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【幕間】石のお嬢様

私はリナ・ローリング

久しぶりに帝国から弟が帰ってきました。

ここは屋敷の中でも一番高い塔の上、表の門が見えるので入ってくる様子が分かります。

大分、身長が高くなっていました。肉親の成長を感じられてうれしいです。


弟は帝国に留学していました。魔術が使えるので本来は他国に行くような人ではありません。魔術使いというのは国にとって貴重な存在です。戦力的にも産業的にも。

しかし弟は体も魔術もまだまだ未熟でした。

そこで魔術研究が進んでいる帝国に留学し、魔術の練度を高めるという目的でした。

しかしそれは名目上の理由です。


本当は取引。

幸いにして魔石の基本的な研究では帝国より王国の方が進んでいます。しかし戦争に向けて実用レベルに達しないのです。帝国は魔術研究が進んでいます。そのおかげか魔術使いの数も帝国の方が多いです。魔石を利用することに関しては同等ぐらいでしょうか。

となると決まった量しか物理変化を起こせない魔石と自由に物理現象を操れる魔術では、戦闘行為が行われた時、実用レベルで魔術の方が使えるわけです。


一流の魔術使いはたった一人で、訓練を十分に積んだ連隊や旅団に匹敵すると言われています。未熟でも数年かつ複数人で大隊に匹敵すると言われています。

王国は焦っているわけです。帝国もそれをわかっているのか軍を各地に展開し、圧力を強めているそうです。

幸いにもここは国の境界線が海に阻まれているため脅威は小さいわけですけど、だからでしょうか?家の弟が色々な意味を含めて帝国に行くことになりました。

「姉さま!ただいま帰りました。」

「おかえりなさい、ウィリアム。元気にしてた?」

弟は帰ってすぐ私のところに来ました。数年たっても変わらないですね。嬉しくも思いますがまだまだ幼いなとも感じます。

弟は私の姿を見るなり少し悲しそうな顔をしてまた笑顔になりました。隠したつもりでもバレバレですね。

もちろん私の病気が進行していたからでしょう。


私たちは会えない間、起こった事を話し合いました。

と言っても、日々この塔の中で過ごす私から話せることは少ない。

弟の話を聞くことがほとんどです。そんな中で弟はとうとう魔術が使えるようになったと言っていました。

これでは次に戦力として使われてしまうのではないか?そういう心配が付きまとい素直に喜べませんでした。

現に危険な魔獣と戦闘することになったようですし考えものですね。そしてもう一つ面白い話をしてくれました。師匠ができたと。師匠のおかげで魔術を使えるようになったそうです。さらに師匠は今この街に来ていて私の病気を見てくれるそうです。

私の病気についてはちょっと置いておいて、ウィリアムに信頼のおける人がいるというのは良いことです。

実家においても安心できる場所が少ないですから彼の心の支えになってくれるでしょう。

ちなみに、部外者は簡単には屋敷に入れませんがどうする気なのでしょう?

「ウィリアム、その師匠はどうやって屋敷に招き入れるの?」

「はい!メイドの格好をしてもらおうかと思います。後は宝物庫に行って変声の魔石を渡そうと思います。師匠なら、使えるはずです。」

・・・なんという決めつけ。わが弟ながらこれで大丈夫でしょうか?心配になってきました。というか宝物庫の物を持ち出しているのがばれたら大目玉ですね。

2~3日した後、本当に、やってきました。そのなんというかメイド?なのでしょうか。メイドの服を着た男性でした。声だけでは女性のように高い声をしていますが、高いだけですね。

とても不思議な感じです。


部屋について、すぐに彼は変装を解きました。サトウ・タロウという冒険者だそうです。簡単に紹介を受けました。ウィリアムが師匠というぐらいだからどんな方かと思いましたが、なんというかそんな雰囲気はありません。


仕方ありません。本当はこんな見ず知らずの方に色々と体の事を話すのは嫌ですが、弟が連れてきた方です。今までこんなことありませんでしたし、私が病気になったということは、弟にも病気の可能性があるかもしれません。私の記録を残しておけば弟はもっと楽になるでしょう。

「あの子の頼みなら仕方ありませんね。よろしくお願いします。」

さっそく治療が始まりました。

と言ってもいつも通りの問診です。もうかれこれ何度受けたことでしょう。きっとこの方もいつもと同じ・・・

それから彼は私の体に付着している魔石をじろじろと観察します。あまりいい気分ではありません。こんな姿でも女なのですから恥ずかしいです。


彼の眼は人を見る目というよりは、なんでしょう?物を見るといった感じです。私は恥ずかしいのに失礼な方ですね。

いつから魔石が体に表れたか聞かれました。隠しても意味が無いので正直に答えます。するとウィリアムから聞いていた話と合わないことを指摘されました。ウィリアムには本当のことを話していないので、当然でしょう。


そのことを伝えると彼は深く考え始めました。そんなことが大事なことなんでしょうか?また亜獣が増えているかどうかも聞かれました。そのような報告は受けていないのでそれを伝えるとまた、深く考え始めました。

本当にこの人は大丈夫なのか心配になってきました。そしてついにやってきました。魔石の採取です。

私は本当にこれが嫌です。とても痛いのです。何も考えられなくなるくらい痛いのです。

左腕の一番魔石が伸びている部分から一部を採取することになりました。

腕を固定して、斧と金槌を使って魔石だけを切りなします。少しずつやられると痛みが継続するのでひと思いにやっていただきました。

ドン! そんな鈍い音と共に10cmほどの魔石がころりと転がり落ちました。同時に私に鋭い痛みが走ります。まるで腕が切断されたみたいです。そして鈍い痛みに変わり全身を駆け巡ります。骨の中から金槌でたたかれているように響きます。

アンネが駆け寄って支えてくれます。回復の魔石を使っても効果が無いことが分かっています。苦しい。どうして私だけこんな目に合わなければならないの?

その日はこれで終わりました。私はその後も鈍い痛みと一日をかけて戦いました。

次の日、目を覚ますとすっかり痛みは引いていました。

しかしまた魔石採取があるのかと思うと憂鬱です。

お昼ごろになると次は脚が痛くなってきました。魔石が体に表れた頃はこんなことなかったのに、足を曲げられなくなってから痛みが足や腕に表れることが多くなってきました。

いつの間にかタロウさんが来ていました。私はできる限り平然を装い招き入れます。しかしタロウさんは私がいつもと違うことに気が付きました。たった一日にしかあっていないのに、意外と観察力が高いですね。

昨日はぱっとしないと思ったことを改めないといけませんね。

この痛みは魔石を切除したときと違い、時間が立ったり、さすったりしていると痛みが引いてきます。今回も次第に痛みが引いてきました。

タロウさんに痛みを感じるのはいつからか聞かれた。これもウィリアムには黙っていたことでした。

いつからか考えて伝えるとまた、昨日と同じように悩み始めました。タロウさんは思い立ったように質問をしてきました。あまり病気とは関係ないような質問をされます。

質問に答えているとアンネが来ました。アンネはタロウさんをひとにらみしました。


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