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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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【幕間】明かるい丘-1

私はヴェロニカ・アダムズ。

この帝国を収める女帝です。父である皇帝は元々、体が弱く公務を続けられるか怪しいと昔から言われていました。

昨年から体調を崩し年齢的にも難しいだろうという判断。

そして皇帝の威信低下を防ぐため早急に皇位を交代し、前皇帝が存命のうちに新皇帝として私が経験を積むほうがいいだろうという大臣の判断から私が皇位を継ぐことになりました。


他国では男系の王しか認めないとか、男性しか王になれないという決まりがあるのに、どうして古の大国である帝国は女性である私も帝位に付けるのでしょう?

いえ、古から続く理由がそこにあるのかもしれません。

でも弟がいるのだから、そっちでもいいじゃないですか・・・まだまだ幼いですけど。昔から考えてきたことですが、諦めるしかありません。


ベッドに倒れこみました。長い髪がベッドに大きく広がる。

幸い今日は一般市民や冒険者の方々のお話を聞く会でした。素直に聞いていればいいので、そんなに疲れていません。


毎日が公務で自由のない私は、冒険者のお話を聞くことが好きです。

私の知らない世界、私にはない自由な世界、堅苦しい、しきたりや作法が無い。過ごしやすい世界、あこがれる・・・

でも執事や近衛たちは私が冒険者と深く関わることを良しとしません。冒険者だけじゃありません。どんな方々にも、もっとお話ししたいのです。

きっと女帝なんて向いてないのでしょうね。・・・


こんなこと考えてもしょうがないですね。明日も早いですし、もう寝ましょう。


今日は狩猟の儀と呼ばれる儀式です。

帝国の伝統的な儀式で、新しく帝王となった者が亜獣を倒します。新皇帝となった人の強さを示すものです。

と言っても城の中で暮らしている私には全く戦う力はありません。

ですので、近衛が私の警護に付き、信頼の厚い冒険者たちが亜獣を生け捕りにして連れてきます。

そして疑似的に私が攻撃する振りをして始末は冒険者たちが付けます。こんなことなら儀式をやる意味があるのでしょうか?


思うところはありますが、あまり城の外には出られないし冒険者みたいで、実は楽しみです。でも亜獣は怖いし、近頃は王国の調査隊がうろついていると情報があります。

街の噂では戦争が近頃起こると流れていますが、帝都の中枢からすれば、もうすでに戦争は始まっていると言えるぐらい過熱しています。今回、帯同する兵も多くなってしまいました。

何とか回避したいものです。

儀式の事を考えなければならないのに戦争の事で頭がいっぱいです。


私は大型の馬車に乗って帝都の外に出ます。外から手を振る民に、手を振り返しながら外に連なる大きな山を見ます。

あの山のふもとが今回の目的地です。この山はジート山と呼ばれていて、帝国と王国を遮る連山です。

ここは比較的安全で多くの放牧民や農民が暮らしています。


ただ放牧している家畜を狙って亜獣が来るそうです。この亜獣から家畜を守るため、駐屯兵が駐留していて定期的に亜獣を討伐しています。そのおかげで周辺の安全が保たれているわけですね。


今はこの周辺を取り仕切っている大きめの農村に向かっています。

大きな馬車に大人数で移動する。だから移動速度は遅い。以前の市民パーティーで教えていただいた魔導三輪という物に乗ってみたいです。お話では荷物を載せたまま、長時間かなりの移動速度で移動できるという物だったはずです。

それを用いれば、楽でしたのに・・・大臣たちが、伝統が大事と言ったのでしたね。頭が固くてこまりましたわ。


日が傾き、外が赤くなってきた頃、ようやく農村にたどり着きました。

畜産と農業を中心にやっている典型的な村。のどかで静かです。いいところですね。

別荘があるので数日間はここで暮らします。

食事を終え、一人個室で時間が過ぎるのを待ちます。寝るには早いけど特にやることが無いので窓の外を眺めます。

いつもとは違う外の景色。

部屋の明かりを消せば外の明かりをしっかりと見ることができます。いつもとは違う雄大な自然が月明りに照らされて見えて新鮮です。でもそんな草原の中に一つ人工的な光の塊があります。


私たちについてきた冒険者の野営地です。

明日から彼らが亜獣の探索に出ます。彼らが捕まえて来たら儀式が始まります。大臣の話ではいつも2~3日かかるそうです。それまでは暇ですね。


せっかく普段は来ることができない土地に来たのですからお散歩ぐらいできないでしょうか?

明日執事に聞いてみましょう。まぁ執事はこういう時、大抵許してくれないのですけどね。


ダメもとで外に出ていいか聞いてみると、なんと護衛付きで外に出ることを許してくださいました。執事にしては珍しい限りです。

何はともあれ願いが叶うのです。喜んでいきましょう。


外は気持ちいいほど晴れていました。私は村から立派な馬を借りて、近くをゆっくりと歩いて進みます。

吹き抜ける風が心地いいです。

頑張って乗馬を習ってよかったです。周りにはいつも通り近衛が付いてきます。近衛の方々はいつも必要最低限のことしか話してくれません。

特にいつもいる女性の近衛は、そばにいてくれるのにあまり話してくれません。

私には数人の近衛騎士がいます。

その中でも女性の近衛騎士が二人います。今回はいつも無表情の騎士です。ちなみにもう一人の方は近衛騎士とは思えないぐらい、はっちゃけています。

騎士は髪をきれいにまとめ、重そうな鎧をいつもつけているのに、その重さを感じさせないほど優雅です。剣の腕もさることながら、魔術も使うことができるそうです。素晴らしい優秀さですね。

その強さと同性であるということから私の護衛をしているのですが・・・あまりにも話してくださいません。

兵隊長である大臣は、少しは会話してくれるのに・・・もう少し話してくれてもいいと思うのですが。

前方には雇った冒険者のうち、亜獣を捕まえに行っていない人たちが先行して安全を確認しています。

亜獣の捕獲は有力なパーティーが行っているそうです。なんでもチームワークがあるから彼らだけで行くそうです。皆で探索したほうが手っ取り早くて良いと思うのですが?

確か先行している冒険者の中に以前、帝国近くで見つかったダンジョンをクリアした方がいらっしゃいましたね。お名前はアレクさん・・・でしたでしょうか?


確かあの大きな斧を持っている方ですね。せっかくですし、お話を聞くことはできないでしょうか?隙を見てみましょう。

しかし一度もお話はできませんでした。


お昼休みの時も私は木陰で昼食をとっている間は遠くで警備して、帰る時も遠くで警備して話す機会なんてありませんでした。せっかく冒険者のお話を聞けると思ったのですが、残念です。

2日たった頃、生け捕りにされたシカの亜獣が連れてこられました。儀式が始まります。


次は14日に投稿予定です。

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