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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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50/223

エントシ2

さっそく屋敷の裏門に行く。

扉の前まで行くと兵士が目線を合わせるだけで扉を開けてくれた。こんな怪しいやつを屋敷に入れるなんて、なるほど貴族も一枚岩というわけではないのだな。


そういえばウィリアムが領主には二人の妻がいたと言っていたからな、きっと派閥があるのだろう。


屋敷は非常に大きく、特徴的な二つの塔を持っている。石材が基本となっていて荘厳なつくりをしている。雪と相まって幻想的だ。ただ色々なところから規則的に煙が上がっていて生活感がうかがえる。


屋敷の中に入ると色々な人が歩き回っている。

アンネに連れられ二つの塔のうち、片方の下に来た。

塔はかなりの高さなのでしばらく階段を上ることになる。毎日こんな高さまで上ると考えると移動だけでへとへとになってしまいそうだ。

なんでこんな高いところに住んでいるのだろう。

中間層まで行くと声が聞こえてくる。

「やっぱり不気味だよねー悪魔の呪い。」「うつりたくないから近づきたくないよね。ごはんとか扉の前に置いてきちゃった。」・・・

俺達が下の階から姿を現すと、立ち話をしていたメイドたちは驚いて逃げるようにその場から立ち去って行く。

「いいのか、自分たちの主にあんなことして」

「ちゃんと仕事してくれるだけ、まだましです。わからない人にはただ恐怖でしかありません。それにああやってお嬢様に聞こえない場所で気を紛らわせないと恐怖や不満が膨らんでしまいます。私たちもいろいろ学んだのです。」

思ったより根が深そうな問題に首を突っ込んでしまったものだ。


色々聞いていると最上階にたどり着く。アンネが部屋の扉をノックした

「リナお嬢様、例のお客様をお連れしました。」

「入っていいですよ。」

部屋の中に入る。質素な部屋だ、特に目立つ物はない。だからベッドに腰掛けるその女性が異様に目立った。

銀髪で長く真っすぐな髪だ。肌は病気のせいか驚くほど白い。とても美人な方だった。


しかしそんな美しさをかき消してしまう程、目を引かれるモノがついている。明らかに顔や首、手足のいたるところに魔石の結晶が張り付いているのだ。足や腕、肩から生えている魔石は体の動きを制限するぐらいに大きくなっている。

「初めましてリナ・ローリングです。弟からお話は聞いております。冒険者なのですね。なんでもすごくお強い魔術使いだとか、弟が楽しそうに話していました。」

俺は変装を解きながら答える。

「そんなに強くはないですけど、幸か不幸か色々体験することができて、その経験が生きた感じですね。弟さんは魔術使いとしての才能が有るのですぐに私なんか追い越せますよ。」

「そうなんですか。それはよかったですね。あの子は楽しそうに外で魔術を練習していましたからうれしいお言葉ですね。」


ウィリアムもそうだが、今までギルドからの依頼を受け、貴族に会ってきたが、偉そうにする場合が多い。しかしそんなこともなく話しやすい。

この娘は弟の話となると途端に嬉しそうな顔をする。それ以外では沈んだように声のトーンが下がる。

「あなたも外をまた楽しめるようになりますよ。ウィリアムと一緒に。」

「そうでしょうか?この体の魔石は年々大きくなっています。どんどん足に力が入らなくなっていく感覚が分かります。それに応じて魔石は大きくなる。悪魔の呪いだそうですよ。なんでも悪魔に見つかる目印なんだとか。同じ症状だった母が言っていました。」

諦めたように外を見つめながら話す。悪魔がいれば直し方を聞けるのですが残念ながらまだ悪魔は見つかりません。

そう言った。

「俺は別の地方で似た病気を見てきました。そのことをウィリアムに話したらあなたの事を依頼されました。」

しかし俺の言葉を聞いた彼女の顔は晴れない。

きっと彼女は似たようなことを言って治療をされてきたのだろう。治療に疑い深くなるのも自然というものだ。

「はぁ・・・あの子の頼みなら仕方ありませんね。よろしくお願いします。」


観察が始まる。

問診から始めた。魔石が体に表れ始めたのは5年ほど前から体中に表れ始めた。それから年を追うごとに増えていき、今では体のいたるところに魔石があるのだという。

痛みは無くただただ体に力が入らなくなるそうだ。

わけもわからず力が抜けていくのは恐怖だろう。アカウ村の研究でもわかったことだが無理に壊そうとすると、とても痛いらしい。

まるで魔石と体が融合しているようだ。


ところで、ウィリアムから聞いていた時系列といまいち一致しない。ここ最近、始めたという水魔石の生産が原因かと思ったが発症時期はどうしてずれているのだろう。この事を質問するとウィリアムが心配するから隠していたそうだ。

なので傷がある状態で汚れた川に入ったとか亜獣が増加しているときだったとかもないそうだ。


しかし、体に魔石が現れるということは体内に魔石の微粒子が混入している可能性が高い。

魔石の種類が関係あるかどうかは未解明だ。

この街は火の魔石が盛んにつくられていたという。だから火の魔石が影響していることは考えられる。それから我慢してもらい、一部の魔石や血液を採取させてもらった。さすがにとてもいやな顔をされたし、とても痛そうだった。調査のためとはいえ、かなり心苦しい。


領主の屋敷を出て、宿泊している部屋に戻ってくる。

さっそく調査を開始した。やはり血液には活性化した魔石がみられた。しかし、アカウ村の時とは違って活性化している魔石の微粒子の割合が低いのだ。ほとんどが劣化した魔石だ。


アカウ村の調査で発見されたことだが、この世界の人々の血中には劣化した魔石が入っている。その魔石は体に影響することなく排出されることもわかっている。

だから魔石が体に含まれていることは問題ではない。


問題なのは魔石が活性化していること、また体が魔石化する人は血中に含まれる量が人より多いのだ。

次に体に生えていた魔石を調査してみる。

血中に流れている魔石と体の外に出ていた魔石の欠片は形が似ている。

やはりこの魔石は血中の魔石が活性化し体表に表れているのだろう。


この魔石は何かの効果を持っているのだろうか?魔素を流してみる。

なんの効果も出なかった。これも、アカウ村で得た研究と同じだ。

リナという娘の魔石化は、原因や病気にかかっている年数に違いがあるが、アカウ村の場合と症状は同じだ。

大体、あんな塔の上で暮らしていて魔石を使う瞬間は無い。体内に魔石が入る場所なんてないはずなのに、いや体に入る条件はまだわかっていない。

決めつけはよくないか。

気づくと夕食の時間になっていた。食事場にはアレクがいた。


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