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砂漠の神殿-1

冷える朝を迎え、しかし村の人々は太陽が出ると同時に外で活動を始めている。

俺達も足早に村を出発し、魔導三輪をフルスピードで稼働させ1日かけて、遺跡へ、たどり着いた。

リルカは初めて乗る魔導三輪に興奮し、途中で振り落とされそうになっていて気が気ではなかった。


昔はここら辺一体は盗賊の根城だったらしい。

しかしある時から、盗賊たちはぽつりと姿を消したらしい。理由は分かっていないが噂ではあまりの老朽化に耐えかねたとか、強力な魔獣がいたとか・・・


石造りの建物だと聞いているし中は問題ないそうだ。強力な魔獣がいたら今頃大騒ぎだし、本当のところは分かってない。

では今はどうして人が寄り付かないかと言うと・・・

「その理由がこれか。」

目の前には虫にしては歪なほどに大きい甲虫がいる。元は何の虫だったのだろうか?しかしその虫は生きてはいるが動けなくなっていた。

腹の部分からいつも見ている魔石が飛び出していたからだ。

昆虫の亜獣にはこうやって、その体に似つかわしくないほど大きな魔石をつけていることがある。大抵魔石が多く産出される場所で見つかるものだ。

ここらへんだと噂の液体状の魔石と言う物だろう。

今から入ろうとしている遺跡はダンジョン化しているらしい。


魔獣や亜獣が遺跡付近で多く観測されているが、元はただの遺跡、中に魔石等生成されているわけではなく、どうして遺跡に集まるようになったのかは不明である。

「今回はダンジョン化している遺跡の調査であって踏破じゃない。という事でなるべく戦闘を避け、目的地まで隠れながら進む。警戒を怠らないように!」

二人から元気な返事が返ってくる。

さっそく遺跡の中に入る。遺跡の地図は、グラムが村に保存されていた地図を模写して持ってきてくれた。おかげで最深部まで問題なくいける。

記録によれば地下二階に祭壇がある。ここに何か勇者の痕跡があると良いのだが・・・地下までは一本道になっているから苦労無く進めるはずだ。

問題は・・・

「予想よりも敵が多いな。」

「村の人間でも近づかない場所ですからね。いつの間にか増えてしまったのでしょう。」

明らかに亜獣が多い。

今は崩れたがれきの後ろに隠れているが、そこにたどり着くために数体の亜獣にあった。全て戦闘を回避しながら移動しているが進みにくい。

亜獣の種類としては元の世界でいうところのガゼルやラクダと言った生物がベースになっている。

どいつもこいつも体から不気味に魔石をはやしている。目的なく壁に突進したり何を考えているかわからないがずっと一点を見たまま静止している。

相変わらず亜獣化した生物は混乱した行動をとっている。

「困ったな、戦闘になったら狭いし数も多いから厄介ですよ。」

グラムが不満をもらす。

「探査魔術を常時発動状態にしておこう。探査魔術なら消耗も少ないし、ここは道が開けているから障害物にさえぎられることもない。近づいてきたら魔導ランプの光の強さで判断できる。」

そう言いながら間髪入れず探査魔術を発動した。魔術ランプはほんのりと光を発し、他の生物の存在を知らせる。

色は赤色だ。

俺を先頭に後ろにはリルカ、しんがりを務めるグラムと言った感じで縦に並びながら進んだ。


元はただの神殿として使われていた場所で300年前に何故か放棄され別の場所に再建されている。だから特別なトラップなどがあるわけではない。

たびたび現れる亜獣を躱しながらどんどん奥へ、地下へ進んでいく。ここら辺一体の人々が参拝に訪れていたという神殿だ。非常に広い。


「広いな、こんな空間を300年も前に作り出していたなんて・・・どうなっているんだ?」

「わかりません。我々の持っている地図にもこのような広い空間があるなんて記されていません。」

「と言うことは、その地図を作ってから出来上がった空間と言いう事か?」

グラムは言いよどむ。

流石に知らないようだ。

それにしてもこの世界の建築技術では、このような広大で精巧な空間を作れるとは考えにくい。

それに不可思議な模様が壁一面に描かれている。

「今は分からない。場合によっては一度脱出することも考えておく。先に安全確保のためここら辺一体を調査しよう。」

「わかった」「わかりました。」

先に進むのではなく、周辺の調査を始めた。


事前情報によれば一本道になっていて地下には階段を使っていけるはずだった。しかし中は広い空間が広がっていて小部屋のような場所が連なっている。

調べれば調べるほど不思議な場所だ。見たこともない、いびつ模様で彩られた壁にいびつな部屋の形だ。


壁面にはところどころに加工した魔石が埋め込まれている。しかしどれもこれも劣化していて効果を発揮しない。それに見たこともない魔石だ。光の魔石に近いがよくよく見ると全くの別物である。

魔石の種類は、ある程度は図鑑で確認したから知っているはずだけど、見当もつかない。


グラムが持ってきてくれた地図に従い、地下2階にあるという祭壇に行く。しかし、儀式に使っていた痕跡がいくつか見受けられるだけで、特徴がない。

特に何も見つけられず、地下1階に戻ってくる。


それにしてもこの場所、グラムが持ってきた地図より広い気がする。


「タロウ殿、こちらを見てください。」

グラムに呼ばれた。

何か見つけたようだ。

グラムが指さす方向には何かを引きずった跡が残っていた。

「石の床にくっきりと残るような深い跡だ。これは相当重いものを移動させていたみたいだけどなんだろう?」

「わかりません。記録にはそのような物があったとは書いてありませんでした。ただ私が記録してきた内部構造によると元の部屋の大きさはここまでの位置です。」

グラムは持ってきた地図を見せてくれる。

確かに地図に記されている部屋の大きさは跡がついている部分まででそれ以降の空間は記されていない。

「例えば、石でできた床をへこませるほどの重い壁があって、私たちの知らない、この部屋を隠していたとか?」

エリンは思いついたことを話す。なんとも突飛だ。

でも、案外アリかもしれない。


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