採掘場
高速で飛翔する矢は突き上げた馬を食べることに集中しているサンドワームに突き刺さり、その体に紫電が走る。
サンドワームは動かなくなる。
しかしモタモタはしていられない。一体がいるということは他にも近くにいるということだ。
急いでここを離れないと!
全員やることはわかっていたのか、採掘場に向かっていた一団は足早に移動を始める。
俺たちも急いでついていった。なりふり構ってられない本当にヤバくなったら魔導三輪をフルパワーにして、連れていける人々だけでも連れて行こう。
「リルカ!荷台に乗りなさい。」
エリンに強く言われ、リルカは渋々荷台に乗った。
魔導三輪を操作していた俺はちょっとだけ魔素を流し、魔導三輪をいつでも全力で移動できるようにする。
静かに振動が高まり、人や大荷物を載せているというのに手にかかる力が極端に軽くなる。
この砂嵐だ。あたりに風と砂のぶつかる音が広がっているおかげでサンドワームば正確にこちらの位置をつかめないはずだ。
読みどおり、脈絡もなくサンドワームが道から外れたところに飛び出して口を開けたり閉じたりしている。やはり正確にはこちらの位置をわかっていないようだ。
これ以上近くに飛び出してきた来ないことを祈りながら全力で突き進む。やがてうるさかった砂嵐が静かになった。
移動していた団体は速度を落とした。
差し込むように日が見えた。砂嵐はやんだのに騒音が耳についた。
ようやく採掘場についたのだ。結局のところサンドワームの実害があったのは最初の一回だけで大したことは無く、けが人もいなかった。
採掘場付近は地面を整備しており、砂岩を敷き詰めて固めているため歩きやすくなっている。その上に掘っ立て小屋が並び、沢山の人が行き来していた。
「今日はもう遅い。とりあえずどこかで休憩して明日から行動しよう。」
二人から特に反論はなく、休憩することとなった。
しかしギルドの宿舎みたいな施設はなく。テント群がある場所でテントを立てて一夜を過ごした。
採掘場の朝は早い。
まだ日も昇って間もない時から、硬いものがぶつかる激しい音や何かを掘り起こす鈍い音が聞こえる。
多くの人間が朝早くから活動していることを示している。
しかしこちらの目的は採掘ではない。
朝早くから採掘場に来ているという行商人を探す。
多くの人がいる。
行商人を探すのは難しいかと思ったが、意外と早く見つかった。なぜなら行商人も数多くの人が練り歩いていたからだ。
あっけなく必要としていた魔石を集めることができた。
「どうしますか?今すぐ戻ってもいいですが、せっかく来たことですし少しみていきますか?」
「そうだな、今度は道もわかるし、天気も良さそうだから魔導三輪をフルで飛ばせば半日で村に着けるだろう。午前中は辺りを見て回るか?」
「さんせーい」
リルカが元気に飛び上がる
「リルカ、あなたは私と一緒に行動ですよ!」
リルカが少しふくれっ面になったが無理は言わないようだ。
まあ、この二人が一緒に行動してくれるなら心配はないだろう。それなら俺はちょっと気になっている物を調達しに行ってみよう。
より採掘場に近い位置で取引している行商人を探した。
採掘場は人々が巻き上げる砂ぼこりで煙っている。あまりいい環境とはいえなさそうだ。
屈強な男たちがすさまじい勢いで地面を掘り起こし、その後ろでは少しいい服を着た男たちが檄を飛ばす。
更に後ろでは、よりいい服をきた男にちょっとだけいい服を着た男たちが群がっている。何ともわかりやすい。
だが俺の狙いはそんな人々じゃない。ちょっと辺りを見渡し、すぐに見つけられた。
明らかにフリーな商人、いや誰かに取り入ろうと探っている若めの商人。
「そこのあんた、ちょっといいか?」
「なんだ?私は忙しいんだ。」
「その後ろの液体魔石を少しゆづってもらいたい。」
「これはダメだ。大切な商品なんだ。お前のようなわけのわからん奴に売れるか。」
「これでもダメか?」
そう言って少し多めに金貨を手渡した。すると男は途端に目の色を変えて荷台をガサゴソと漁り始めた。
「仕方ないな、ちょっとだけだぞ。」
そう言って小瓶にいっぱいに入った液体魔石を手渡した。
「ありがとう。恩に着るよ。」
もらった液体魔石はドロドロとしていて粘度が高く深い青色に輝いていた。
これが液体魔石、においは全くしない。石油のような脂ではないと思う。
噂によると目立った効果を持ち合わせないが魔石の効果を増幅させるとかないとか、上手く加工すれば様々な効果を発揮するとか、あることない事好き放題に言われている。
実際のことはわからないが試してみる価値はあるだろう。
俺は欲しかったものを手に入れて集合場所に向かった。そこには目を輝かせて楽しんだであろうリルカと明らかに疲れ切ったエリンがいた。何があったかはすぐに察しがついた
帰りは道もわかっているため、予定通り魔導三輪をかっ飛ばす。
サンドワームに何体か遭遇したが動きは遅いので踏み固められた地面ならばこちらに武がある。
予定通り一気に駆け抜け、日が沈んだ頃には街に戻ってきた。
その日は素早く就寝し、次の日の朝早くからルーナ村に戻る準備を始める。そんなときふと聞いたことのある声がした。
「やあ、お三方旅のお供に情報屋はいかがかね?」