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エントシ4

やはり血中に存在する活性化した魔石の微粒子が体表に出てくる過程をしっかりと観察したい。

そのためのエコー検査機だ。

血液に魔石が含まれることは分かったがまさか血管を一本一本観察するわけにいかない。それに体の全ての血液を採取するのも現実的ではない。だから体を傷つけることなく、お手軽に体の中を観察するためだ。


そこでこの変声の魔石だ。仕組みはよくわからないが、魔石を発動すると、発動者の声色が変わる。圧電素子みたいなものだと想像している。


声は人が発する音だ。

音とは空気や物の振動。つまり空気や物があれば何でも揺らしながら伝えることができる。魔石はこの振動をコントロールしているのだろう。

それならば、超音波を作り出せないだろうか。エコー検査機は超音波を使った機械だ。


更にもう一つ。ウィリアムにも手伝ってもらった、魔術の使用についてだ。魔石の使用と魔術の使用。この違いはどこにあるのだろうか?ウィリアムにはしっかりとしたイメージをするように促して練習を繰り返したところ魔術の精度が上がった。

魔術の使用において大事なのは、引き起こしたい物理現象の明確なイメージだ。さらに自然現象の理学的な理解があると、魔術の成功度が上がる。

だから今回も物理現象として正確な理解を含めて強いイメージを流すと、変声の魔石でも魔術を利用して超音波を作り出せるのではないだろうか。


短い期間で多くのことを、達成しなければならないが、やらないと助けられないだろう。

まずはエコー検査を実現するために、変声の魔石で魔術を使えるか試す必要がある。魔術のレベルまで使えるようになると、かなり応用を聞かせて物理現象を操れる。跳ね返ってきた音波を理解できるはずだ。

高校や大学にいた頃勉強した、音の物理現象を思い出す。

式や特徴などいろいろ思いつく限り魔石に込めながら発動する。だけど魔術にはならず、魔石としての機能しか起こらない。


もし仮説が正しいなら必要な物理知識とそれを踏まえた具体的なイメージがあると魔術化できる。だから魔術化するには何かが足りない。必要なものが何なのか、しらみつぶしにする必要があった。

そこから屋敷に通い、生活の一部を観察させてもらい、帰宅すると変声の魔石を使って新魔術の開発とエコー検査機の開発にいそしむ日々が続いた。


2週間が経過した頃だった。

メイドのアンネからそろそろ結果を出せといった視線を感じるようになった。

今日はお昼前にリナさんの部屋を訪れた。

相変わらずメイドの変装をする。この変装のおかげで、同じ下働きのメイドたちと話すことができた。この屋敷の中ではタナカという偽名を使っている。

「タナカさん、リナお嬢様のところに食事を持って行ってくださいます?」

「はい、分かりました。お届けいたします。」


同じ下働きのメイドには不気味な雇い主によく近づいてくれる便利な人という感じで体よく使われている。そのおかげで余計な詮索を受けていないので都合がいい。

「それにしても、タナカさんはよくあの人に近づけるよね。」「流石、アンネさんが連れてきた人って感じ、それかもっとお金が欲しいのかもしれないよ。」

意外と陰口というのは聞こえるものらしい。

口は禍の元とはよく言ったものだ。

「リナお嬢様、お食事をお持ちしました。」

「入りなさい。」

生活を観察するうちに本当にメイドのようにリナさんのお世話をすることがあった。彼女はこんな塔に幽閉されているように過ごしている関係上、お嬢様扱いされることが少なかったみたいだ。

たまに、大げさに振る舞ってお姫様扱いをして暇をつぶしていたのだ。ごっこ遊びだが普段から暇をしていることが多い彼女にとっては十分に楽しいのだろう。


食事を終えるといつものお祈りを始めた。いつもは手を合わせて静かに祈る。今日は濃い青色のアクセサリーを取り出した。ペンダントのようだ。初めて見た。

「今日はペンダントを使うのですね。」

「はい、特別な日なのでしっかりとお祈りをしなければなりません。少し時間をいただきますね。」

祈りが始まる。いつものことだが祝詞を唱えながら神棚みたいなものに向かう。今日も献身的に祈りをささげていた。俺はその間、邪魔にならないように黙ってみていた。


だが、目を疑った。

両手に握られた隙間から、ペンダントが弱く光りだしたのを見た。さらに体に付着している魔石も弱く・・・本当に弱く光っているのだ。

これだ、これだったのだ。ようやく見つけた。

俺が呆然としていると、リナさんはいつの間にか祈りを終えていた。


「リナさん、少し聞きたいことがあります。そのペンダントはどのようにして手に入れたのですか?後、どれぐらいのペースでペンダントを使ってお祈りしていますか?」

「どうしたのですか?そんな怖い顔をして、これは・・・」

話を聞く。


曰くお祈りのペンダントは代々受け継いできたものでリナさんも亡くなった母から受け継いだ形見だそうだ。

だから何で作られているかというような、情報については不明だそうだ。

祈りのペースとしては2週間に1回ぐらいで祈りの儀式を行う。ずっと使ってきた物で魔石としての反応も弱い。なんの効果を発揮しているかわからない。


俺は魔石の研究をして魔石が反応している状態をずっと見てきたから気づけた。

それゆえに他の人は気づかなかったのだろう。心が少し痛むが、このペンダントを調べる必要がある。

俺はリナさんに向き直った。


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