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盗賊団

「もちろんです! ミズキさんだからいいんです!」


「ありがとうリリアちゃん。すごく……嬉しいよ……」


 気づいたら私は涙を流していた。


「なんでミズキさんが泣いてるんですか。ドーラさんはどうですか?」


 さっきからドーラはリリアちゃんのコボルトの周りをぐるぐる飛び回ってる。使い魔仲間ができて嬉しいみたい。


「ボクももちろん大歓迎だよ!」


「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」


 こうして私に初めてのパーティーメンバーが出来た。




 次の日。私はギルドで待ち合わせていたリリアちゃんと会った。


「お待たせしましたー!」


 時間の10分前にリリアちゃんは来た。


「全然待ってないよ。あれ? コボルトの見た目変わったね」


 昨日はボロボロの剣に破れまくった布の鎧だったけど、今日は新品の長剣に薄い鉄プレートの鎧をつけてる。良くそんなサイズの鎧あったね。見た感じ子供の訓練用のやつかな?


「はい。あんな装備じゃかわいそうですから。私よりも強いから戦うのはワンコロですしね」


 ヮ……ワンコロ? なにその何ともいえない言葉は……。コボルトの名前なんだろうけど。


「グルル」


 ワンコロを見ると満足そうに鳴いていた。まぁワンコロが嬉しいならいいや。コボルトに人間の言葉は伝わらないから、たまたまだろうけど。


「いい名前を貰えて良かったねーワンコロ」


 私が頭を撫でてあげると気持ちよさそうにしている。可愛い。


「そういえばドーラちゃんは人間の言葉が分かるけど、ワンコロとか言葉の分からない魔物とかはどうやって命令するんですか?」


 いつの間にかドーラがちゃん付けで呼ばれてる。ずるい私もそう呼んでほしいんだけど。ってそうじゃなくて……。


「本で読んだ感じだと使い魔とテイマーはなんか意思疎通出来るって書いてあった。理由は分かって無いんだって。まぁ魔物って感情が態度に出やすいから人間側はテイマー以外でも分かっちゃうみたいだけどね」


 そんな話をしてるとギルドについた。今日はどんな依頼を受けようかな。


「これとかどう?」


 内容は超小規模ダンジョンの調査。難易度は……うん。私達でも全然行けるね。

 リリアちゃんもドーラも賛成してくれたし、これにしよう。




 地図とにらめっこしながら2時間。ダンジョンに着いた。


「……本当にこれがダンジョンなんですか?」


 リリアちゃんが疑いの目でこっちを見てくる。気持ちは分かるよ。

 だってこれ、ただの洞窟だもん!


「ち……地図はここだって書いてあるけど……」


 なんかダンジョンに抱いていた憧れみたいなのは、どこかに行っちゃった。本には怖い魔物とか豪華な宝箱とかあったんだけどね。まぁ怖い魔物は困るんだけどさ。


 リュックから松明を取り出して洞窟……じゃないダンジョンを照らしながら入っていった。暗い所でも見えるドーラを先頭に私、リリアちゃん、ワンコロの順だ。


「石弾!」


 ダンジョンの魔物はドーラが蹴散らしてくれた。私は地図を書いてるんだけど、間に合わなくて大変だよ。あっ、宝箱だ。

 一応、罠を確認してリリアちゃんが開けてくれた。


「これは魔石ですね。小さいからパンくらいしか買えないですけどね」


 残念。小さいならドーラやワンコロの魔力回復用に使った方がいいかもね。


 でもこの依頼が終われば報酬がギルドから貰えるからね。二人で分けても、まぁまぁのお金になりそうだしドーラに何か装備を買ってあげられるかも。


 歩いているうちに少し大きな部屋に入った。ボスはいないみたいだし安心だね。


「気をつけて。前から何かの気配がする!」


 私は慌てて探知を使った。油断してた。私のバカ。

 前にある反応は……え……この反応は……人間? なんでここに……。


「危ない!」


 ドーラが注意をしてくれたおかげで、なんとか剣を避ける事が出来た。なになに怖い怖い。


「おっと惜しい。もう少しで殺れたのに」


「盗賊だよ! 数は6人!」


「なんで分かった!? テイマーか……これは厄介だな。全員でかかれ!」


 途端に周囲から5人の男が飛び出してきた。


「ドーラ! ファイアウォール!」


 なんとか炎の壁で相手を遠ざけた。でもリリアちゃんは少し練習をしただけ。私が頑張らないと。

 やっぱりリリアちゃんとワンコロは劣勢になってる。3人を相手にしてるから私は加勢した。


 私は軽装だから軽さを活かして手数で勝負することにした。相手は斧を持った重装備だから相性がいい。

 私は結構レベルも高くなってる。相手の攻撃を避けながら、どんどん優勢になっていった。


 手首を攻撃すると、とうとう相手は斧を落とした。そして私はトドメを刺そうとして……出来なかった。相手の怯えた目を見て、怖がる表情を見て、殺せなかった。


「よくもやったな! おらぁ!」


 迷ってる間に横から別の盗賊に突進された。


「おいおい! この二人、人も殺す事が出来ないあまちゃんだぞ」


 そこから一気に私達が不利になった。私達が相手を殺す度胸がないとバレてからは相手はどんどん攻撃してくる。リリアちゃんもドーラも頑張ってるけど人数差が厳しい。


 ついにワンコロが魔法で吹き飛ばされた。生きているみたいだけど、これでリリアちゃんの背中はがら空きになっちゃった。


 既に一人の敵を相手にしていたリリアちゃんは後ろから近づいてくる敵に気づいてない。


 私がこの依頼を受けようって言わなければ……さっきの敵を倒しておけば……私のせいでリリアちゃんが……。


「だめーーー!!!!!」


 私はもう何も考えられなかった。ただ仲間を殺させない事だけを考えていた。

 お願い……間に合って!

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