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魔物の日記2

 ~ワンコロ~


 俺の種族は群れで行動をする。群れの掟は絶対だし、群れにとって害となる者や和を乱すやつは許さない。


 当然嫌な事は多い。周りとの付き合いのために嫌な事もする必要があったり、群れのボスはいばっているだけ。


 違う意見を言うと白い目で見られて、そのくせ相手に従って失敗すると自分の責任。意味がわからない。

 頑張っても何もないくせに、失敗した時だけ周りはうるさい。


 でもまぁ仕方ないだろう? コボルトなんてそんなに強い魔物でもない。バラバラに行動したらオークの棒のシミになるのが関の山だ。


 結局弱い俺は1匹じゃ生きていけない。群れでの生活がどれだけ嫌でも仕方のない事なんだ。


 でもたまーに俺は空を見上げる事がある。飛び回る鳥を見て、俺もあんな風に自由になれたらと思うんだ。そしていつもの低い自分の目線に戻る。現実に戻る。


 ある日、俺を含めた3匹はこの地域で狩りをしろとボスに命じられた。うわ……同じグループの2匹、苦手なやつらだ。気が重い。


 歩いているうちに俺らは1人の人間に目を付けた。子供のようだし、ちょうどいい感じに弱そうだ。


 近づいて取り囲む。人間は必死に剣を振っているが、このレベルなら当たらない。軽くいなして包囲網を狭めていく。よしいい感じに弱ってきたしトドメを……。


 振りかぶった剣が魔法によってはじかれる。誰だ? 向こうからもう1人、人間の子供が走ってきた。やった。獲物が増えたな。


 約20分後。獲物は俺だった。仲間2匹は小さなドラゴンに一瞬でやられ、俺だけ残された。そして目の前の子供の使い魔になってしまった。


 さっきのドラゴンは強かったが、この子供は弱い。なぜこんなやつの下に付かなきゃいかんのだ。


 しかしこの子は良い人だった。最初に戦った時にゴブリンに勝っただけですっごく褒められ、ご褒美としてカップケーキまでくれた。今まで食べたものの中で1番美味かった。


 こんな生活も悪くない。いつしか俺は尊敬の念を込めてボスと呼ぶようになっていた。昔の仕方なくいた群れとは違って、今は望んで群れの中にいる。他の使い魔も良いやつだしな。未だにドーラは少し怖いが。


 しかし旅を続けるうちにボスはどんどん難しい顔をするようになっていった。前に進むたびに壁が立ちふさがる。

 敵はどんどん強くなっていった。


「ドルちゃん! 戻って!」


 今日の敵はひときわ強かった。しかもボスの相棒は別の敵の相手で忙しい。今、ボスの味方は俺1匹しかいない。


 怖い。久しぶりにそう思った。使い魔になる前も、その後も。俺は群れで戦っていた。


 しかし今は1匹。弱いコボルトだぞ? だけどボスを危険にさらすわけにはいかない。逃げる事なんて許されない。俺にだって自分の命以外に守りたいものが出来たんだ。


 戦いが終わった後に立っていたのは俺だった。そうか。たくさん戦ううちに、俺はここまで強くなれたのか。


 もう1匹でも怖くはない。さぁボス、なんなりとご命令を。今の群れを守るために俺はなんだってしてみせましょう。


 ~グリーン&レッド~


 2匹で1体。私達はいつか偉大な親のように完全体になる事を夢見ていた。たまに復活しては猛威をふるう魔王に対して古代文明が作った最終兵器としての使命があるからな。


 だがどうも相性が悪かった。会えば喧嘩、起きれば喧嘩、寝言でも喧嘩だ。いや最後のは流石にしなかった。


 一体化するには道具とお互いの意識が重要である。表面上だけでは無く心の底から相手を信頼する事で1つになれる。しかし今のままではダメだ。


 親は私達の成長を願って数千年ともに暮らさせたが治らず、結局親がおかしくなった事でそれどころじゃ無くなってしまった。


 あなた達は突然現れた。苦しんでた親を解放し、私たちに配下になるように迫ってくる。ちょうど私達と目的は同じようだし付いていく事にした。


 私達だってただの道具。魔王を倒すためだけの道具だ。動かない魔道具か動くかの違いでしかない。

 なのに今のままでは道具としての役割すら果たせない。


 とはいえ旅自体は楽しかった。最近は喧嘩もしなくなってきた。ただ……心の底ではあいつへの不信感や嫌悪感がぬぐえない。


 私達がご主人様の元についてしばらく後、ついに魔王と対面する事になった。他の魔道具はすでに手に入っている。しかしそんな時でさえ私達の準備は未だに整っていなかった。


 戦いは続き最後に私達だけが残った。他の使い魔はもう戦えない。


 ””ご主人様を危険に晒すわけにはいかない””


 今まで数千年も争ってきたんだ。


 レッドの、

 グリーンの、


 強さは知っている。こいつとならご主人様を守れる。そりゃ嫌だ。

 初めて私たちの心は一致した。


 兄弟よ。今回だけ背中を預けてやる。

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