帝都Ⅴ-4
「ああ、時間はあるけど、先に買い物済ませたらどうだ?ケニーがずっと荷物持ちになってしまってるし・・・」
「ん? あはは、は、ごめんね。ケニー急いで終わらせちゃお。」
「俺は大丈夫っす。」
昼過ぎにもう一度ギルド会う約束をして、先に買い物や挨拶周りをして歩いた。
そんなことをしているとすぐに昼になり、ギルドへと足を運んだ。
ギルドに入るとクララに手招きをされた。
横にはいつも通りケニーと、知らない二人組の男女がいた。
「紹介するね。タロウがダンジョンの2個目のモンスターハウスで救出した。プエトジ公国出身のタカガネ・グラムとエリン兄妹。」
救出した時、治療に専念していて覚えてなかったけど、この人たちだったのか・・・二人とも肌色は浅黒く、ガタイが良く、背が高い。髪は薄い青色?といった感じで、その表情はどこか野生の荒々しさを感じさせる。
そういう民族性なのかもしれない。
お兄さんの方は綺麗に切りそろえられた短髪で妹さんの方は長く伸ばしている。
腰にロングソードを装備しており、目立った鎧はつけておらず、非常に身軽だ。見るからに剣士であることが伺える。
俺をしっかりと見据えて兄の方が口を開く。
「初めまして、タロウ殿、グラムです。あの時は本当にありがとうございました。」
二人がそろって立ち上がり、頭を下げてきた。
「頭を上げてください。ダンジョン内部ではよくあることです。あなた方だけでも助かってよかった。」
そう言って座ってもらった。お礼の品だと言われて地元のパンを貰った。結構固いパンだった。
兄のグラムに一通りお礼を言われて照れくさくなってしまった。
「それでクララ、これだけじゃないんだろ?」
「そうだよ!この二人を一緒にプエトジ公国まで連れて行ってほしいんだ。魔導三輪を使えば余裕でしょ?」
「確かに余裕だけど、二人はどうしてプエトジに行きたいんだ?俺は色々と調べものをしながら進むから、寄り道が多いぞ。」
「私たちの故郷はプエトジ公国周辺にある村です。仲間を失い、冒険者稼業を続けられなくなった我々は村に戻ろうと決断しました。元々、村では手に入れにくい魔石や外貨を送るのが私たちの役目でしたから、それができなくなれば冒険者を続けている意味がありません。」
妹のエリンが答えてくれる。続いて兄が口を開く。
「我々は近接戦闘が得意です。あなたは魔術使いだと聞いています。相性はいいと思います。それに寄り道の件も問題ありません。」
「どうして俺に?あっちに向かう人たちは他にもいるでしょう?」
「タロウ、わかってないな~」
クララに諭される。
何をわかってないのだろうか?するとケニーが耳打ちをしてくれた。
「彼らのパーティーは死傷者が出ています。冒険者たちは死者を出した人たちをパーティーに加えない暗黙の了解のようなものがあるっす。それに彼らは結構な額を弔いに出したそうっす。自分たちで護衛の依頼を出すのも難しいっす。プエトジまでは遠いっすから。」
「なるほど、それで俺か・・・暗黙の了解というのはあまり気にしないな。」
「それを見越してのお願いっす。俺からもお願いしたっす。こういう事情を持ってる方々は報酬がよかったとしても依頼を中々引き受けてもらえないっす。」
グラムとエリンを見る。二人は暗い表情のままうつむいている。彼らも自分の置かれている状況をよく理解しているのだろう。
確かにプエトジまでは亜獣ぐらいは出ると聞いている。
重量も2人増える分には問題ないし戦闘力向上につながるか・・・
「わかった。一緒に行こう。俺は近日中に出発する予定だ。もし何か準備するものとかあれば早めに済ませてもらえるとありがたい。それから具体的な道順を相談しよう。」
「はい、ありがとうございます!このご恩は絶対忘れません。」
兄の方が元気に答える。この兄の方には過剰に尊敬されているかもしれないなぁ~妹さんには警戒されている?
快く引きうけたが、ちょっと心配になってきた。




