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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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火?のダンジョン-7

2個目のモンスターハウスで長めの休憩をとった。


幸いにしてそこまで重傷になることは無く、脱水と気持ち悪さぐらいだったので休憩をしたらすぐに動きまわれるくらいに回復した。

居合わせた別の冒険者たちの力も借りて完全回復だ。


しかし、毒ガスか・・・すぐに俺たちは対策会議をしたがいい案は出なかった。


一旦、中継地点まで戻って対策を練り直すことになった。俺たちが持ち帰った情報はギルドが公式に派遣した冒険者を介してすぐにダンジョン挑戦者全体に伝わった。


念には念を入れてしっかりと1日休憩した。俺はテントの中で風の魔石を磨いていた。


これはエントシに行く前からもしかしたらと思って試していたものだ。

水魔石は、仕組みは分かっていないが水流を操る。ならば空気も操れるかもしれないと思っていた。しかしただの水魔石を空気中にさらしてしまうとすぐに劣化して使えなくなる。


そこで劣化した魔石をどうにかして魔素を通せば空気中でも使えるのではと思ったがうまくできなかった。ここまではエントシに行く前までの成果。


エントシから帰ってきてからは論文を書く傍ら、エマさんと確かめた活性化している魔石と劣化している魔石を接着させて使うという手法。

この手法を応用して実験を繰り返していた。

結果、水中で水魔石に劣化した水魔石を密着させ、隙間を埋め活性化した水魔石を劣化した水魔石で覆うということをした。

魔素を少しずつ移動させ、劣化した部分を少しだけ活性化させるのがポイントだ。


最初はお遊び気分だったが、まさかのうまくいってしまったのだ。これにより空気ポンプのようなことができた。

まだまだ製作精度で性能が大きく変わってしまうため、確かめることはたくさんあるが空気を操る方法を手に入れたのだ。

ちなみに名前は風の魔石と名付けた。


この存在を知っているのはパーティメンバーとエマさんだけだ。


―今、俺たちは焚火を囲んで対策を練っていた。しかしいい案は出てこない。

「結局、今一番いい方法はタロウの風魔石で吹き飛ばすぐらいですか。」


「でも、吹き飛ばした空気がどこに行くかわからない。それから吹き飛ばしてなくなるのかな・・・わからないことが多すぎる。」


「じゃあ、魔導三輪使って突っ切るてのは?もちろん運転手は私!」


クララはかなり魔導三輪が気に入ったようだ。ことあるごとに運転したがる。


「うっす」

ケニーはいつも通り。


俺達4人の声が響く。中継地点はかなり寂しくなった。


簡単だと思われているのに長引くダンジョン攻略、毒の霧という手のつけようのない壁、そして未確認の最終地点。それに加えて今のところ見つかっている魔石が小さいということもあるのだろう。


割に合わないと考えてダンジョン攻略をやめる人が続出したのだ。今は俺達みたいにギリギリまで到達した人たちか、物好きしか残ってない。いつの間にか中継地点にはギルド関係者もいなくなっていた。


「タロウ!ちゃんと考えてよ。あんたは作戦担当でしょ」

いつの間にか作戦担当になっていた。まぁ悪い気はしない。

しかしいい案は思いつかない。手っ取り早く解決する方法はないだろうか?


「ねぇタロウ、それもう一個持ってきてないの?」


「一応、持ってきているけど、あまり性能が良くないんだ。」


「そっか~タロウなら2種類の魔石を同時に使えるみたいだから片っぽで風を送って、もう一個で別の場所に誘導してあげればいいかなと思ったんだけど難しいかな?」


「別の場所ってそんな場所ありましたっけ?」

俺も思った疑問をアレクが聞く。


「あったじゃん、ここと同じもう一つのモンスターハウス!」


確かにあった。

だけどあそこから霧が濃い部分までそれなりに距離がある。

仮に2個目のモンスターハウス手前から毒の霧がある地点まで風を送り続けて、毒の霧が漂ってきたらそれをもう一個の風の魔石を使って、モンスターハウスに送る。相当疲れそうだが・・・


「それなら確かに移動させた後は、問題ないでしょうが次の日には元通りなら継続して攻略できませんよ。」


「だからそれもやってみればわかることじゃん。」


「確かに、後はタロウがそれをできるなら私は構いませんけど・・・」

確かにかなり疲れそうだが・・・試してみる価値はあるか。


「わかった。やってみよう。」


―次の日、さっそく2個目のモンスターハウスと通路の交差点に来ていた。


さて、どこまで通用するかはわからないけれど挑戦する価値はある。

風の魔石を一つずつ両手に持ちイメージを流す。


今のところ一番いいのは空気の束を流し、それを操るイメージが一番よく操作できる。空気や水と言えば流体だが、はたして流体の知識や実態を知っているイメージは、どこまで作用するかは未確認だ。


