エントシ3
アレクは船が治るまでの間、何をするつもりなのか聞いた。
「帰る手段に見立てが経つまでギルドで別任務を請け負ったので、そちらをこなそうと思います。その関係上しばらくここを離れます。船に使う木材の運搬と護衛を頼まれました。」
「了解だ。しばらくは帝国まで帰る見立てが立たないんだよな?俺もウィリアムの依頼をしばらくはこなすことにするよ。」
「・・・これはあくまで私個人の考えなので参考までに聞いてください。王国貴族には深く関わりすぎないようにしてください。あのような歴史のある貴族は色々と厄介です。戦争の兆しがあり、きっかけを探っているという噂もあります。気を付けてください。」
「わかった。依頼の治療をある程度で見切りをつけて引き上げよう。王都で勇者伝説の調査もしたいからな。」
日付が変わり、アレクは依頼のため出発した。俺ももう一度聞きたいことがあり、貴族の屋敷に向かう。
屋敷の裏手に回る。特定の時間だけ門番に顔パスで入れるようにしてもらっている。その時間を守り、リナお嬢様が住んでいる塔まで上る。
やっぱりこの塔は上るのが相当しんどい、まるで塔の上に幽閉されているみたいだ。いや、実際そうか。
部屋までたどり着く。
「リナさん、タロウです。今日も聞きたいことがあり、参りました。」
「・・・どうぞ、お入りください。」
? 少し、声に力が入っているようだった。何かあったのだろうか?
中に入る。
「どうしたんですか!」
「足が痛くて、もうすぐ終わるのでもう少しお待ちください。」
俺は回復の魔石を使っていいのかわからず、見ていることしかできなかった。しばらくして痛みが落ち着いたのか表情が柔らかくなった。
「いつからですか。こんな痛みを感じるようになったのは。」
「・・・弟には言わないでください。この病気にかかってしばらくした頃からです。魔石が体に表れた頃は何とも無かったのですが、魔石が大きくになるにつれて体中が痛むようになったのです。」
「そうですか・・・」
おそらく原因は活性化した体内の魔石だ。ではどのようにして魔石が活性化されているのか?ほかにも体内に魔石はどのようにして入るのか?そして何より、体に付いた魔石をとるにはどうすればいいのか?どれか一つだけでもなんとかしてあげたい。
昨日の魔石採取の件もあって、直接観察するのはなんとなく気が引ける。ということで聞き取り調査をする。
本人も気づいていないことがあるかもしれない。お世話をするメイドさんにも手伝ってもらおう。
「一日はどのように過ごしていますか?」
「私のですか?朝は、起床後にお祈り捧げます。朝食を済ませた後は、読書をしたりしていますね。昼食の後はまたお祈りをささげて、午後からは庭で騎士たちが訓練をしていることが多いのでその訓練を見ています。夕食の後はまた読書や絵を描いたりして一日を終えます。」
うーーん。
この生活のどこに魔石が活性化する要素があるのだろう?食事に原因があるのだろうか。でもそれなら他の人も似たような症状が出ないとおかしい。
アカウ村で研究している人の中には魔石が自然界にあふれ、体内に入るのは避けられないという人すらいる。
やはり直接、観察させてもらわないと難しいか?
そんな時、扉をノックする音が聞こえる。慌てて変装を戻し、借りていた変声の魔石を使う。入ってきたのはメイドのアンネだった。
メイドのアンネは俺の姿を見ると、リナさんの症状を尋ねてきた。血液の中に魔石という主原因は見つかった。だけど魔石に関する要因を見つけられないというと、
「驚きました。たった一日で原因を特定するなんて、王都の有名な医者ですら解決できなかったのに」
「過去の経験があったからですね。可能であれば生活の中で原因となる要素を知りたいと思います。滞在時間をふやして観察を行いたいです。」
「それは・・・許可できません。たとえ治療の可能性があってもあなたの存在は屋敷内では危険です。ウィリアム坊ちゃまやリナ様の今後に関わります。」
「アンネ、今回はすべて彼の言う通りにさせてください。中々どうしてウィリアムが連れてきただけあります。彼はいずれこの問題を解決できる。そんな気がするのです。それに私はきっと長くはありません。それにウィリアムが病気にかかるかもしれません。だから今のうちに病気について解明して、もしもの時に備えてほしいのです。」
窓の外を見ながら、悲しそうにそう言った。
「そんなことありません。リナお嬢様も助かるのです。・・・タロウ殿滞在を許可します。必ずお嬢様を救いなさい。」
そう涙ながらに言いアンネさんは部屋を飛び出していった。
「また泣かせてしまいました。ここ最近はかかわる人たちを泣かせてばかりです。」
「ならそれは今回で終わりですね。私はあなたの病気の原因を必ず突き止めます。だから、生きることをあきらめないでください。ウィリアムのためにも」
その日から滞在時間を増やし訪問期間を多くした。さらにはメイドとして住み込みで潜入し、生活の中で魔石がかかわる要素をピックアップしていくことにした。
病気のためとはいえ私生活をさらすことになる。どんな心境の変化があったのか、とても協力的であった。
領主の屋敷を出た後は、ギルドから借りている宿泊施設でとあることを研究していた。変声の魔石を使ったエコー検査機だ。




