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谷底

 うぅ……。あれ? なんか真っ暗な洞窟の中? なんで私こんな所にいるんだっけ?

 そうだった! 穴に落ちて……無傷なのは私の下にある魔法陣のおかげかな。多分。


「リリアちゃん! 大丈夫!?」


「いたた。ありがとうございますミズキさん」


 私は横で倒れてたリリアちゃんを起こしてあげた。こっちも怪我して無さそうで良かった。

 ドーラに頼んで光を出す魔法を使ってもらう。


 うーん。本当にただの洞窟。めっちゃ怖いけど、上には絶対に上がれ無さそうだしなぁ……。ドルちゃんのテレポートもドーラに飛んでもらうのも出来なかった。前に進むしかないかな。


「ここはどこなんでしょうね」


「分からない。ギルドの地図にはこんな場所無かったし……でも魔法陣があったから誰か来たんだと思う」


 そう。あの魔法陣は人が作ったものだ。人工物の特徴があっただけだから絶対とは言えないけど、今まわりを見てみたら焚き火の跡とかもある。

 とりあえず周りに骨とかは見えないから希望がある。あるって言ったらある。1人じゃなくて本当に良かった。


「キキキキキ!」


 うわっ! 崖の穴から知らない魔物が出てきたんだけど! 何こいつ!

 しかも道が狭いせいで戦いにくい。大規模な魔法は使えないね。


「リリアちゃんお願い!」


「は、はい! いくよ。ワンコロ!」


 ここは小さな使い魔の多いリリアちゃんにお願いする事にした。私は後ろから援護かな。サンドは明らかに場所が足りない。頼りなくてごめんねリリアちゃん……。


「ドーラ。ワンコロにヒールをかけつづけて! ワンコロが攻撃を受け止めてる間に威力の高い魔法で攻撃して。周りに被害がいかないように気をつけてね」


 敵の攻撃はワンコロがうまく盾で弾けてるけど、この敵アホみたいに硬い。ワンコロの剣でかすり傷って……。ドーラの魔法はなんとか効いてるけど、これじゃ魔力を使いすぎちゃうよぉ。


 倒せたのは30分後。もう上で戦ったボスより長い。この道がまだまだ続いてるんだけど。帰りたい……。




 あれから2日。一応ダンジョン攻略が長引いた時のためにテントとかを持ってきた過去の自分ナイス。

 でもあんなに持ってきた使い魔用の物がほとんど尽きかけてる。この分だと明日出れなかったら本当にやばいかも。


「おやすみなさいミズキさん」


「おやすみリリアちゃん」


 とりあえず今日は寝なきゃ。睡眠不足は一番危ないからね。変な指示を出してドーラが怪我なんかしたら最悪だよ。

 でもなかなか寝付けない。食べ物の節約でお腹が空いてるせいかな。もっと買ってくれば良かった。


「うぅ……うっ……」


「リリアちゃん?」


 するとリリアちゃんがこっちを見る。え……泣いてる?


「怖いよ……もう疲れた……もう前に行きたくない……ここで助けを待ってたい」


 いつもの口調が崩れてる。昼は頑張ってくれてるリリアちゃんだけど心の中は限界だったみたい。

 正直いうと私も怖い。てか泣きたい。

 でもここで私が泣くわけにはいかない。


「ごめんね。リリアちゃんをずっとメインで戦わせちゃって。でもお願い。今だけは耐えて」


 こんな事しか言えないのが情けない。


「いえ……私だって分かってる。ここで待ってても助けは来ないって事くらい。でも……でも」


「大丈夫。もうすぐ出口だよ。どうしても無理だったら私がなんとかする。だから大丈夫」


 もう私も覚悟を決める。大規模な魔法でもなんでも、いざとなったら賭けに出てやる。


「それなら安心……で……す」


 それだけ言うとリリアちゃんは寝ちゃった。精神的にも明日までかな。

 もちろん私を含めてね。頑張れるのは今日までだ。




 やばいです。今は……たぶん夕方。もう時間が分からない。でも朝に出発してから結構時間が経っちゃってる。

 物資も本格的に無くなってきた。もう魔力ポーションとかは完全に無くなった。


 そんな時。横の壁が動き出した。いや、壁じゃない。これは魔物だ。茶色になって同化するとか止めてよほんと。




 はぁ……はぁ……。2時間もかかった。今までの魔物と比べ物にならない強さなんだけど。

 ついにドーラとドルちゃんの魔力は無くなった。ワンコロの剣も壊れた。これで完全に終わったかな……。


「ミズキさん! ミズキさん!」


「どうしたの?」


「見てください! 今の魔物が元いた壁の所に部屋があります!」


「ほんと!?」


 走っていくと真っ黒な扉があった。開けてみると……すごい!

 大きな部屋の中に5人用の長テーブルがある。

 他の部屋を見てみるとキッチン、トイレ、寝室……まるで誰かが住んでたみたい。


 次の部屋は倉庫。時空魔法がかかってるのか食べ物は全部新鮮だし、たくさんあるポーションはどれもたった今作られたかのように綺麗だった。これで助かる!

 これだけあれば後1ヶ月はこの中にいても大丈夫だよ。



 そして最後の部屋をあける。そこにはお墓が1つと人骨が1つだけあった。

 ……え?


 人骨の前に手紙がおかれてある。これは……ちょっと古いけど読める。2枚あるみたいだね。

 1枚目にはまた魔法陣がある。危なくは無いと思うけど……しょうがない。やっちゃえ! 魔力を注いでみると魔法陣が光りだした。


 気がつくと私はこの家の鏡の前に立っていた。でも写ってるのは私の顔じゃない。知らない男の人だ。

 は? どゆこと? 憑依? それとも体入れ替わりとか? ちょっとやめてよ。


「今は俺の目を通して俺の記憶を見れる魔法をかけている。ちゃんと見える?」


 勝手に私の口がしゃべりだす。もちろん男の声だけど。この魔法はこの男が見てきた物の記憶を私が見ているかのように見せるものみたいだね。良かった。


「さて。俺が誰かは分かるだろ? これでも結構な有名人だぞ」


 いやわかんないよ。誰よ。でも私は話す事が出来ない。なんか体を乗っ取られた感じで嫌だなぁ。まぁ乗っ取ってるのは、どっちかというと私の方なんだけど。


「おっと。未来だと顔じゃ分からない人もいるか。この世界に写真があればな……」


 写真が無いんだ。確か写真が出来たのって結構昔だからそれよりも過去の事なのかな。


「俺の名前はケンジ。タナカ ケンジだ。これでも一応勇者だぞ?」


 う……そ……。それは大昔。魔王の最盛期だったころ。とつぜん現れて世界を救ったと思ったら行方をくらましてしまった勇者の名前だった。


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