発動した魔石の効果で俺の周りに風が発生していることが分かる。


この風を毒霧のある通路の天井に這うように流し、どんどん出力を上げる。しばらく魔石を使い続けるが例の白い霧は現れない。

大丈夫、まだ疲れていない。


俺の扱える魔素量は他人と大差はない。

だけど、魔石や魔術を使う効率がいい?らしい。

魔石使いの知り合いが何人かいるが皆口をそろえてこのように言う。

俺にはよくわからないが魔石を使った後の、魔石の劣化具合を見て言っているのだそうだ。


ダンジョンの中にはかなりの風が発生した。砂や小さい石も一緒に飛んでいく。まるでハリケーンを打ち込んでいるみたいだ。


「あっ!来た。」

クララの声に合わせて、その方向を見ると確かに白い霧のようなものが漂ってきた。俺は二つ発動していた魔石を一つだけにする。


「皆、なるべく吸わないように布で口元を覆うんだ。」


俺の言葉にそれぞれ口元を覆う。

何処まで効果があるかわからないが、やらないよりはいいだろ。


俺も口元を覆いながらもう一つの魔石を足元に流れ始めた、白い霧に魔石を突っ込んで次のイメージを流した。


突如、白い霧は流れの方向を変える。


流れ、そして2個目の、モンスターハウスに落ちていく。

あの白い霧はおそらく空気より重い。

だから、ダンジョンの奥まで探査したとき身長が高いケニーは比較的新鮮な空気を吸えていたおかげで症状が軽かった。


今度はこの性質を利用して白い霧を排除する。

白い毒切りはダンジョンの奥からどんどん流れてくる。

額に汗が伝う。はたして疲労からくるものなのかそれとも毒か、どちらにしろ、今やめるわけにはいかない。

俺はこのまま霧と風を送り続けた。

どれぐらいたっただろう?一時間は立っているはずだ。

白い霧は目に見えて減っている。


「タロウ、もう満杯になりました。これ以上やっても入りません。・・・聞いていますか!タロウ!」


アレクの声が聞こえる。遅れて魔石の発動を止めることで返事をする。


「やってくれケニー・・・」

少しかすれた声で合図を出した。


ケニーは木で作った蓋でモンスターハウスの入り口にかぶせていく。これも廃材を集め、突貫で作ったものだ。やがて入り口は閉ざされ霧を封じた。

俺はそれを確認してその場に座り込んだ。


力が入りにくい、少し毒を吸ったかもしれない。それ以上に魔素を使いすぎたかな・・・頭が痛い。


「とりあえずは作戦成功ですね。後はしばらく様子見ですね。」


「ああ、一日で元通り、なんてことにはならないでほしいけどな・・・」


その日は一つ目のモンスターハウスに戻り、休憩した。

俺は一日寝たら完全に回復した。さて問題の毒切りエリアだが、霧が元に戻ることは無かった。


さっそく、しっかりと準備し、ダンジョン最奥を目指した。

そして俺たちはとうとう行き止まりとなっている場所までたどり着いた。意外と狭くてケニーがギリギリ頭をこするくらいだ。


そして何もない。


これで終わりではないのは誰の目から見ても明らかだ。あの謎の霧はどこから来たのか?これほどの巨大洞窟は誰が作ったのか?そして巨大な鱗の正体は何なのか?

「タロウこの奥に何があるか、わかりませんか?」


「やってみる。」

俺は魔石ランプを壁に接触させ探査魔術を発動させる。結果は・・・


「壁が厚くて正確な距離は測りきれないが、魔石の反応がある。それと・・・魔獣っぽい反応もある。」


「さて、どうしますかね・・・」


「ここまで来て引くという選択肢はなくない?」

たしかに目の前に前にはお宝がある。

しかし、目先の利益に飛びつく人間は結局損をするというのは世の摂理だ。

となると魔獣に対してしっかり準備すべきだろう。


「タロウ仮にこの壁を破壊するとしたらどうします?」


「俺なら破裂魔石を使うな。破裂魔石を地面に埋め込んで全部発動する。そうすると周りの土を少し吹き飛ばすのと柔らかくすることができる。後はそれを掘ればゆっくり進めるかも?」


「なるほど、しかしそれならこの先にいる魔獣に近づいていることを知らせているのと同じことですね。」


「アレクならどうする?」


「私なら思いっきり殴って破壊します。そうすれば奇襲もできますし運が良ければ相手にダメージを与えられますね。」

ぶっ飛んでるな~そんなことできるのはアレクぐらいじゃないか?


アレクは続ける。

「もし敵がこの会話を聞いていたなら私と同じことをしたのではないでしょうか?」


「おい、それはフラグ・・・」

アレクがフラグとは何ですか?といった表情をした時だった。

今までにない振動が発生した。地震?いや、そんなこと気にしている場合じゃない!


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