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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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王都

目の前にあるものは三階建てで横に大きい建物だ。白を基調とした色に華美な装飾が施されている。


寒い日だというのに多くの人が行きかい賑わっていることが分かる。

ほとんどの人が身なりがよく、明らかに権力者であることが分る。


中に入る直前で門番に止められるが紹介状を見せるとそれだけで入れた。

流石は貴族が書いた紹介状だ。

効果は抜群だ。


館内は大量の本が収められていて全てを見るのは到底不可能であることが分かる。

なんて言ったって滞在期間は2日もないのだから。それでもせっかくのチャンスだ。

可能な限り情報を集めておきたい。


俺は気合を入れなおした。

アレクにも手伝ってもらい、使えそうな内容が記載されていそうな本だけ集めてもらった。

童話的なものを避け、実話的な物を集める。

さすが王国一番の図書館だ。勇者の行動歴が書かれた本がいくつかあった。

差異は見られるが一つの場所にとどまらず、おおむね大陸中を移動していることが分かる。南下して砂漠の地方を旅したり、突如現れたダンジョンを踏破するなど各地で成果を残しながら旅したようだ。


南側には行ったことが無いがどうやら砂漠や、遺跡群があるようだ。機会があったら行ってみたいものだ。

ただ気になるのは400年前に行われたということだ。そして『異世界転生』だったり『トラック』といった日本語を残していることだ。やはり同じ地球からの人間なのだろうか?

「タロウ見てください。古い本ですが王国における活動記録という本がありました。これなら詳細に書いているのではありませんか?」

アレクが書庫の奥から、だいぶボロボロの本を持ってきた。

「よし、それを見てみよう。」

「それにしても伝説上の人物だと思っていたのに、まざまざと行動履歴を見せられると子供のころのイメージが崩れる気分ですね。」

「意外とそんなもんなのかもな。勇者といえど普通の人間だったみたいだ。」


活動記録だと、王からの依頼を受け勇者は歴戦の魔獣と呼ばれる特別な魔獣の討伐に来ていた。この世界には勇者伝説に並んで勇者と闘った伝説だとか歴戦等と呼ばれる魔獣がいる。

この王都には雪ヒョウの魔獣がいるらしい。目にもとまらぬ速さで移動し、どんな攻撃も躱してしまうらしい。

雑食かつ大食いで、たった一頭で街を壊滅まで追い込んだそうだ。そこで勇者に討伐の依頼が出されたとのことだ。

勇者が雪ヒョウの魔獣を倒した方法はいたって単純。雪ヒョウと同じスピードで動いて聖剣で切ったそうだ。

なんという力技。というか本当に人間か?

だがそれよりももっと貴重なものがあった。勇者の日記だ。破れていて途中から始まっている。

『〇月×日

今日も戦闘だ。最近は戦ってばかりだ。人の事を都合のいい戦闘兵器扱いしやがって。俺はこの聖剣を使えなければとっくに死んでいる。正直、このくそったれな大剣に生かされてるといってもいい。

ここ最近の楽しみは戦闘の後に、聖女と女剣士に相手してもらうことだ。二人とも美人だからいつも楽しいぜ。聖女は胸がでかいから・・・

幸いにも俺は強い。資金が十分にたまったら一等地に豪邸を建てて3人で住もうかな・・・』

なんとも生々しい内容が書かれていた。私生活丸出しだ。しかし特筆すべき点は日本語で書かれていることだ。

勇者は日本人で確定だ。


日記は同じような内容が続いていて確かに戦闘の連続であったことが伺える。

しかしこの日記を追っていけば、勇者がこっちの世界に来た時の情報、それからどうなったのかわかるはずだ。


今後もこの日記の続きを探してみよう。

勇者についての記述を見る限り、魔石とは違った摩訶不思議な力を使っているようだし、何かわかると良いな。

それから勇者の訪れたであろう土地を正確に記録し、後から行けるようにした。

王都に居られるのもあと一日ぐらい。

効率よく情報を集めていく。ちなみに勇者の名前はシバタ・ゲンジというらしい。こっちではゲンと呼ばれていたらしい。

次の日も資料を集める。新しくわかったことと言えば、勇者伝説と勇者に関係する遺跡が各地にあるということだ。それ以上は情報を集めきれなかった。さすがに2日ではこれが限界か・・・

ほんの少ししか滞在できなかったが収穫はあった。俺たちは2日間の滞在を終え、王都を出発した。

王都のとある一室、とある男と部下が話し合っている。

「アレクのヤツが王都に帰ってきたと思ったら、図書館なんかに何の用だ?あいつに図書館でなにかできる脳みそがあったか?」

「どうやら一緒に来た冒険者と一緒に、勇者伝説について調べていたみたいですよ。」

「勇者伝説?そんなもの調べたところでなんになるんだ?」

「動機は不明ですが、それだけ調べたら王都を去ったようです。どうなされますか?」

「構わん。どうせ、どこかの貴族の道楽だろう。今のあいつには何にもできん。放っておけ。」

男は本当に何しに来たんだという感じで資料を片付けた。

俺とアレクは王都を出て、またエントシに行く。

不幸なことに、雪が降ってきてしまった。こうなることを見越して、ゆとりある日程で移動していたので問題はないが、降雪の勢いが激しく何にもない平地で足止めを食らっていた。

吹雪の中、外に出るのは自殺行為だ。ということでテントの中に籠もる。雪で作った防風壁もあるので中は以外と温かい。

「王都に来てからというもの静かじゃないか、せっかくの地元なのに嬉しくないのか?」

「これといった思い出はありませんからね。実家も王都ではなくもっと内陸に行ったところにありますから。」

「じゃあなんで帝国にいるのだ? 王国で何かやらかしたのか?」

「ええ、そうですよ。少しやらかしてしまいましてね。ただ追われるようなことは無いので問題ないですよ。」

「え~ホントかよ。意外と悪だったんだな。何やったんだ?」

「ただのケンカですよ。考え方の違いみたいなものです。」

「ヤンチャだな。」

「昔は色々ありました。おかげで色々勉強できました。」

「勉強できたんだな。」

「ほう、ケンカですね。こんな吹雪の中外に出るのは寒いですよ。」

そんな感じで外の静けさとは対照的に騒がしく過ごす。

夜が明け、次の日。

吹雪は晴れていた。雪はかなり降り積もり、テントも埋まってしまった。しかし雪の壁を作っていたおかげで、周りよりは積もっていない。

外に出て出発の準備を終えたときだった。そいつは忽然と現れた。


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