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決戦! 王者カーラ

 「ドッキリ大成功じゃないですよ! こっちはもう殺すつもりで戦ってましたよ。怖すぎますよぉ」

「すまんすまん。おぬしらはSSSランクを目指しとるんじゃろ?」


 冒険者になった日が懐かしいな~。あのころはドーラと2人だけだったんだよね。それで世界最強になるって目標を立てたんだよね。

 今の旅もその目標のため。リリアちゃんも一緒に付き合わせちゃって悪いけど諦めるつもりはないよ!


「はい!」

「それでな~先の魔王戦からわしはおぬしらと本気で戦ってみたいと思ってのう。じゃがSSSランクに挑むには全世界に9人いるSSランクに勝って推薦状を貰わねばならん」


 なるほどね。それで戦わせてくれたって事なんだ。でも私達勝ててないよ。あの人達まだ元気そう。


「わしが推薦状を書けって言ったんじゃが書いたのはアベルとイカヅチだけ。せめて1回は戦いたいっていうもんでな。魔王に勝ったんだからそんなんせんでも良いと思うのじゃがのう」


 え~カーラさんにすごい期待されてる! 嬉しい!

 でも職権乱用は良くないと思います。


「でも私達勝てませんでした……これが真剣勝負ならもう死んじゃってます」


「おいおい俺たちだってちゃんと本気で戦ったんだぞ!」

「そうよそうよ。人数が多いから能力の制限とかはしたけど後は本気よ」

「こんな楽しい勝負は久しぶりだ。試行錯誤で上を目指してた頃を思い出したよ。そして勝ったんだから誇っていいだろ」


 私が少し弱気になるとSSランクのみなさんが応援してくれた。みんな本当に楽しかったかのような笑顔で。

 私も盗賊じゃないと分かった今、さっきの勝負を思い出すと自然と笑顔になってきた。そしてリリアちゃんも。


「どうじゃ? これでもまだ挑戦しないかの? わしの気が変わらんうちに決めるんじゃ」


 答えは決めた! 私はカーラさんに差し出された手を握り返す。


「それじゃ決まりじゃ。王都で待っておるの」


 そう言って全員消えた。えっどんな秘密の技を使ったんだ……。




 2日後。それからは普通の街道で特に問題もなく王都まで着いた。街の周りにある城壁にいくつもある全部の門が満員だ。


「王都ってすごいいっぱい人がいるんだね~。こんなん見たこと無いよ」

「私達の故郷がまるで田舎ですね。まぁ実際辺境にあるんですけど……」


 大きな門の隙間から見える街はどこまでも人、人、人。この世界のどこにこんなに人が住んでるのか。


 びっくりしすぎて口をボーっと開けてる私達を見て、あれからそのまま馬車の御者をしてくれてるアイちゃんの声が前の方からしてきた。ちなみに実家の手伝いで馬車の扱いに慣れてるらしくて乗り心地はとっても快適だ。


「特に今日は普段より人が多いよ。なんたってここ1年くらい誰も挑戦する資格すら得られなかったカーラさんの試合が見られるんだから」


 えぇ~じゃあこんな大勢の前でやるの? 緊張するなぁ。

 3時間くらい並んでやっと入れてもらえた。初めてくる王都。私もリリアちゃんもその活気に圧倒された。でも今日はそんな暇はない。ちゃんと準備しとかなくちゃ。



 制限された数までのポーションとかいろいろ買って明日の試合会場を見に行く。


 試合会場は大きなコロシアムだった。コロシアムの真ん中は広い芝生になっていて、周りに観客席が広がってる感じ。でもびっくりするのはその広さ。観客席まで入れたら故郷の小さなお城くらいの広さがある。


 これなら巨大化しようとリヴァイアサンをテイムしたって大丈夫そう。


「観客は6万人くらい入るそうよ。ちなみにチケットは売り切れてるから覚悟してね」


 アイちゃんがニヤニヤしながらちょくちょく脅かしてくる。やめてよぉ~。

 外に出るとあたりは出店がいっぱい。緊張する……でもこんな所まで来れたんだって思うと嬉しくて爆発しそう。明日は絶対に勝つ。そして観客の人たちが楽しいって思えるような試合にしてみせる。




 ついに当日。昨日見たコロシアムにある控え室。最初に旅立った時のTシャツを着て、階段を登った先のグラウンドに入る。

 うん。やっぱりこれが着てて一番過ごしやすいよ。


「さぁもう何人目かわからない挑戦者のミズキ選手の入場です! ついに王者カーラの無敗伝説が終わるのか! それともいつものように圧倒的な差を見せつけるのか!

 おーっと! ここ何年も最強の座を欲しいままにしているカーラの登場だー!」


 同時に、縦に長い形になってるグラウンドの反対側からカーラさんも入ってくる。一気に会場全体に歓声が沸き起こる。グラウンドから周りを見てみると会場は予定通り満員。

 それどころか光魔法や空間魔法を使った魔映機で、頭上や会場の周りにグラウンドの様子が映されているおかげで外からも声が聞こえてくる。


「カーラの試合だ!」

「頑張れカーラ!」


 アウェイすぎる……。私たちはお互いにグラウンドの真ん中まで行って握手する。これは戦いじゃなくて試合。礼儀は大切だからね。


「人気なんですねカーラさん」


 握手ついでに苦笑いしながら小声でカーラさんに話しかける。私たちには拡声魔法のかかった魔道具がつけられてるから小声にしないと弱音が聴かれちゃう。


「だてに今まで全ての挑戦者を退けてはいないからの。今回の相手は他とは違うって見せておくれよ」


 握手が終わるとお互いに200メートル離れた位置まで移動する。周りからはずっとカーラさんへの声援が聞こえてくる。1人くらい応援してくれてもいいのに〜むぅ。


「頑張れミズキー!」


 えっ……って見てみるとアイちゃんだ。ここのチケット手に入れたんだ。良かった。これだけでも少しは励みに……。


「そうだ今回の挑戦者も頑張ってくれよー!」

「私はあなたを応援してるからねー!」


 ……! アイちゃんの声を皮切りに次々と他の人からも応援の声が聞こえてくる。中には私にかけてくれた事を示す青い紙を振り回す人まで。いや確か賭けは禁止されてたじゃん……何を弱気になってるんだミズキ! よし、いつも通りいくよ!


「それでは試合……開始です!」


 司会がゴングを鳴らすとともに、私たちお互いの使い魔を召喚する。どんな使い魔がいるかは知ってるけど細いことは何もわからないから警戒しないと。


「先陣は頼んだよドーラ! 至近距離まで近づいてファイアブレス!」

「お主1匹で全員倒してしまえ! クレイ、尻尾で相手をはたき落とせ!」


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