ピクニック
「二人共。荷物はちゃんと準備した? それじゃあ……出発!」
アイちゃんの掛け声で私達は歩き始めた。今来てるのはアルペス山脈の麓のゴブリン討伐。といっても、私達三人の実力からするとすごく簡単な依頼だけどね。
今日のメインの目的はハイキング。アルペス山脈は観光地として有名だから一度来てみたいと思ってたんだよね。
でも一人は怖いじゃん? だから二人にお願いしてみたら、あっさり一緒に来てくれる事になった。やっぱり持つべきは大事な友達だね。
んー。空気がきれい。夏なのに森の日陰と標高のおかげで涼しくて気持ちいいよ。
私は近くを流れる川の音を聞きながら、ルンルン気分で歩いた。
「見てください! あそこに真っ白なうさぎがいますよ! 可愛いですね〜」
え!? どこどこ!?
私は慌ててリリアちゃんが指さした方向を見た。もふもふは好きだからぜひ見たい。
いた! 二匹のうさぎが私達に気づいてないのか、のんびり草をハムハムしている。可愛い〜。
それにしても、この辺は夏でも冬毛のままのうさぎがいるんだね。ふさふさだ〜。後ろから近づいて抱きしめたりできないかな?
「ミズキ。あの子達はだめよ」
テイマーの能力を存分に活かして、背後から気配を消して忍び寄っていくとアイちゃんに肩を掴んで止められた。
あぁ、逃げちゃう……。
「ミズキさん。お腹が空いてるのはわかりますけど、あの子達を食べるのはかわいそうです」
「食べないよ!?」
二人の中で私はどういうふうに見られてるの!?
ひどいよ……確かに私は食べるのは好きだけど、可愛いうさぎまで食べたりしないよ!
あ……あまりの信頼度の低さに目から水が……。
「ここの景色きれいね! 街の方まで一望できるわよ。風も吹いてて気持ちいいし、来てよかったわね。誘ってくれてありがとう。ミズキ!」
「私も楽しいです! また三人であっちこっち行きましょうね!」
二人が喜んでくれたなら私も誘ってよかった。またみんなで楽しめそうな所を雑誌で探してみよっと。
その時、私がお腹の中で飼っている猛獣がお腹が減ったと、ぐぅ〜って鳴いた。
「もうお腹が空いちゃったのね。せっかく良い所を見つけたんだし、ここでお昼ごはんにしよっか」
なんだその大食いみたいな言い方は。私はまだ、さっきのうさぎの事を許してないからね!?
「ミズキさんはお腹が減ってるだろうと思って私は多めにお昼ごはんを持ってきたんです。たくさんあるので三人で分けましょう」
許す! リリアちゃんが頑張って作ってくれた料理なら食べないわけにはいかないね! むしろ楽しみ!
持ってきてくれたのは……サンドイッチだ! ハムとかカツとかいっぱいあって豪華すぎる。どれから食べるか迷っちゃうよ。
私の脳内での激しい戦いの末。第三勢力のツナサンド派が勝利をおさめた。でもハムもカツも後で絶対に食べるからね!
食べやすいように一口サイズに切られたサンドイッチをパクっと口に放り込んだ。
美味しい!! やっぱりツナとマヨネーズの相性は最高! そこに下の方に入っているレタスのシャキシャキで食感も楽しめる。
こんなに美味しいサンドイッチは初めて食べたよ。これなら毎朝食べても飽きないよ。あぁ……なんで私の胃袋は無限じゃないんだろ。
リリアちゃん結婚して! そして毎日私にご飯食べさせて!
でも私も料理を作ってきたんだよね。ここからはライバルモード。リリアちゃんの料理に負けないよ!
「実は私もお昼ごはんを作ってきたの! 二人も食べて!」
私はたまごとかウインナーを入れたおにぎりを出した。リリアちゃんがパンなら私はご飯で勝負だよ!
どうかな。美味しいっておもってくれるかな。なんだか緊張してきた。
「これは美味しいわね! 中にたまご焼きが丸ごと一個入ってたのはびっくりしたけど、食べてみるとたまごが甘くて美味しい!
しかもネギまで入っていてとてもご飯に合うわ。ミズキって料理上手だったのね!」
「こっちのウインナーも美味しいです! 外がパリパリです。中もジューシーで理想のウインナーって感じです!」
やった! 二人に喜んでもらえた!
ウインナーも焼き方にも気を使ったんだよ。強火で一気に水分を飛ばして、油でカリッとなるように火加減を調整して……。
ここまで喜んでくれるなら頑張ったかいがあったよ。また作ってあげよっと。
「何を隠そう私も料理を作ってきたの。作ったのはデザートだけどね。お昼ごはんの最後をかざるわよ!」
なんだと!? アイちゃんも料理できたんだ。しかもデザート。ちょうど甘い物が欲しくなってきたから大歓迎だよ。
アイちゃんが出して来たのはフルーツの入ったパウンドケーキ。これは美味しそう!
いただきます!
……うん? なんか……苦い? まるでブラックコーヒーのような苦さが口いっぱいに広がる。と思ったら酸っぱい味がして、なんか喉が痛くなってきた。
しかも、このザリザリとして食感……まさか……。
間違いないよ。これサンドファイアフルーツでしょ! ゲームのバツゲームとかにあるやつ。
「どう? 美味しい? 隠し味としてなんか赤いきのみを入れてみたの。レシピ通りより美味しくなってるといいけど……。
二人に食べてほしくて料理に初挑戦したんだ。成功したらお父さんとおじいちゃんにも作ってみようと思うんだけど……」
い……言えない。この期待してるような不安そうな顔をしたアイちゃんに美味しくない……というか嫌がらせレベルだなんて言えない。
「アイちゃん。すごく美味しいよ」
私は笑顔で優しい嘘をついてしまった。
ごめん! イカヅチさん、ゴウリキさん、食べるの頑張って!




