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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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火?のダンジョン-8

天井が揺れる。

「まずいこのままだと崩れる。急いで戻らないと!」


俺がそう叫んだ時だった。退路の天井が崩れ通れなくなった。

と同時に行き止まりになっていた前方の壁がひび割れた。


もう覚悟を決めるしかない。


皆に目線で合図を送り、クララが魔導三輪に飛び乗る。

俺が破裂魔石を投げつけた。

壁に大穴が開き通路が繋がる。俺たちは連なって奥の部屋に飛び込んだ。


部屋は真っ暗だった。俺は急いで手持ちの光魔石をばらまいて空間を明るくした。クララも矢に光魔石を括り付け天井に打ち付ける。


空間中が照らされ、周りがよく見えるようになる。しかし目の前には見たくはないやつがいた。


キラキラと光る鱗がばらまいた光魔石の光を乱反射し、はっきりと輪郭を映す。手足はないが15メートルは越えようかという巨体に3メートル以上はありそうな高さをしている。


だがそれ以上に目を引くのはその体型。頭が蛇でも腹の部分は太くなって尻尾は細い。


間違いない。こいつは・・・「ツチノコだ!」


「何を言っているのですか!?タロウ。魔獣です。やりますよ。」


アレクは走り出し、相手をかく乱する。

相手の攻撃手段を引き出すためだ。これは事前に話し合って決めていたことだ。

動きの速いアレクが無理しない程度にかく乱し、その間に3人で情報を集める。

予定通りツチノコ型の魔獣はアレクにつられて視線で追っている


ヒュン!


音が聞こえた。アレクを見ると思いっきり飛んでいる。いや飛ばされているのか?


