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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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火?のダンジョン-10

俺は強い光を見てようやく現実に引き戻される。

いつの間にか魔術を使っていた?


驚いて集中力が落ちたものの、すぐに気を持ち直す。ここで止めたらだめだ!炎をまとった風を魔獣に押し付ける。


炎の熱さは一つではない。

空間が赤く染まり、その光が当たっている部分に熱を感じる。卵型の外壁を伝って部屋の中が暖かくなり、強い風は柔らかい土壁をどんどん削っていく。


爆発と風で、閉じていた入り口が削られて大穴が開く。

ダンジョン内部に戦闘と燃焼の音が鳴り響き不気味な音が鳴り響く。遅れて、熱風がダンジョン中を駆け巡る。

魔術の出力を上げて、このまま焼き尽くそうとする。だが初めて発動した魔術、力加減が分からず直ぐに魔素が足りなくなってしまった。

風力を維持できず風は消えてしまう。


パチパチと物が焼ける音と肉の焦げるにおいが広がる。香ばしいにおいを地面に両手をつきながら感じていた。

汗だくの顔で魔獣を見る。

しかしツチノコの魔獣は燃えていなかった。炎が付いた鱗を自ら外し、炎から逃れていたのだ。鱗を外した体にもやけどがある。

魔獣は強くこちらを睨んでいる。持ち前の速度で突進してくる。

俺はあまりの疲労に動けない。


だが、俺はふき飛ばされることは無かった。俺は一人ではない。

全体に生えそろった硬い鱗を外せたのだ。これだけでも大きい功績だろう。

突進はケニーによって止められ、そのすきにアレクが素早く首元に上から一撃を加え、次に顎下側からもう一撃を入れた。続けてクララは脳天に魔弓の一撃を加えていた。すべての攻撃が鱗の無い柔らかい肉によく効いている。


それだけの攻撃、そして積み重ねた攻撃により、さすがの魔獣もこと切れる。

地面に倒れ動かなくなった。魔獣は目が白くなり大口を開けて大量の血が流れる。


ついに勝った!俺は雄たけびを上げた後、その場に仰向けに寝転がった。クララはその場に座り込み魔弓に寄りかかっている。

ケニーはクララの近くで警戒を続けている。


アレクは注意深く近づき今度こそ、倒したことを確認している。念のため最後につながっていた首の骨を断ち切ったようだ。

終わった。

ようやく終わった。


今回も残り体力はかつかつだ。・・・だけど多くの物を得られた。

何より 魔術 まさか自ら作り出した風の魔石で魔術を発動させられるなんて、考えてもいなかった。

しばらくの休憩のうち、皆疲れながらも立ち上がり、後処理をし始めた。魔獣の処理は、アレクとケニーに任せ俺とクララはこの魔獣のいた空間と、魔石の有無について探っていた。


ところであの熱風の中みんなは、ケニーの大盾の後ろに隠れていたらしい。俺は夢中になって攻撃していたけど、後になってよく考えると色々と周りへの被害が大きい攻撃だ。


魔獣がいた部屋は卵型の形状をしている。ここに来るまでにあったモンスターハウスは間違いなく魔獣が作ったのだろう。だとするとあいつがいた場所は魔石が少なくなっている傾向がある。

魔石の採掘は難しいか?・・・しかし難しいことは無かった。

簡単に巨大な火の魔石を発見した。一部にかじられた跡がある。魔獣はここに埋蔵されていた魔石を食べていたのか?


より調査を進めると、大小さまざまな大きさの火魔石が表面に露出している。

軽く、探査魔術を使うと土の中から魔石の反応が捉えられきれないぐらいの反応があった。これは採掘量が期待できる・・・魔獣を倒した意味があったな。

そんな風に思っているとアレクに呼び出された。

「これを見てください。あの魔獣のお腹の中に溜まっていた物です。」

それは火の魔石だった。やはりあの魔獣は地中に埋まった魔石を探して地面を掘り進めていたのか・・・


魔獣の生態は何一つわかっていない。魔獣は何故ダンジョンによく出現するのか。何故あんなにも巨大化したり戦闘力が上昇するのか。主食は何なのか。今回もよくは分からなかった。

アレクは頭の大きさほどもある球体型で深紅の魔石を持っていた。何かと聞くと大型の魔獣がよく持っているらしい。記念碑として持っている人が多いらしい。


なんと俺はこの魔石を貰うことができた。皆は俺なら使いこなせるだろうとのことだ。

簡易的に調査を終え、魔導三輪を応急処置し持ち帰られるだけの戦利品を携えて、最奥の部屋を後にした。

帰る道中、どこにも誰もいなかった。荷物も残っている。

相当急いでいたみたいだ。何かあったのだろうか?

異様に静かなダンジョン内部を進む俺達。疲れからかその進みはゆっくりだが、戦闘の勝利からか足取りは軽かった。

やがて道が大きく開きダンジョンを出た。

ダンジョンの外にはたくさんの人がいて、こちらを見ていた。見たことがある顔もある、どうしたのだろう?

やがてこちらを見ていた冒険者の一人がダンジョンの奥地で何があったのか、その後ろの蛇のような頭はどうしたのか、あの轟音と熱風はどうしたのか等、矢継ぎ早に質問してくる。

俺たちはいつの間にか囲まれてしまった。なにがあったか順に説明していく。

結局、多くの事を話したり、ギルドの職員に倒したことを証明する説明をしたりと、その日はダンジョンの入り口で一夜を過ごした。


ただでさえ疲れていたのに戦闘はどうだっただの、どんな方法を使っただの質問攻めにあった。酒も入っていたので、いらないことをしゃべってしまったかもしれない。すぐに寝てしまって、あまり記憶が無い。


次の日、重たい頭を抱えながら帝国までゆっくりと帰った。暖かい洞窟の中にいたので、冬の道が異様に寒く感じる。

長く潜っていたわけではないのに、久しぶりに感じる帝都の門をくぐった。

帝都に戻ってからは、すぐにギルドに行った。話は早馬で伝わっていたみたいですぐに会議室みたいなところに招かれた。


結局、ギルドでやった事はダンジョンを攻略した事を証明する契約書で、実際に誰が開発するとか、どうするというのはこれからだそうだ。しばらくは面倒な資料作成に追われそうだ。

この後はどうしようかと考えていたが、俺達がダンジョン攻略者であることはとっくに広まっているらしく、いろんな人に声をかけられたり、逆にこっちから会いに行ったりと意外と忙しかった。

落ち着きを取り戻すために2週間ほど要した。しかし大きな収穫が3つもある。一つ目から振り返ってみよう。


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