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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第4章 エルフの森

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第100話 死なない男

 明らかに異様な魔力の気配。それもこの場所を潰しにかかっているような数百もの数の魔力がこちらに向かっている。


 しかし、それ自体は大したことではない。恐らく、康太とアイがいれば事足りるだろう。

 問題はその中に紛れた確かな強い魔力。これは二人には荷が重い。


「康太、アイ、この場所を任せたよ」


 二人の言いつけを破る形になるけど、それで皆が助かるんだったらそれで構わない。

 そう決意を固め、僕は<魔力探知>の陣魔符にこっそりと付与していた<転移>の魔法陣を起動して魔力の近場に移動していく。


「あ......」


 移動した瞬間、魔物がすぐそこまで迫っていた。

 あっちゃ~、完全に移動タイミング間違えた。これ早くしないと轢かれる。


 僕はすぐさま魔物が通る場所に<爆破>の魔法陣を転写していった。

 そして、その魔法陣の奥側に<麻痺><毒>の魔法陣も設置。


「仕上げは<催眠>の魔法陣」


 そして、<爆破>の魔法陣の手前にその魔法陣を設置すれば簡易迎撃トラップは完了。

 それらは“魔物が魔法陣の上に通過した時”と条件付けしてあるので、その魔物がその場所を通るまでそこに魔法陣が仕掛けてあることは肉眼では把握できない。


 ちなみに、僕は全部把握してるけどね。というか、目に魔力を宿せば僕じゃなくても認識できる。

 もっとも戦闘中に中々意識しづらいと思うけど。ましてや魔物はね。


 それからすぐに魔物が最初の<麻痺><毒>エリアの魔法陣でその場に硬直しながら毒を受けていく。

 そこに僕は<水槍>の魔法陣を自分の近くの木に転写して一斉掃射。


 それで手前の魔物は削れたけど、その次はその死体を飛び越えてやってくる。そのタイミングで<爆破>の魔法陣が起動する。


 うわぁ、エルフの皆さんごめんなさい。燃やさなきゃ大丈夫でしょって考えてて爆破の後のこと考えてませんでした! なんで爆破は行けると思ったんだか。


 そして、それで周辺の魔物がもろもろまとめて吹っ飛ぶとその数秒後に次の魔物の集団が。

 う~む、やっぱりこの魔物は操られてる感じだな。明らかに目の前の死に対して動じなさすぎる。


「やっぱ、首謀者らしき所に向かうのが一番だな。すぐ目の前にいたから相手したけど、後は康太とアイに任せよう」


 僕は<収納>の魔法陣から刀を取り出すとその強い魔力の方へと向かった。


 その際、チラッと<催眠>トラップを見ると眠ってしまった魔物を踏んづけて次の魔物が僕を無視してエルフの村に向かってる。なんか可哀そうな殺し方をしてしまった。


 移動道中の魔物を斬り飛ばしながら進んでいくとやがて流れる川のように魔物が走っていく中でただ一人佇む男がいた。服装的に魔神の使途と思われる。


「っ!」


 その男がギロッとこちらの気配に気づいた。

 そして、腕を払うと周辺の魔物が一斉に方向を変えて僕に襲い掛かってくる。


 その魔物を斬り払い、一匹の魔物を蹴り飛ばしてその男の方へ。

 そいつはその場から一歩も引くことなく、ただ腰から剣を抜くとその魔物を一刀両断した。


「誰だ、お前は?」


「それはこっちのセリフだよ。明らかにエルフの村を襲っている犯人を止めに来ただけだ」


 そう言い返すとその男は何かを思い出すような素振りをしてすぐにニヤッと笑った。


「なるほど、お前が例のイレギュラーか。俺の名前は“リック”。この不浄な地を我が主の理想郷へと作り替えるべくやって来た使者だ」


「リック......?」


 その名前は聞いたことがある。それは村長から聞かされたウェンリの過去の話で、ウェンリの兄であるウェレンを狂わせたと思わしき人物だ。


 しかし、その村長からの話であればリックという人物はすでに死亡しているとされてるけど......その人物が魔神の使途であればそれぐらいの偽装工作もお手の物だろう。


 相手の魔力レベルからすればアルバートや先ほどのロクトリスさんほどの脅威は感じない。

 しかし、それでも今の僕を十分に殺せるほどの実力はあるように思える。油断はしてならない。


「一つ聞いていい? かつてこの森で世界樹ミッドレンを殺すように仕向けたのはあなたか?」


「あぁ、そうだな。俺で間違いない。もっとも()()()の俺だけどな」


「そうか。それで十分だ」


 僕はスッと目を細めて殺意を研ぎ澄ませた。そして、刀を構えてリックに告げた。


「あなたのせいで......いや、お前のせいで僕の仲間が苦しんでんだ。

 僕がリーダーとして、そして友人としてお前を斬ることでその濡れ衣の罪を払ってやる」


「お前じゃ俺を殺すことはできない。()()()な」


 僕は素早くリックに接近すると右手に持った刀を振り下ろす。

 それをリックが剣で受け止めたのですかさず犠打り拳を振るった。

 しかし、リックはすぐさま距離を取って空振りに終わる。


「お前の情報はすでに俺達の間でも共有されている。故に、まともに相手することはしない」


 そう言ってリックは周囲の魔物に指示を与えて襲わせていく。

 残念ながら、僕に距離を取った所であまり意味ないよ。少なからず僕と戦おうとしているなら。


 僕は左手をリックに向けるとその周囲の魔物に<感電>の魔法陣を転写していく。

