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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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ルーナ村-3

「タロウ殿、村の中から魔石の反応性が良い者を集めました。この者達に修練をお願いできますか?」

グラムは遺跡から帰ってきたあと家々を駆け回り、魔石の反応性が良い者を集めていたようだ。

見るからに若い人々が多い。

今日も遺跡調査に朝早くから行きたかったが、グラムとの約束だ。ここで約束を破るわけにはいかないだろう。


集められた村人たちの前でグラムと同じことをやって見せる。すると面白いほど同じ反応で、目を見開き食いついてくる。

村人たちは方法論を聞いてすぐに低純度の魔石を使って真似を始めた。

彼らはグラムの見立て通り魔石の反応性が高かった。

これなら数日中に魔素移動を習得できるだろう。


コツを教え、無理のないように練習を続けるように指示した。

皆、やる気があり俺の注意もほどほどに練習にのめりこんでいった。

魔素移動の指導を終え、遺跡の調査に向かった。メンバーは変わらず、俺とリルカとグラムだ。

遺跡へは道順が分かっていたため、かなりのスピードを出して移動した。

おかげで朝に指導の時間をとったにもかかわらず、十分に遺跡内部を探索する時間がありそうだ。

今日は地下一階の隠されていた部屋を集中的に調査しよう。なんとなくだけど、隠し部屋があるはずだ。早いところ隠し部屋を調査したいところだが、まずは危険がない事を確認してから地下に潜った方がいいだろう。


遺跡の中では相変わらず、小動物の亜獣が何体か闊歩していたが、こいつらは襲ってくることもないし、害は小さいので無視する。

問題は不意に現れる、中型生物の亜獣だ。こいつらは下手な対応をすれば大けがを被りかねない。

しっかりと撃退する必要がある。


地下1階を調査すると、小分けにされた小部屋がいくつかあった。

しかし部屋のなかに目新しいものが無い。小部屋へとつながる壁には隠し扉を制御する魔石が埋め込まれていたが、どれもこれも劣化している。

小部屋の中はロングソードのような武器や包丁として使われていたであろう物が多くあった。しかしどれもこれも、錆ていて使い物にならない。

他にも食べ物であったであろう何だかよくわからない物や何に使っていたかわからない石の穴等、生活の痕跡が見受けられた。


「ここには人が住んでいたのか?」

思わず疑問を口にする。

「昔、親父から聞いたことがあるのですが、教会や重要な施設は人々が住み込みで暮らせるようにしていたと聞いたことがあります。しかし、それがどうして隠されていたのかは分からないですが・・・」

「なるほど、それが理由でこんな作りになっているのか、隠されていた理由は・・・隠したいお宝があったからとか?」

「それならもう盗賊たちに全部取られてるかもね。ほらタロウなら聞いたことあるんじゃない?ここら辺は昔盗賊たちの根城になっていたって。」

「ああ、聞いたことあるよ。確かにそれならお宝とかは期待できそうにないな。」

「タロウ殿、今日は遺跡内部に入ってからかなり時間が経っています。そろそろ村に戻りませんか?」

「そうだな、無理は禁物だ。日が出ているうちに帰ろう。」

俺達は慎重に遺跡から出ることにする。

「ん?これはなんだ。」

足元に歪にゆがんだ丸型のくぼみが点々と続いてあった。ここは、どの動く壁の延長線上ではない。

「わかりません。しかし今は気にしている暇がありません。調査はまた今度にして急ぎましょう。」

「そうだな。」


その後何事もなく村まで戻ってきた。リルカは相変わらず楽しそうにしている。外の世界を知ってもらうために取り組んだことだが、うまくいっているようでよかった。

村に入ると数人の人々が村の中心で寝ていた。

「何があった!」

グラムが走って駆け寄っていく。俺もそれに続いて寝ている村人に近づいた。


みんな規則正しく寝息を立てている。

横たわっていたのは朝方、練習するように伝えた魔石の反応性が高い村人だ。どうやら練習のし過ぎで自分の魔素が枯渇し、倒れてしまったらしい。

状態が分かって安心するとともに、少し呆れた。

魔素の枯渇は休むしかない。

頑張っていた村人たちを家まで送り、安静にするように伝える。


全員を自宅に運び終え一息ついていると、

「タロウ殿、相談したいことがあるのですが・・・」

申し訳なさそうな村長がいつ間にか近くにいた。全然気づけなかった。

「どうしたんですか?」

「タロウ殿が特殊な魔石の使用方法を教えてくださっているとグラムから聞いたのですが、そのおかげ村の低純度の魔石が枯渇してしまいましてな。ついてはプエトジに行って購入したいと考えておるのだが、護衛を頼まれてはくれないか?」

村長が視線を移してみた先には中途半端に劣化した魔石や中途半端に活性化した魔石がゴロゴロとしていた。あんな物にしてしまった責任をとれとも聞こえる。


確かに、練習段階では中途半端な魔石が作られることを伝えなかった俺にも責任があるし、ただでさえ少ない村人の中で戦闘能力が高いグラムを遺跡調査に同行させてもらっていることもある。

村側としてはこれぐらいは役に立ってほしいといったところか。

無理に争う必要もないし、遺跡の調査はまだまだ続けたい。であるならば一日お使いを頼まれるのもやぶさかではない。

「わかりました。私には魔導三輪もありますし、低純度の魔石を運搬しますよ。ただどこで魔石をどこで購入すればいいか、わからないので村の中から誰かついてきてくれるとありがたいのですが・・・」

「それはもちろんお付きの者を用意しますよ。リルカとエリンでいいかな?」

「ええ、問題ありませんよ。それではさっそく明日出発しようと思います。」


次の日、俺達は朝に村を出発し昼を過ぎて、日が沈み始める前にはプエトジに到着した。

「今日は一日宿をとって、明日、魔石を購入したら村に帰ろうと思うが、どうだろうか?」

「問題ありません。」「いいよ~」

俺達はギルドの宿にその日は泊まった。リルカは冒険者じゃないが、冒険者見習いという事でエリンと同じ部屋に泊まることができた。

ギルド運営の宿で、食事をとっていた時だった。

「おーす、両手に花とはいい身分じゃねぇか?グラムの兄貴はどうした?」

片手にジョッキを持ち、酒に酔ったコイルが近づいてきた。


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