ツチノコは体の巨大さに反してとても素早かったのだ。アレクは見事な身のこなしで着地する。顔や体のいたるところに切り傷が見える。


「アレク大丈夫か!?」


俺はすぐに回復の魔石を使う。何度も使っているおかげで最近は切り傷程度なら傷の直りが早くなってきた。


アレクの傷は治っていくが腕を抑えている。


「腕の方はヒビくらい入ったかもしれませんね。しかしこれぐらいなら問題ありません。

それよりも相手は予想以上に早いですよ。」


アレクはそう言ってバトルアックスを振り回して見せた。確かに何とか行けそうだ。

回復の魔石も徐々に効いている。


それにしてもあの魔獣、本当に早い。しかもあの鱗。おそらく固いだろう・・・それなら。

俺は煙玉を使った。

はっきり言って一瞬の目くらまし程度しかならない。しかしそれで問題ない。

俺とアレクは煙の中から飛び出た。

アタッチメントを取り付けたクロスボウで特殊矢を打ち込んでいく。だが予想通り硬い鱗に阻まれてしまった。ツチノコの魔獣がこちらを見る。


「くそっダメか。」

大丈夫、狙いはそれだけではない。

俺達にはクロスボウなんかより、もっと威力の高い矢がある。


ヒュン・・ヒュン、鋭く空気を切る音が2回聞こえる。

煙の中からクララが魔獣の頭を狙って打った魔弓の矢だ。これならあの硬い鱗も貫通できるだろう。


カンッ、ガンッ二種類の音が鳴る。

「うそ!あんなに硬いなんて聞いてない!」


二発の矢は、一発は軽く刺さる程度で、もう一発はなんとはじかれてしまったのだ。

ツチノコの魔獣が軽く頭をふる動作をすると、簡単に矢は外れてしまった。


「ごちゃごちゃ言っている場合じゃない。早く避けろ!」

俺は叫ぶ。

しかしツチノコの魔獣の方が早かった。

魔獣はクララに向かって突進する。クララは・・・吹き飛ぶことは無かった。


ケニーが受け止めていた。数メートル押されてケニーの足の形に土がえぐれて線が引かれている。


両方ともすごい力だ。ケニーは歯を食いしばり、体中の血管が浮き上がる。ケニーが雄たけびを上げながら魔獣を弾き飛ばす。

「ケニーありがとう。でもあんまり無理しないで!」「うっす!」

そう言いながらクララは走って魔導三輪の方へ向かう。

ケニーはショートソードを引き抜き、そのまま切りかかるがカキンという音を立てて、はね返される。刃が通らない。


さらにアレクが首元に切りかかった。バトルアックスの刃はほんの少し切り込みを入れるが、固い鱗に阻まれ刃が止まってしまう。


どうにも決定打を入れられない。

魔獣は特殊な攻撃は見られず、固い鱗と体の巨大さを利用した突進攻撃を繰り返してくる。

基本的にアレクかケニーが前衛に立ち、攻撃を防いだり、躱したりしながら俺やクララが煙玉などを使いながら、隙を見て攻撃する。どうやら鱗の隙間なら、少しばかり攻撃が通るようだ。それでも別の鱗に阻まれ、攻撃が浅くなる。


このままではダメだ。消耗戦になってしまっている。そうなれば先に体力が尽きるのは確実にこっちだ。

その前に片をつけないと。


そうだ!外側が固いなら体内ならどうだ?

俺は破裂魔石をツチノコの目元に投げつける。しかし破裂した魔石の破片は目を傷つけることは無かった。瞬膜のようなものが降りてきて目を覆う。


しかし動きを止めることはできた。特殊矢を魔獣の口の中へ打ち込む。

見事に口の中に入った。よし!これなら電撃が効く!・・・ことはそんなに簡単なことではないようだ。

ツチノコは一瞬震え動きを止めたがその後、問題なく動き出した。

「全然、効いてねぇ!」

「タロウ、ふざけている場合ですか!、あの大きさですよ!一番強いヤツを当ててください。」

「了解。皆!あれをやる。準備ができるまであいつの気を引いてくれ。それからクララ手伝いを頼む。」


「了解です!」「いいよ!」「うっす!」

それぞれの返事があった。


魔獣の部屋に銀色に鈍く光る矢がちりばめられていく。持っている光の魔石もちりばめる。


アレクもケニーも魔獣の注意を相当引き付けているが後手に回ってきた。体力が落ちてきているんだ。

急がないと。


クララと二人で準備したから一瞬のうちに電撃用のセットができた。

「よし、いいぞ。皆俺の後ろに来てくれ。」


みんなが走って後ろに来る。

ツチノコの魔獣もそれにつられて俺の方へやってくる。

だが、お前よりも電撃の方が何倍も速いんだよ!


俺はギリギリまで制御し、ダイナミックにかつ慎重に雷を落とした。

魔石からいつも通り幾何学模様が現れ、らせん状に腕に巻き付く。魔術が素早く発動し、太く赤と青が混ざり合った光がツチノコの魔獣を囲った。


雷は空間中に広まりあちらこちらに落ちていく。ちりばめた光の魔石からも電撃の線が伸び、確実にとらえたことを確信する。

バチバチと激しい音が響き渡り、まぶしすぎる光が周りを照らす。空気と肉の焼けるにおいが漂ってきた。

やがて攻撃が終わり辺りにちりばめた光の魔石は効力を失い、辺りは真っ暗となった。


俺は最大出力で攻撃したため疲れて片膝をついていた。

他の3人が予備に残していた光の魔石を起動し、辺りを照らす。魔獣がいる広場は、はっきりしないが広々としている。


ツチノコは体中から煙を立て横たわっている。流石に倒れてくれないと困る。

俺も光の魔石を使って辺りを照らす作業に取り掛かる。ツチノコの近くに落ちていた光の魔石を拾い起動する。


魔石は強く光り輝き俺の周りをほんのりと照らした。

そして他の敵がいないか、探査魔術を発動した。


ツチノコの近くに落ちていた別の光魔石が光った。いやそれだけではないツチノコの周りに落ちている光の魔石だけが光った。


こいつ・・・まだ!


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