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少女の名前は灰原(はいばら)花音(かのん)。16歳の現役女子高生。

通う学校は所謂公立高校で、部活動に“力”を入れたごくごく一般的な“学校”。

少女──花音は孤児(みなしご)である。

…否、()()()()1()0()()()()()である。

花音の両親…父親はごくごく一般的な会社員、母親はナースを()()()()。──そう、もう〝過去〟の事だ。

そのような人物も、家族も…花音には遠い“過去の話”となって10年と経つ。

…ただ、そう〝悪くない〟と思えるのは花音の亡くなった父は10人兄弟の四男坊であり、上からも下からも大変に可愛がられ頼られていた…“だから”世間一般の養護施設行きで家族の誰もいないお○んのような“同情をするなら金をくれ!”状態ではなかった。

殊更に父を可愛がっていた伯父夫婦が一人きり残された花音を“新たな家族”として温かく迎え入れてくれた。

伯父夫婦には四人の兄弟がいたが、皆温かく迎え入れてくれる優しい人達だ。

伯父夫婦──新しい父と母は花音が知りたいと思ったことは何でも答えてくれた。

花音が主に訊くのはいつも両親のこと。

生前の彼らの近況から()()()()までの日常のやり取りや愚痴、お酒の席での失敗談、母が実は学園の“マドンナ”だった事や両親が交際するまでに4人の男同士の争奪戦…妨害?に遇いながらも愛を貫いた恋愛映画さながらの結婚までの色々を。

「…。」

さらりと風に流れる黒髪。キリッとした目元には左目の下にどけある涙黒子。象牙色の肌に染み一つない綺麗な肌。ぷるんと小さな桜色の唇、左右対称でありながらも等間隔に配置された顔の造形…それは世間一般では十人中十人が“美少女”だと認める美しい少女だ。

無表情無言で屋上に一人空を見上げる姿すらも思わずほぅ…と溜め息が漏れるほど少女の造形は優れている。


「~♪~~♪♪」

屋上には誰もいない訳ではなかった。

花音とは別に“先客”がいた。

此方もまた花音ほどではないが美少女の部類に入る。

さらりとした金髪をツインテールにして赤色のリボンで蝶結びにした背の低い女の子──赤色の()に金髪、白磁の肌…とくれば()()()解る。彼女の抱えている問題。

低い鼻に大きな瞳、肌が()()()()()()()綺麗な肌を持つ事から自ずと。

アルビノ──そう、身長173㎝の花音(じぶん)と此方の視線など目もくれずに一心不乱に楽しそうに歌う女の子…いや、身長が139㎝とないからどうみても小学生ーー、幼く見えたのだ。仕方ない。

「…あなた、物凄く音痴ね」

「!?!?」

「楽しそうに歌って居るところ悪いんだけど…カラオケでやってくれない?騒音、迷惑」

「…ぐはっ!?」

開口一番花音()は不快そうに眉間に皺を寄せたままそう言った。

時間はお昼の屋上。当然二人以外にもちらほらとベンチや地べたにレジャーシートを敷いて昼食を摂る生徒や教師はいるのだ。

実に気持ち良く“歌って”いた小学生のような女の子──アルビノ少女もまた胸の赤色リボンとブレザーの制服から同級生と分かる。

…胸もまた身長同様に慎ましやか──()(てい)に言えば“まな板”の胸に童顔+金髪赤目だから目立つ目立つ。

…本人、本当に気にしていなかったようだが。

一刀両断にバッサリざっくり斬られた金髪赤目のアルビノ少女は歌うのを秒で中断した。

「しおしお…」

「…」

日陰になる所に無言でレジャーシートを敷いて弁当を広げる花音…いや、だってお昼ご飯の時間にお昼を食べないで何時食べるのよ?

…?

アルビノ少女は放置?

……。

当・た・り・前・じゃ・な・い・☆

少女の事は知るかとばかりにパクパクと箸を進める花音、“しおしお…”と口に出して項垂れる金髪赤目のアルビノ少女、先程まで花音に“騒音”と断じられた音痴少女の歌声が止んでほっとする一同…いや、まぁ、口には出していないのでセーフ……セーフ…?

…周囲は二人をチラチラと気にしつつも昼食を摂っていた…いや、だってお昼の時間は一時間半と短いのだから。本校舎の1階にある食堂は満員御礼で、購買のパンはもう一つも残っていない…そもそもが“弁当組”の花音は毎日毎朝母の手作り弁当を貰っている身だ。不満も文句も言う立場にない。


「鮭幕の内弁当…姉さんの好きな魚弁当。…明日は兄さんの好きな『ラーメンを弁当に入れる!』とか言ってたけど…どうするんだろう?絶対溢れるわよ…そもそも麺が伸びるーーぁあ、“油そば”みたいな感じするのか……凄く手間」

大きく容量たっぷりな重厚感ある漆塗りの重箱三段。一番下がご飯で真ん中におかず、一番上がうさちゃんりんご…。

「…芸が細かい。」

“一般的は”うさちゃんりんごと言ったらウサギの耳を再現するものだが…我が家──「灰原家」は違う。

手間だろうが忙しかろうが、“うさちゃんりんご”は種とへたを取ったあとに四分の一にカット、そのりんごの一つ一つの皮にカッターや爪楊枝で“描いたリアル寄りの兎の絵”だ。

実に秀逸で達筆。毛のふわふわ感も実の白い所を毛立たせて?表現している…いや、これ食べるの勿体なすぎる。

カシャッ。

「…スマホで思わず撮ってしまった。これ、もう千枚目…なんで毎回毎回ちょっとずつ変わってるのかしら?母さんの才能の無駄遣いが酷い件について」

「それは知らんよ」

「寧々(ねねか)…ん?貴女もこっちに来たの?生徒会メンバーと食べるんじゃなかった…貴女書記だし」

「それが、4人ともリモート授業にしたらしく全員からのLINEメッセでついさっき知ったばかりなんだ。…酷くないか、この扱い?」

「あー…」




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