認められる幸せ
「うわー。すごい人と建物ですねー」
夜になってやっとリオンシティに着いた私達は、すぐに街に入って辺りを歩いていた。あっちこっちに飲食店もあって、いい匂い~。
リリアちゃんの言うとおり道の両側には高い綺麗な建物がたくさん並んでいて、無限にある店にはたくさんの商品が売っている。
道にも多くの人が歩いていて色んな人種、種族の人が歩いてる。
前に歩いてる人は黒髪黒目の人。見た感じ極東にある国の出身の人かな? ちなみに私は茶色の目だけど黒髪だから、この辺の出身が先祖にいたのかもと少し疑ってる。
今、左を通り過ぎた人は多分エルフ。やたら弓矢と魔法関係のスキルが多い種族の人達。美男美女が多いって聞いてたけど、今の人も金髪碧眼のすごい美人だったなぁ……。
ちょっとリリアちゃんに似てる気がする。まさかね。
「見てください! ギルドが見えてきましたよ!」
噴水のあるオシャレな広場に出ると、正面に大きな建物が建っていた。リリアちゃんによると、これがリオンシティにあるギルドの建物らしいね。大きなステンドガラスがはめ込まれたレンガ造りの建物。
近くにも小さな町とか村が多いから、その辺りからの依頼もいっぱい。もうここに引っ越そうかなぁ。楽しそうだし。
とりあえず受け付けのお姉さんに配達物を渡して依頼を終わらせてっと……後は道中倒した魔物の素材も渡しておこう。
素材の価値を調べて貰ってる間に、街を見て回る事にした。まずは近くの市場に行く事に。
「他にも川は遊覧船とか渡し船が人気の観光地ですね。北の方に行けば大聖堂があります。ここも聖地の一つなので周っておきたいですね。それから……」
リリアちゃんが色んな場所を言ってくるけど、私には半分も理解出来ない。詳しすぎじゃない? よっぽど楽しみにしてたんだね。
「アハハ。今までずっと田舎に住んでたので、ずっと都会に憧れていて……」
「よーし、それなら私が都会の歩き方ってものを教えてあげよう。まずはオシャレが大事だよ。ほら、こんな帽子を着けると……」
私はさっき市場の露店で買った帽子をつけた。これでリリアちゃんは私のセンスの良さに驚くでしょう。
「ぷっ。なんだ、あの帽子。ださ」
……通りすがりの人の小声で致命傷を負った私はやっぱり帽子を外す事にした。二度とこの帽子を着ける事はないと思う。
「ミズキさん。見てくださいこれ!」
傷心の私が振り向くと、いつの間に買ったのか左腕に新しいブレスレットを着けたリリアちゃんがいた。花柄の可愛いやつ。リリアちゃんは何でも似合っちゃうね。
「似合ってるね」
「ありがとうございます。ミズキさんの分もありますよ。これでお揃いですね」
そう言うとリリアちゃんが私の右腕に付けてくれた。リリアちゃんとお揃いかぁ……えへへ。
「すごく嬉しいプレゼントだよ。ありがとうリリアちゃん!」
そう言ってリリアちゃんの左腕に私の右腕をぴったりくっつける。目の前には同じ二つのブレスレット。一生の宝物にしよっと。
だらしない笑顔でギルドに戻ると、もう一ついい事があった。
「ミズキさん。リリアさん。おめでとうございます。ギルドへの貢献が一定以上に達したのでランクアップ試験を受けることができます。早速明日から受けますか?」
受け付けのお姉さんの言葉に私達は顔を見合わせた。一瞬ポカンとした顔をして……。
「やった!!」
思わずハイタッチをしちゃった。これがSSSランクへの第一歩。冒険者にもだいぶ慣れてきた所だったから、今までの努力が報われた気がする。頑張りが認められるのってこんなに嬉しいんだね……長らくこの感覚を忘れていたよ……。
昔の事はいいや。これもドーラやリリアちゃんのおかげだね。この気持ちを忘れずにこれからも頑張ろうっと!
おっと。その前に明日の試験に受からないとだね。試験を受けるかの答えは決まってる。
「はい!」
次の日。ギルドの庭にある闘技場? 練習場かな? とりあえず広場に向かった私達は試験の説明を受けた。受け付けのお姉さんが教えてくれる事になった。
「まずは試験場の説明です。魔道具により、防御魔法が全体にかかっているので怪我はしますけど重症は負わないので安心してください。それに回復魔法を使える人も用意してるので大丈夫ですよ。勝ち負けは審判の判断か、片方の降伏によって判断されます」
なるほどね。とりあえず安全そうで良かった。こんな試験の怪我で引退とか最悪だもんね。魔道具と回復魔法様々だよ。
「そしてルールですが……ありません! 冒険者たるもの卑怯は褒め言葉です。使える手は何でも使っていいですよ。まぁこれはギルドによって結構違ったりしますけど。
あ、もちろん外部からの介入とか、試験前に強化魔法とかを使うのは禁止ですよ。後、お二人はテイマーとの事ですが、当ギルドでは使い魔は魔物収納した状態から開始してください」
結構ルールあるじゃん……。
うん。試験前に強化は反則だよね。私は一時的に魔力を増やすポーションをカバンにしまった。
試験は私から。陸上競技場のような長細い円の中に入った。相手も入ってきた。武器を見た感じ……斧使いかな。
「俺は元Cランク冒険者だった試験官のガルフだ。俺はCランクだから当然手加減はするが……甘く見るなよ。ギルドのレポートによると君は成長が早い期待の星だからね。戦うのが楽しみだ」
「ありがとうございます。がっかりさせないように頑張りますね。試験よろしくお願いします」
私はお互いに一言交わして指定された場所に立った。周りの観客が増えてきたね。そんな事を考えてる場合じゃないね。リラックス。落ち着けミズキ……よし!
ゴングの音が鳴って審判が叫んだ!
「それではランクアップ試験……開始!」