 それに気づいたリックはまたそこから離れた。


 だけど、その魔法陣は少し特殊でね。同じ魔法陣が三つ以上ある時、その魔法陣を繋いで出来た領域は放電による範囲攻撃になる。


「があああああ!」


 その領域から逃れられなかったリックは魔物とともに感電していく。

 その電気の強さは僕の魔力量によって上限が決まる。

 少なからず、普通の人より10倍はあるから、めっちゃ痛いはずだよ。


 僕はすぐさまリックに向かって走っていくとその勢いに任せて腹部に跳び蹴りし、<炎爆>の魔法陣を足から転写して蹴りと爆破で吹き飛ばしていく。


「っ!」


 その瞬間、僕の足元から二体の巨大なムカデが現れた。

 そのムカデは口の牙をカチカチと音を鳴らして突撃してくる。


 僕はすぐさま体を反転させると真下に向かって<突風>の魔法陣を左手から出して、二体のムカデを地面にたたきつけていった。


 その直後、僕の足に何から絡みついた。すぐにその方向を見るとそれは何かの舌で、伸びたそれの先には木に張り付いたカメレオンらしき魔物がいる。


「ぐっ!」


 カメレオンに地面に叩きつけらた。

 なんとか背中で受けたために腹部の傷が開くことはなかった。良かった。


 しかし、そこには先ほど叩きつけたムカデが両サイドから噛みついてくる。仕方ない、出力を考えて一瞬だけ!


「「グギャッ!」」


 <砲炎>の魔法陣を両手から飛ばし、ムカデに着弾させる。

 すぐに爆発を起こしたが炎は一瞬空に舞い上がっただけで周囲に被害は無し。


「それから、いつまでも足掴んでんな!」


 僕は掴まれてる足を思いっきり横に蹴って逆にカメレオンを振り回して木に叩きつけてやった。


「痛かったぞ、さっきのは!」


 その直後、真上から剣を下に構えてリックが落ちてきた。

 すぐさま横に転がってその落下攻撃を避けていくが、リックは地面に突き刺さった剣をそのままに僕に向かって振るってくる。


「地裂斬」


「くっ!」


 ザザザッと地面を斬り裂きながら迫りくる斬撃に僕は刀で受けてその勢いに押し負けて吹き飛ばされる。

 しかし、斬撃自体は防いだので多少地面を転がってかすり傷を作った程度だ。


 それに僕の真骨頂は多彩な魔法陣による罠だ。


「な、地面から鎖が!」


 <光鎖>を僕の寝ていた場所に仕掛けていたのだ。

 そこに落下してきたリックはそれを受けて体が光の鎖で拘束されている。


 リックの拘束を見て魔物達が一斉に僕の方へ向かってきた。数はざっと見た感じでも五十以上はいる。

 さすがに数が多い。しかし、広域魔法でまとめて爆破も出来ればしたくない。


「となれば、僕の魔法陣の進化を試す時が来たな」


 僕は刀を地面に刺すと両手を伸ばしてそこから二つの魔法陣を作り出した。

 その魔法陣の効果は<強風>。その魔法陣自体に殺傷能力は存在しない。


 しかし、その魔法陣にはまた別に<土杭>という魔法陣が入っているのだ。

 それは別の魔法陣同士の組み合わせとは違い、一つの魔法陣で二つの魔法効果を発動できるといった感じ。


 未だ条件設定をつけることや普段の即時転写といったことは出来ないけど、それでもこれは僕の魔法陣の革命の一つだ。


 その<強風>と<土杭>を合わせた魔法陣で風に乗せて土のつぶてを飛ばしていく。

 勢いよく飛んでいったそれは弾丸とまでは行かなくても魔物を貫くには十分すぎる威力をしていた。


 しかし、当然のように死体を盾に向かってくる魔物がいる。

 そのための策も当然練ってある。僕の戦い方は行動を制御、予測した所にあるからね。


 僕は両手を地面につけるとすぐさま魔法陣を転写していく。

 その魔法陣は僕を中心として扇状に五メートルの範囲まで大きく展開。


「土隆山」


 そして、扇状に五メートルの範囲で地面から大量の土の針を飛び出させて残りの魔物を串刺しにしていく。


 それによって目の前に魔物が消えると刀を地面から引き抜き、リックに向かって突撃していった。


「これで終わりだ」


「やめ―――」


 僕はリックの心臓に刃を突き立て、思いっきり押し込んだ。リックの背中から刃が生えていく。


「っ!」


 しかし、おかしな点が一つあった。それはリックの心臓付近から一切血が流れて来ないことを。


 白い修道服なんてそれこそ血が流れたら赤く染まってわかりやすくダメージが入ったと知らせてくれるのに明らかにそんな光景がない。


「ククク、ハハハハ! だから、言っただろ? お前じゃ殺せないって」


「ぐはっ!」


 驚きによる一瞬の気の緩みで僕の拘束を破壊したリックは僕の腹部を蹴り飛ばした。

 それによって、思いっきり地面を転がっていく。くっ、しまった。傷口が開いた......。


「だったら、アンデッドってことだろ」


 痛みを堪えてリックの体に<浄化>の魔法陣を転写した。


「なっ!?」


「ほら、言っただろ? お前じゃ絶対に殺せないって」


 しかし、リックにまるで効いてる様子はない。それどころか同じ神聖魔法で弾かれてる気すらする。


 おいおい、神聖魔法を操るアンデッドなんか字面で完全に矛盾してる存在がいんのかよ。不味いな、どうすればいい?


 いや、落ち着け。このアンデッドが倒せない存在であるとすれば、この魔法を構成する魔法陣が必ずどこかにあるはずだ。


 もしくは、この男はただの操り人形で本体はどこかにいるのどちらか。さて、検証してやるよ!

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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