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07 仮面
私と彼の時間が、十回を超えた頃。
彼は私に言ってきた。
「もしよかったら、聞いてほしい事があるんだ」
って、そんな風に遠慮がちに。
だから私は彼の勇気を、肯定するように。
「ずっと聞きたいと思っていたんだ。内容は分からないけれど」と言った。
彼は苦笑して、それについて話してくれた。
ずっと仮面をかぶってきたんだ、って。
それが窮屈でたまらないんだ、って。
もっと自由にいきたいんだ、って。
彼は後悔してるらしい。
彼は変わりたいらしい。
彼は自分が嫌いらしい。
人のいない公園で二人隣り合って、ブランコに座って、お話を聞く。
彼はとても悩んでいるようだった。
だから、私は彼の救いになりたかった。
私は彼に話をした。
自分の、思い出すのも嫌な過去の話を。
そして、勇気づけるのだ。
「だいじょうぶ、きっかけさえあれば君だってかわれるよ」
だって、私がそうだから。
私は間違った方に変わってしまったかもしれないけれど、君なら大丈夫。
きっと君も変われるよ。