自由な世界
「うぅ……威勢のいい事を言ったけど、初めての仕事は緊張するね」
私はとりあえずギルドにあった依頼の一つ、ラビット退治をする事にした。
この依頼は期限が定まってないし、弱い魔物だから練習にね。怖いけど、お金がないからすぐに働かなきゃね。
「ラビットは弱いし、ギルドの人が町の近くにいるって言ってたから大丈夫だよ。何かあってもボクがなんとかするから。それより軽装で大丈夫なの?」
今の私の服装はTシャツと短パンを着ている。一応魔術で普通の服よりも防御力が高くなってるみたい。意外と露出している腕とか足も守ってくれるらしいし。
着ていたワンピースを売って買えたのはこれくらい。
スキルを貰いに行った時の少し豪華なやつだったからポーションとかも買えたし、この点だけは当日に追い出されて良かったのかな……。
「今はこれぐらいしか買えないから仕方ないね。それに指示するだけの私よりも実際に戦うドーラの方が危ないから、しばらくは軽装のままかな」
もう一度門に来ると、さっきの衛兵さんがまだいた。
「おっ。冒険者になれたのか。気をつけて行ってこいよー」
わざわざ手を振って見送ってくれた。私も手を振り返してお礼を言っといた。門の外に出て街道を逸れると、今まで見たこともないような景色が広がっていた。
ここは少し高くなってるから遠くまで見える。
下には川が流れていて、その右側には草原が広がっている。あっ、ヤギ……じゃない。
あれはブルーゴートって魔物だっけ。人間を攻撃しないらしいし、後で草でもあげようかなー。
その向こうには湖も山も見える。初めての場所の初めての景色。
「ミズキ。立ち止まってどうしたの?」
私は外の世界に見とれていた。
さっきまでは色々と必死で景色なんて見てられなかったけど……。
今まで家の敷地ないから出たこと無かったから。外と言えば庭だけ。それに最近はずっと部屋の中だけで……。
でも今の私の前の前には広い世界が広がっている。どこまでも続く広くて綺麗な世界。川に山に……
「ミズキ」
はっ! そうだラビット退治しないと。えーっと。右の草むらにいるんだっけ。
テイマーのスキルに魔物探知があったはず。私はまだまだテイマー初心者だから範囲は狭いけどね。
「いるよ! ドーラ。正面。15メートル先くらい」
「分かった! 石弾!」
ドーラが小さな石を連射した。すると角の生えた小さなうさぎが飛び出してきた。鋭い歯も見えてる。こわっ。
ドーラが石弾をどんどん撃ち込むけど、全部避けられる。やばい。近づかれてっ……!
私は持ってた短剣を振ってみた。狙いをつけられるわけじゃないけど、距離が近かったからちゃんと当たった。
これでラビットは……ちょっとかすり傷ついただけ? 何この短剣。でもラビットを止める事はできた。ドーラ! 今だよ!
「ありがとうミズキ。ファイアスピア!」
今度はラビットを倒す事が出来た。今日の宿屋とか食事代を考えると……後8匹くらいかな。よし! 残りも頑張ろう!
夕方。私達もそろそろ日が暮れそうになったから町に帰ってきた。結局19匹も倒せたし。まずはギルドに向かお。
私達はギルドの換金所に向かった。使い道はないし、ラビットを全部渡すことにした。
「このラビットの換金お願いします」
「はい。20分くらいかかるので少々お待ち下さい」
待ってる間はギルドに置いてある本を読むことにした。手に取ったのはテイマー入門編っていう本。
へー。テイマーの能力の中に魔物収納っていうのもあるんだ。使い魔を入れるためのものみたいだけど、死体も入るみたい。今日のラビットもリュックに入れるの大変だったし助かるね。
「ミズキ。初めての冒険はどうだった?」
ドーラは小声で話しかけてきた。心配してくれたのかな?
「そうだねー。危ない事もあったけど、楽しかったよ。それに私は今まで……頑張っても褒められる事が無かったから……。こうやって頑張った事がお金という形で認められるのがすごく嬉しいな」
「ミズキが嬉しいならボクも嬉しいよ。これからどうするの?」
「うーん。目標があるからね。ランクアップのために魔物を倒して強くなりたいな。すぐ無くなっちゃうポーションとか買うお金も必要だし、明日からもどんどん依頼を受けていこうね!」