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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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55/223

エントシ7

ふと力を吸われた感触があった。

気になって目を開けて確認する。

机の上は特に変わった様子は無い。気のせいか・・・相当疲れているようだな、やはり一度休憩をしようか。

そう考えながら、机の上に散らばった劣化した光魔石を手に取った


この半分だけ色が変わった劣化した光魔石を棚にしまう。これは魔石ランプに使っていた魔石が使えなくなって交換したものだ。

ん、半分だけ?なんで半分だけなんだ?

・・・そんなはずは無い。

俺が持っているのは完全に劣化した魔石だけだ。

半分だけなんて何時、手に入れた?

大体、魔石が劣化するときは全体的に均等に色が薄れて劣化する。こんな半分だけ色を塗ったように変わるなんて聞いたことないぞ。


不思議に思い、もう一度辺りを見渡す。

すると同じように少しだけ色が変わった光の魔石があった。

まさかと思い、半分だけ色の変わった劣化した光魔石を顕微鏡で観察する。

活性化している。

おかしい。今までこんな事はなかった。思うところがあっていくつか劣化した魔石を持っていたが、この劣化した光の魔石は、たまたまできた物だ。

半分だけ活性化した光の魔石は非常に弱い出力だったが、しっかりと使うことができた。


逆に半分だけ色が変わった・・・まるで色を吸われたように、変わったもう一つの光魔石に触れる。それは簡単に崩れた。まるで乾いた土のように崩れていく。完全に劣化していたのだ。


どうしてこんなことが起こるんだ?わけが分からない。

まさかと思い、リナさんから採取した魔石のサンプルを取り出す。これは体から離れても破壊するのに苦労するほど固い物質だ。

理解できない現象ながらも、直感が鳴り響くのだ。

体に付いた魔石を劣化させることで、排除できるのでは?


もう一度再現してみよう。

思い出すんだ。さっきはなにをやろうとした?目を閉じ、深呼吸をする。


あのときは物片付けていたんだ。それなりに重みのある魔石を引っ張り上げるように持ち上げたんだ。

・・・引っ張る・・・魔石に重要なのはイメージだ。なんとなく、これをより高度にイメージ化できればこの現象を再現できると思った。


次は劣化した水魔石を用いる。

新品の火魔石に劣化しボロボロな水魔石を接着する。そして水魔石側から魔石の活性化を移すように・・・魔石の微粒子を移動させるように・・・もっともっと本質的な部分。魔素を光りの小さな玉の状態をイメージし、ゆっくりと移動していく映像をイメージする。


結果は・・・完全に色が入れ替わっていた。活性化した水魔石は水につかっていないから、どんどん劣化していく。なんとなく、重くなったような気がする。


リナさんから採取したサンプルの魔石はやはりボロボロと崩れる。

体に密着して、無理に切除しようとすると、衝撃で骨が折れるほど強く張り付いていたのに、今は軽く握るだけで崩れて小さくなる。

この色を受け渡している感じ、本当に魔素の受け渡しをしているみたいだ。


それにしても、今みたいに体に付着した魔石を外すことができれば、魔石が大きくなることで発生する健康障害を回避できるはずだ。

外に出歩くこともできるだろう、体の動きを魔石に拘束されることもなくなる。どこまでうまくいくかは分からないが魔石に体力が奪われるという事態も防げるかもしれない。

リナさんは脚の関節が魔石化していた、他にも首に達していて呼吸の危険があったんだ。何より顔も魔石化が始まっていて左目を閉じずらそうにしていた。

生活に制限が多いけど、魔石化する可能性を回避し続ければ延命は可能なはずだ。


時間が無い。

これをやるしかない。もっと効率よく、魔石の不活性化の方法を探す。人に使う物をぶっつけ本番で使うなんてリスクがありすぎる。それでもやるしかない。


リナさんが言っていた。

自分は長くないと。きっとこれは本当なのだろう。アカウ村で見た末期患者も似た状態になっていた。


夜になり、アレクは隣の部屋から何かが倒れる大きい音を聞いた。これで二回目だ。タロウは何をやっているのだろう?気になって訪ねる。

「すごい音がしましたけど大丈夫ですか?って何やっているのですか。」

それは仰向けに大の字で倒れている俺だった。目を開けてしっかりと息はしている。しかし寝不足のようだ。目の下にわかりやすく隈を作っている。

魔石に魔素を流し続けた結果、倒れてしまった。サンプルとしてもらっていた病気由来の魔石をすべて使ってしまった。


おかげで奇病の魔石化と劣化した魔石の関係が少しだけわかった。

劣化した魔石を病気で発生した魔石に接触させ、とあることを意識して劣化した魔石に魔素を移す。

劣化していた魔石は病気の魔石を劣化させ、代わりに劣化魔石が活性化する。劣化した魔石の種類は関係ない。といった感じだ。

そして何より体についた魔石を破壊できる可能性がある。


病気の進行を止めるため、とりあえず魔石を破壊すればいいというのは研究開始直後から言われていた。しかし破壊しようとすると患者が大変痛がるのだ。回復の魔石をしながらでも効果がなく頓挫していた。


これなら魔石だけを痛みなく破壊できるかもしれない。朝になって早速、街の中で使わなくなった魔石をかき集める。アレクにも手伝ってもらい、相当な数を集めた。カバンに劣化した魔石だけを詰め込む。

本来ならもっと検証してから人に使うべきだ。いきあたりばったりで人体に使うなんて危険すぎる。

でも一刻の猶予もない事は事実。ここは日本じゃない。やれることはやる。


大量の劣化魔石をもって、貴族の屋敷に向かうのは怪しすぎる。

夜になってから俺は大量の劣化した魔石を持って屋敷に向かった。

この屋敷に通っているうちに警備が薄くなる場所、時間があることを知っていた。一応、変装もしている。

屋敷に入る。すぐにリナさんがいる塔に向かった。


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