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小さな村

 今日は近くの小さな村にきていた。アイちゃんは別の仕事があるみたいだから久しぶりにリリアちゃんと二人で商人のボランさんの護衛の依頼を受けたからね。


「いやぁ二人とも助かったよ。途中でデッカグマに襲われた時はもう死んだかと思ったけど、君たちは強いんだね」


 いやー、あれはやばかった。私もドーラの魔力が尽きた時はどうしようかと思ったよ。


 サンドをテイムしてて良かった。ほんとDランクに依頼する内容じゃないって! 報酬額に比べて割にあわないよ!


「ほんとですよ。追加報酬をくれてもいいんですよ?」


「もうミズキさん!」


「あはは。君たちは息ぴったりだね。まるで夫婦みたいだ」


 なんだ、おじさん良い人じゃん。やっぱり分かる人には分かるもんだねー。


「ねぇリリアちゃん、私達夫婦に見えるって! つまりこれはもう結婚ってことだよね!」


「なんでそうなるんですか! ミズキさんはいつもはかっこいいのに、たまに馬鹿な冗談いうんですから……」


 冗談じゃないよ! でもかっこいいって言われたから良し!

 一人妄想の世界を楽しんでいると、近くで遊んでいた子供達が商人さんの馬車に気づいて駆け寄ってきた。


「あっ! ボランおじさん今週も来てくれたんだ! 嬉しいなー」


「いつも一人なのに、今日は可愛いお姉さん達がいる! ねぇお姉さん、何しに来たの?」


 まだ七歳くらいの女の子がこっちに来た。小さい子は可愛いね〜。

 私は冒険者として護衛の依頼を受けて来たんだと言うと、子供達がみんなこっちに来た。


「え!? そんな若いのに冒険者なの!? かっけー!」


「ふふ、なんだか昔の私を見ているみたいです。あの頃憧れだった冒険者になれるとは思ってもいませんでした」


 子供の頃って冒険者に憧れるよねー。絵本とかだと自由に世界を旅して、強い魔物と戦って。

 でも現実は六割以上の冒険者がランクが低いまま仕事中に死亡という世知辛さ……。


「そんな私がDランクになれるなんて夢みたいです。ほんとだったらゴブリンに殺されてた私がここまで来れたのはミズキさんのおかげですね」


「そんな事ないよ。リリアちゃんがいなかったら私はここまで来れなかったと思う」


「嬉しい事をいってくれますね。気を遣わなくていいんですよ」


 これも本心なんだけどな……。なかなか気持ちって伝わらないね。


 そんな話をしていると、もっと子供達が集まってきた。もうこの村の子供みんなここにいるんじゃない?


「なーなー。お姉さん達は他の護衛の人達みたいに、剣とか杖とかいらないの?」


「そうですね。私達はテイマーですから。まぁ一応短剣をもってるくらいです」


「テイマーって何?」


 あれ!? テイマーの知名度低くない? 結構たくさんいるのにな……。仕方ない、ここは私がかっこいい所を見せて布教しなきゃ。


「見ててね。ドーラ、あっちの岩に向かってウォータージェット!」


 ドーラが空に飛び上がって水を勢い良く放つと岩を真っ二つにして、その後ろにあった木まで切り倒した。今日のドーラなんだか張り切ってるね。


「うわぁぁぁぁ、かっこいいー!!」


 そうでしょそうでしょ。みんなも将来テイマー目指そうよ。新人大歓迎だよー。


 そういえばボランさんがいつも一人ってどういう事だろ? 護衛つけてないの?

 そんな事を考えてるとボランさんと村の人の会話が聞こえてきた。


「ボランさん、今日は護衛を雇っているんですね。突然どうしたんですか?」


「最近この辺の魔物の動きが活発化しているらしくて、そろそろ護衛をつけないと危ないと思いまして。道中もデッカグマに会いましたよ」


「そんな危ない魔物が!? あれを倒せるなら、依頼料の高い結構な腕の冒険者でしょう? 

私達は助かっていますが、ボランさんの生活は大丈夫なんですか?」


「いやぁ、彼女達は高くない依頼料で受けてくれまして。おかげで、この村に来るくらいのお金はあります。

 確かに儲けは少ないですが、この村には私しか行商人がいませんから。最後まで頑張るつもりですよ」


 なんだ。ボランさん本当に良い人だったんだ。本気でギルドで追加料金を請求しようと思ってたけど、そんな理由だったら依頼料が安くても仕方ないかな。

 私だってこういう人は応援したくなるしね。


 でもリリアちゃんと話さず勝手に決めるのも良くないよね……。

 するとリリアちゃんが話しかけてきた。


「私の村も田舎で、たった一人の行商人に支えられていました。だから……私、依頼期間の間だけでもあの人を助けたいです」


 なんだ。リリアちゃんも私と同じ気持ちだったんだ。

 私達はボランさんに声をかけることにした。


「すみませーん。私達も暇だし、お仕事を手伝わせてもらえませんか?」




 その日の夜。村のみなさんからの歓迎会でお腹いっぱいになった私達は村長さんの家に泊めてもらう事になった。


 ボランさんみたいに、外から来た人を泊めるための部屋らしい。流石村長。家が広くていいなー。


 すっかり夢の世界に入っていた私は、窓からの明かりと人の悲鳴で目を覚ました。


 外に出ると村の森側にあった家が数軒燃えていた。そっちの方から逃げてきた男の人が大声で叫ぶ。


「オークの群れが襲ってきたぞ! ゴブリンやコボルトもいる! みんな早く逃げろ!」


 一番外側にあった家が崩れ去る。その後ろには剣を持ったコボルトがいて、向こうの方に大きなオークの影もたくさん見える。


 間違いない。スタンピードだ。

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