表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/59

vsカーラ!

 

「クレイ! しっぽで叩きつけるんじゃ!」


 攻撃用に出したドーラが跳ね飛ばされてバリアにぶつかる。ポーションを飲ませて、もう1度サンドに守ってもらう。

 やっぱり強いなカーラさんは……。


 あれからまだクレイは元気で立ってる。それなのにドーラは回復を待たなきゃいけないし、サンドも平気そうに見えるけどダメージがたまってる。

 クレイの攻撃が強すぎるよぉ……。それじゃあ私は硬さで対抗だ! 


「グリーン! あなたの甲羅を見せつけて!」


 クレイが自慢のしっぽをたたきつけてきてもグリーンの背中には傷一つ付かない。亀でも蛇に勝てるって見せつけてやって!


「クレイ! 上に飛び上がって重量で押しつぶしてしまえ!」


 えっジャンプできるの? クレイはしっぽをクルクル巻くとバネのようにして結構な高さまで飛び上がった。でもこれはチャンス。グリーンは硬いだけじゃないよ!


「今だよグリーン! 岩でも噛めるあごで砕いちゃえ!」


 特に羽が生えてるわけでも無いクレイは1度空中に飛び上がると避けられない。と思ったら倒したクレイの牙から毒液が出てきてグリーンまで倒されちゃった。


「ワシの使い魔はタダではやられんぞ。アクキング、おぬしの力を見せつけるのじゃ!」

「最後は君に任せるね。お願いサンド!」


 この勢いで勝ってやる! アクキングが撃ってくる魔法をサンドが腕で受け止める。左腕が崩れると今度は右腕で。試合が終わったら治るとは言っても心が痛いなぁ……。

 それでもサンドはためらわずに突進していく。


「間に合わんか……アクキング、全力で結界じゃ! 同時に攻撃も忘れるでないぞ。おぬしなら出来るじゃろ」

「サンド。あなたの巨体で踏みつぶして! 魔法に勝ってやれ!」


 あまりにも硬い結界のせいで、蹴ってるサンドの足の岩の方が傷つく。しかもそこに相性の悪い水魔法。なっ……あの子が水魔法を使えるなんて。今までの戦いで1度も使ってなかったのに。お願い! 耐えてサンド! 


 ドォォォン。

 アクキングの太い水の柱がサンドの足を吹き飛ばす。うそ……負けた。下の砂や岩が無くなってサンドの核がむき出しの状態になる。


 危ない! 戻ってサンド。……使い魔の収納を嫌がってる? 危ないから早く~!

 前を向くと魔法の反動で空に飛び上がったサンドの核に少しだけ尖った砂のかたまりが残っていた。


「なんという展開だぁ~! 使い魔がミズキ選手のために最後の力で持ちこたえた!」


 私ですら予想してなかった事に会場が一気に盛り上がる。視界がまるでスローモーションになったかのように見えた。

 目を見開くカーラさん。腕を上げて心臓を守ろうとするアクキング。司会も観客もスタッフも、会場にいる全ての人が固まる。


 それでもサンドの方が1歩早かった。回転しながら一直線に相手の胸に突き刺さる。その硬い体で相手の防具も切り裂いて。

 そして……相手はそのまま起き上がらなかった。


 サンドはその尖った先っぽを地面に突き刺すようにしてシュタっと立つ。器用だな~。


「ふふ。ついにワシも引退か~。グッドゲームじゃ」


 糸が切れたようにカーラさんが尻もちをつきながら座りこんで、ゆっくりと拍手をしてくれた。それを見た観客の時間が突然動き出して割れるような拍手が送られる。


 あはは。ちょっと実感わかないなぁ。とりあえず……私は回復してもらったサンドに勢いよく抱き着く。サンドは、その大きな手に私を乗せて空高く掲げる。巨大化してるから少し怖いよ……。


 うふふ~サンドのエンターテイナーめ。私はドーラとグリーンも召喚した。みんな今回の試合のMVP。私の自慢の子たちを観客全員に見せてあげたい。


 ドーラがすっかり定位置となった私の肩に来る。頭をなでてあげるとほっぺたをスリスリさせてきた。くすぐったいよ。


 周りに手を振ってから下に降りる。いつの間にかこっちに来ていたカーラさんが話しかけてきた。


「どうじゃ。これが夢だったんじゃろ?」

「とっても嬉しいです! 実は少し泣いちゃいました」


「ほれ。お祝いにハンカチをやろう」

「ありがとうございます。わ~ヘビさん柄だ。大切にしますね」


 多分クレイをモチーフに作ったのかな? かわいいな~。カーラさんが優しいけど真面目な表情になって話しかけてくる。


「まさかワシの次も不遇職のテイマーになるとは思ってもいなかった。使い魔は大事にしとるか?」

「はい! もちろんです」


 そりゃもう甘やかすくらいには大事にしてますよ。


「じゃろうな。テイマーはだいたい使い魔がしばらくすると入れ替わるんじゃ。途中の戦いで無理して死んじゃうからの。でもおぬしの子達はずっと変わっとらん」


「ワシは1番最初に使い魔にした子を死なしてしまっての……。その頃は相手を道具くらいにしか思ってなかったんじゃ。剣とか弓と同じ感覚じゃ」


「でもな。その頃のワシはとっても弱かった。ワシも使い魔もお互いの事を理解してなかったし、お互いの本当の力を引き出す事ができんかった」


「つまり……言いたい事はじゃな……ワシに勝ったのがおぬしで良かった。安心して次を任せられる。改めて……ミズキ。おめでとう」


 最後にもう1度握手してカーラさんは帰っていった。それを見送ってから私も会場から出る。

 その瞬間にワッと新聞とかの記者が押し寄せてくる。えっ取材って何言えばいいの? というか少しは休ませて~!


 3時間くらいしてからやっと解放された。というか私が困ってるのを見つけたリリアちゃんがレッドで飛んできてさらっていった。助かった~。


「大人気ですねミズキさん」


 リリアちゃんが苦笑いのような少し寂しいような感じで話しかけてくる。


「私とパーティー組んでるんだから、多分リリアちゃんもすぐにああなるよ。チヤホヤされるのは嬉しいけど私はリリアちゃんと自由に旅が出来るのが1番楽しいんだけどね」


 そう言うとリリアちゃんは少し嬉しそうな表情に変わる。たくさんの観客に見られながらカーラさんと試合をするのも、もちろんすごく楽しかったけどね。


「そうだ。ミズキさん。私たちが最初に会った森の方まで行きませんか?」

「懐かしいな~。もちろんいいよ!」


 良かった。さっきの試合で周りの人は変わったけども。リリアちゃんはちっとも変わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