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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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帝都Ⅴ-3

「は、初めまして、冒険者のタロウと申します。魔術が得意です。」

し、しまったーー

反射で元の世界風な自己紹介をしてしまった。


「タロウ、御前です。頭を下げてください。」

アレクがさりげなく教えてくれる。急いでその通りにした。

「ふふっ大丈夫ですよ。この会はお堅いものではありません。お気になさらず、タロウさんですね。お噂はかねがね聞いております。とてもお綺麗な魔術をお使いになるとか。今度みてみたいですね。」

「はい、機会がありましたら是非お楽しみいただけると思います。」

今日一番の緊張で変な事を口走っているかもしれない。

「ふふ、愉快な方ですね。もっとお話を聞いてみたいです。そうだ今度の狩猟の儀でついてきてもらうことはできないかしら?」

狩猟の儀?聞いたことが無い。何か貴族の伝統行事か?


お姫様がその言葉を発した瞬間、一気に周りにいた護衛の顔が険しくなった。

「ヴェロニカ様、それはできません。彼は冒険者ランクが足りていません。」

「そうですか、それは残念ですね。あっ、そろそろお時間のようです。また今度冒険のお話を聞かせてください。」

そう言ってお姫様は数人の人々と奥の部屋に帰っていった。帰り際、何人かの護衛の人々ににらまれた。

特に一人の、女騎士に睨まれた。・・・以前もこんな風に睨まれたかも、俺は護衛の人に恨まれやすいのかな?


その後もパーティ―は何事もなく進む。そして、お開きとなった。

帰りは来た時と同じメンバーで歩いていた。マシューさんはお家の馬車が来ており、それに乗って帰る予定だ。

彼とも少し話すことができた。彼は親がずっと納めている領地の新領主となるため親の仕事を手伝う傍ら勉強しているらしい。

遠いながらも帝国の貴族とコンタクトを積極的にとり繋がりを作っているそうだ。

親孝行もできて、立派なことだと思う。

ただ外の世界にも興味があって、俺やアレクに冒険した場所や経験を訪ねてきた。貴族というのはどうも冒険者のお話が好きらしい。


アレクは結構飲んでいた気がするが、何ともなさそうにしている。

エマさんは完全に酔いが回っていた。足元がおぼつかず、フラフラとしている。

「エマさんしっかりして、そんなことしていたら転んじゃうよ。」

「だ~大丈夫です~ちゃんと、みえてますよ~」

そう言って明後日の方向を向いている。完全にダメそうだ。俺はエマさんに肩を貸して何とか歩く。


会場を出て少し行ったところに、大きめの馬車が止まっていた。中からマリーさんと一緒にいた執事が出てきた。どうやら迎えが来ていたようだ。助かった。

馬車の中にはマリーさんがいた。俺たちはそちらの馬車に乗って、帰ることとなった。

「助かりました。マリーさん。冬道をフラフラのエマさんを送るのは心配だったので。」

エマさんはマリーさんに膝枕されて寝ている。

「そのまま送りオオカミになってもよかったんだけどね。」

「俺はそんなことしませんよ。」

「まあ、冗談はこれぐらいにして、タロウ、率直に見て新女帝はどう感じた?」

「ヴェロニカ様ですか?う~ん。そんなに話していないので具体的には分からないですけど普通の貴族といった感じですかね。ただ・・・」

「ただ?」

「なんか無理をしているように感じました。わかりやすく顔が固まっている瞬間が何度か見て取れたので、後は冒険者のお話は楽しみにしているみたいでしたよ。」

「そうか、女帝とは言っても年頃の娘だな。」

「年齢的にはまだまだ若いのですし、妥当なのではありませんか?」

「ああ、ただの貴族であればな。しかし幸か不幸か帝国のトップだ。普通ではない、実力をつけてもらわないと困るのだよ。帝王としてね。」

「アレクはどう思う?」

俺にはわからない世界の話だ。アレクは貴族をそれなりに知っているみたいだし、何を答えるだろうか。

「・・・ああ、なんですか?聞いておりませんでした。」

「アレク?」

何と静かに寝ていたのだ。こいつ結構酔っていたな。

「お疲れみたいだね。さて、タロウの家の近くだ。すまいないが、ここらへんで勘弁してくれ。君の家まで行くと道が悪くてね。

「ええ、構いません。お酒で熱くなった体を冷やすにはちょうどいいです。ここまでありがとうございました。」

「・・・タロウ。君は力を得た。その力を疎ましく思う者もいる。今までよりは気を引き締めて行動するように!」

最後に注意をされてしまった。

「わかりました。ご忠告ありがとうございます。」


俺はほんのりと雪が積もった道を歩いていく。周りに木々が立ち並んできた。時間も遅いし場所が場所だ。俺は一人で歩いている。

それにしても気を引き締めるようにか・・・俺も誰かに襲われたりするようになるのか?だとしても、はっきり言って何をすればいいかわからない。


隠し持っていた特別製の矢を使って、探査魔術を使ってみた。こんなことをやっても受信用の魔導ランプが無いと結果は分からない。だから意味のない行動だ。

酒で酔っているせいか、テンションが異様に高ぶっている。

周りには何も無いし、一人なのは分かり切っていたから、試しに“見えているぞ”とか言ってみた。

言ってすぐに恥ずかしくなってきた。急いで帰り、新居でとっとと寝た。


次の日、酔いからすっかりさめて昨日の自分が最後にやった行動を思い出して少し後悔してから旅の準備をしていた。

大分遠回りをしてしまったが当初の目的通り、砂漠の方へ旅をするのだ。


エマさんから魔導三輪を借りることができた。必要なものを的確に積み込んでいく。今度は一人だから効率よく進まないとな・・・

街に出てプエトジ公国までの地図を買ったり、食料を集める。するとクララとケニーに会った。二人で買い物をしている。

「やあ、ケニー、クララ二人は何を買っているんだ?」

「タロー数日ぶり、ダンジョンの主開拓者が決まったから、その人たちが軌道に乗るまでは警備するの。そのためにもう少し、帝都に駐留しようってことをケニーと決めたんだ。だからそのための生活品を集めてるの。」

主にクララが買ってケニーが荷物持ちをしているようにしか見えない。

クララの話だとダンジョンの主開拓者はフジワラ商会に決まったらしい。どうやらアレクが斡旋してくれたみたいだ。たしかにあそこなら信頼がある。


これで定期的に収入が見込める。ダンジョン攻略のおかげで安定した財源になった。

ダンジョン攻略後もしばらく亜獣がうろつくことはよくある。だからそれまでは冒険者が警備することになっている。ただ強くは無いし、数も少ないので彼女ら二人で十分に対応できるだろう。

アレクもしばらくは帝都にいると言っていたし、戦力的には問題ない。

「タロウはどうするの?」

「俺はプエトジ公国に行こうと思っているんだ。」

「なんで? 噂だとあそこは何もないって聞いたよ。」

「俺にとってはあるよ。 あそこは勇者伝説に出てくる場所なんだ。」

「そう言えばタロウって勇者伝説を調べてたね。ふーん、そっか、まぁ頑張ってよ。私はそう言うのあまり興味ないから・・・そうだ!プエトジ公国に行くならちょっと紹介したい人がいるのよ。この後、時間空いてる?」

クララはにやりと何か企んでいる顔をした。タロウは気づかなかったが、付き合いの長いケニーにはわかったようだった。


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