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閑話 魔物日記1

 ~ドーラ~


 ボクはドラゴンだ。だから基本的にはとっても強くて恐れられるんだけど……ボクの種族はとっても小さい。硬いウロコに怖い顔? そんなのは持ってない。フワフワの羽毛に大きな目。


 魔法がほとんど使えない子供の頃はすっごく弱くて小さな存在だった。だからボクの種族は秘密の里で集団で協力しながら暮らす……ってどこかで聞いたんだけどなぁ。


 なんでボクは卵の殻を破った時から1人ぼっちなんだろう。おかげで食べるのにも苦労するじゃんか。


 森はボクを食べようと狙う敵ばかりで怖い所だし、飢えて死にそうだし。こんな世界は嫌いだ。

 そんなある日。ちょうど狩りが上手くいかずに死にそうになっていた時に君は助けてくれた。


 君はとっても強くて優しい。いつだってボクを守ってくれる。でもボクと違って君には家族がいた。


 君は守ってくれようとしたけど、結局ボクはまた1人になった。だけど今は前とは違う。君に守ってもらっている間にボクには翼が生えて1人でも生きていけるようになった。


 数年後。今度は君が1人で泣いていた。あの頃のボクのように。でも……そんな顔は君には似合わないよ。

 見て。ボクは君のおかげでこんなに早く飛べるようになったよ。君をこの世界のどんな所にだって連れていける。


 どんな敵が立ちふさがっても、君の道を切り開ける強さも手に入れた。ボクが強くなって君が前に進むたび周りに人が増えていく。そのうち一緒に人間の言葉で話す事はほとんど出来なくなったけども。


 もう1人じゃないから寂しくなんてない。君といれるなら構わない。


 だから一緒に飛び回ろうよ。君がいるこの素晴らしい世界を。




 ~サンド~


 私は創られた時からこの場所を守るという使命を与えられていた。だけど創る途中に何か問題でもあったんだろうか。


 私がこの世界に出てこれたのは、研究者もみんな死んでしまって、この場所が遺跡と呼ばれるほどに時間が経った頃だった。


 でもそんな事は関係ない。さっそく目の前にいた2人の侵入者を排除する……予定だったのだが。私は初戦で敗北した。私は1度も使命を果たせなかった。それでは私は何のために生まれてきたのだ?


 なにはともあれ私は2人に付いていく事になった。人に創られたとはいえ私も魔物。テイマースキルの力には逆らえない。


 聞いてみると私を呼び覚ましたのは2人だったとか。研究者の人たちは、人が間違って呼び起こさないような分かりやすいボタンを付けておいたと言っていたはずだが……。


 遺跡で朽ち果てていくはずだった私は付いていく途中で色んな物を見せてもらった。外に広がる自然、小さくのどかな町や城の建つ大きな街、見た事のない魔物や動物たち。


 我がマスター、ミズキは冒険している間にたくさんの危険に出会った。それでも常に前を向いてたち向かったし、いつでも楽しそうに笑っていた。


 その光景に私はゴーレム製造施設から見ていた研究者たちの姿を思い出した。彼ら彼女らも環境汚染だの実験の失敗だのと苦労が絶えないように見えたが、いつだって諦めずに充実したような表情で朝から晩まで研究に励んでいた。


 研究所が補助金の打ち切りで解散したので研究者の最後は分からないが、代わりにマスターの冒険の最後を見届けたいと思った。


 ある時、いつもの冒険の途中でマスターは少し危険だと思える依頼を受けた。敵はキメラ。今のマスターにとって一瞬でも気を抜けば負ける可能性の高い相手だ。この時ほど人間の言葉を話せればと思った事はない。


 その相手はやめておけと。今だけは歩みを止めるべきだと。しかし届かない。あいにく私は収納されており、外にいるドーラとも話す事は出来ない。


 マスターと彼女の相棒は善戦した。しかしあまりの攻撃の激しさに、残った使い魔は私のみとなった。敵は未だそこそこの体力が残っている。私では心細い。


 これは負け戦に……。

 創られた魔物らしい合理的な思考が頭をめぐる。


「サンド! 私はあなたを信じてる! その強さで相手を捻りつぶしてやるわよ!」


 そんな時に後ろから聞こえるマスターの声。少し声が震えている。顔を見ると若干の怯えが見て取れる。それでもあなたは普段通りに前を向いて、なんとか勝とうと脳を働かせる。


 そうだ。私はマスターのここに惹かれて、彼女に付いていきたいと思ったのだ。そんな私が後ろを向いてどうする。


 プログラム変更完了。私が生まれてきた理由が分かった。あなたを守る使命を果たすためだ。

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