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名もなき砂漠-4

「おい大丈夫か?」

コイルが心配そうにこちらを覗いてくる。

「ああ・・・問題はない。ただ疲れが大きいだけだ。」

グラムに担がれて台車に乗せられる。

「タロウ殿、ありがとうございます。おかげでここまで来ることができました。もう街が見えています。サンドワームが生息している場所をすでに抜けていますから、後はゆっくり進みましょう。」


グラムはそう言って動かなくなった魔導三輪を押し始めた。ゆっくりと動き出す魔導三輪。

「俺も押すぜ!タロウには助けられたからな。しばらく休んでな!」

俺は荷台に乗せられて運ばれる。エリンもいつの間にか魔導三輪を押していた。日が傾いたころには街の門にたどり着く。その頃には俺も歩けるぐらいまで回復していた。


結局、魔導三輪は回復せず一度本格的にバラして修理する必要がありそうだ。中々憂鬱だが、幸いにも途中までは開発に携わっていたし、設計図も貰っている。

材料さえあればなんとかなるはずだ。


門の入り口までたどり着く。砂漠の中にぽつりとたたずむ大きな街。それがエントシ。

ここら辺一体の街や村の中で一番大きくギルトのエントシ本部も置いてある。確か代々王家が収めていると聞いている。

近くにある大きな川から水の魔石を大量に使って農業をして食料を生産している。


最近は砂漠の地下から柔らかい魔石という物が出土しているらしい。これをどうにか利用しようとして各地から色々な人々が集まっているらしい。

しかし俺達は街の中には入れないでいる。いつもの渡航時期では考えられない時期に砂漠を渡ってきた奴らなんて怪しすぎるからだ。

「お前ら怪しいやつだな。この時期に砂漠を渡ってくるなんて、変装した盗賊の類じゃないだろうな?」

「違います。俺達は冒険者ギルドに登録している者です。ほら、これが証明書」

そう言ってギルドからもらっている書類を見せる。これは他の街や村でも通用したやり方だ。しかし

「そんなものいくらでも偽造できる。他に証明できるものはないのか?」

困った。

そう言えば今までずっと誰かが居てくれたから何とかなったけど、まさかギルドの証明書が通じないなんて・・・

「私はタカガネ・グラム、街のはずれのルーナ村出身の者だ。これが証拠だ。」

そう言ってグラムは自分が持っていたロングソードの鍔の部分を見せる。そこには何を表しているか分からないが幾何学模様が描かれている。

若い門番達は手を顎に当て、大げさに悩んでいる様子だ。

はなから通す気はないようだ。何が狙いだ?

「む、それは確かにルーナ村の紋章だ。しかし、それでも怪しいやつらだな・・・ん?そっちのあんたエリンじゃないか?」

名前を呼ばれてエリンが前に出る。

「確かに私はタカガネ・エリンです。」

「そうだよな!砂漠の前の村で助けてもらったことがあるんだよ。」

門番の片方の方がペラペラとしゃべりだした。

「すみません。あまり覚えてないです。」

「それもそうだな。数年前の話だからな。しかし、お前たちの身元を認める。街に入っていいぞ。」


エリンを見るところりと意見を変え、ひと悶着あったが何とか街に入った。

街の中は外から見るより簡素でここらへんで一番大きい国には思えないぐらい静かだ。住民たちが静かに商売を営んでいるようだ。


一応露店は出ているので物資に困ることはなさそうだ。砂漠の街の食料と言えば保存のきく干し肉とかチーズ辺りかと勝手にイメージしていたが、意外と野菜も多い。農業が盛んな証だろう。

ここら辺の特産品だろうか?見たこともない装飾品や置物、壺が売られている。観光して回りたいがひとまずは宿探しだ。

と言ってもいつもと同じようにギルド直轄の宿屋に泊まることにした。


久しぶりのベッドだ。特に今日はとてつもない消耗をした。これからもこれ以上の事が多く起こるだろう。

でもこんなところで止まってられない。

荷物を投げ捨てるとベッドに倒れこみ死んだように眠った。


次の日から精力的に活動する。まずは魔導三輪の修理だ。いまだに動かない。

おそらく蒸気機関。案の定、水を送るためにつけられている水の魔石が、水につかっている部分が露出して一部劣化していた。本来ひっくり返らないはずの部分がひっくり返って水の魔石が露出したのだろう。

これを常備していた水の魔石に交換する。これだけで動き出してくれるとありがたいが・・・

部品を入れ替えてテストする。幸いにも一発で蒸気機関が復活した。うるさくて大きい振動だが、懐かしくて心地いい。

部品を変えるだけで動いたのは幸いだ。他の場所が壊れていたとしたら正直、直しようがなかった。


魔導三輪は、この世界では画期的な移動方法だがまだまだ技術的には未熟だ。一瞬にして壊れる事がある。もっと注意して動かさないと昨日までのように砂漠のど真ん中で足を失いかけるだろう。

修理を終え、本来の目的である。勇者伝説の調査に切り替える。

この町には冒険者や一般市民が利用できる図書館は無い。しかし有名な遺跡がある。エントシで見た勇者の日記にも遺跡を訪れる予定があることを記載していた。

だから今回はこの遺跡の調査をメインで行う予定だ。


と言ってもグラムたちを村まで送る約束もしている。グラムの話だと村から少し行ったところに遺跡があるらしい。グラムたちを村まで送ったあと、遺跡に立ち寄ってみよう。

グラム達の村には数日後に向かう。

俺は冒険者ギルドの前に来た。


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