 要するに僕にここで抱けと求めている。どれくらい本気かはわからないが。

 顔を見れば微笑み、ふくよかな胸はとてつもない母性を放っている。


 ゴクリ......これは危ないなぁ。仲間に同じタイプのミクモさんがいなかったらヤバかったかもしれない。


 しかし、これがもし本気だったら不味いから僕に出来る限りの方法で答えよう。

 といっても、これといったやり方もわからないので、そこは自分の経験からってことで。


「わかりました」


 そう答えるとソラスさんは「え?」と意外そうな顔をした。やっぱり本気じゃなかったか。

 しかし、ソラスさん的にはこっちがその気になろうとも“それはそれであり”って感じなのが厄介。

 ま、別に僕がやるわけじゃないけど。勝手に自滅するだけ。


 ソラスさんの手を取ると僕はそっと告げる。


「どんな結果であろうとも恨まないでくれよ?」


 僕はその手に<催眠><幻惑><催淫>と三つの魔法陣を転写していく。

 それが終わると僕はそっとその部屋を出た。


 扉越しに聞こえてくるのはソラスさんの嬌声。

 もちろん、相手はソラスさんが“頭の中で思い浮かべてる人物”なので僕ではない。

 ま、きっとソラスさんは僕が行動してると思ってるんだろうけど。


 ......なんだか無性に惜しいことをしたような気になってきたけど、いや絶対そんなことはない......とはいいきれないのが男の定めなのであろうか。


 僕はこの声をこれ以上聞ける精神が無かったのでそっと従業員に声をかけて帰っていった。


 それからまた数日後、僕達は入学式を迎えた。場所はもちろん学院街のシンボルともいえるオストレア学院。


 そこには大規模なシアタールームのような場所があり、僕達黒の制服はシアターの一番上の方で眼下に見えるマイクらしき魔道具の置かれた教壇を見つめていた。


 教団に近い中段位置には白の制服の生徒がずらーっと並んでいる。

 しかし、そのさらに前の場所は三十人ほどの席を残して空席であった。


「蓮、なんか空いてる席あるけどなぜかわかる?」


「いや、その情報に関しては知らない。前にお前が言ってた『お偉いさん方』の席じゃないのか?」


 うん、まぁそこぐらいしか予想のしようが無かったと言いますか。だけど、ソラスさんの情報は優秀だからそれで間違いないはず。


 そう思っているとガタンとすぐ近くのドアが開き、そこから人が入ってきた。遅れた人かな? とか思っていれば一人の生徒が言った。


「あ、来た―――勇者達だ」


「「「「っ!?」」」」


 その言葉にその方向を見れば確かに戦闘に勇者である聖朱音の姿があった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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