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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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【幕間】少年の旅~船の中2~

何とかもう一度、タロウさんを部屋に招き入れることに成功しました。

さっそく話の続きをしたいところですが、まずはやるべきことがあります。アンネに説教です。

事情を聞いたところアンネの暴走が原因ですね。依頼をしたいですし、ここは問題にしない方向で行きましょう。

「それでは俺たちはこれで失礼します。」

タロウさんが急に出ていこうとします。逃がしません!

「待ってください。まだお話は終わっていませんよ!」

「何か?」

アレクという冒険者の方が不満そうに聞いていきます。この方はなんか苦手です。

「あなた方は水魔石の奇病に携わっていたと聞いています。それから、魔術の師匠の事も」

「坊ちゃま、それはいけません。あと魔術の話は何ですか」

アンネは姉の件を察したのでしょう。しかしここは逃してはいけない。僕の直観がそう告げます。

「いいんだ。ここで逃がしたら姉さんが助からないかもしれない。」

アレクさんはタロウさんの方を見ています。どうやら判断をゆだねるようです。

「あなたが俺に何を期待しているかわからないけれど、俺はそんなに多くの事はできない。あなたが困っていることを解決できるかどうは分からない。それでも良いというならば、お話を聞かせていただけますか?」

よかった。そう心から思いました。頬が緩んでいることには気づけませんでした。


それから僕は本当に依頼したかった事、姉の病気についての説明を始めます。

「僕の故郷は火の魔石を産出し、それの輸出で経済を成り立たせていました。しかし父が領主になる前から採掘を続けた鉱山はここ最近になって、どんどんと産出量が減っていきました。」

「なので、領主である父は町全体で新しい産業を興そうと積極的に行動していたんです。幸いなことに街の周辺を大きな川が流れていて、この川周辺で水の魔石が採掘されたんです。」

タロウさんが水魔石というワードを聞いて、顔が険しくなりました。

「だけどこれがいけませんでした。この水の魔石はそれほど純度が高くなかったんです。それに我々は炎の魔石をずっと掘ってきたから水の魔石の採掘方法は知らなかったんです。それでも、このままでは町の経済が困窮するのは分かっていました。だから試行錯誤して無理やり採掘を継続していました。しかし今のところ芳しい結果は出ていません。」

そう、そのころから姉の様子がおかしくなった。きっとあの水魔石の採掘事業が原因なんだ。

「そこからでした。僕の姉が体に薄青色の結晶ができる病気にかかってしまいました。その病気はどんどん結晶を大きくしていき最後には衰弱して数年のうちに亡くなってしまうのです。母も同じ病気にかかり亡くなってしまいました。」

その後も僕は、タロウさんがとある村で水魔石に関係する問題を解決した事、姉を助けたいことを熱心に伝えます。

「ひとつ聞きたいことがある。亜獣が増えたとか、そういう報告はあったか?」

何故、タロウさんはそのようなことを聞くのでしょう?僕が答えるとアレクさんと小声で会話を少しだけしました。

「詳しい判断は状況を実際に見てみないと、何とも言えない。ただ俺たちが出会った問題を教えることはできる。文書を用意するからそれなら渡せる。身内話をしゃべってもらった手前これぐらいは返したい。どうだろうか?」

タロウさんは貴重な情報を提供してくれるみたいです。ありがたいです。タロウさんはまだ迷っています。

しかし、水魔石の事件を解決に関わった人が目の前にいるのです。こんなチャンス、二度とありません。お願いの気持ちが強くなるあまりいつの間にか頭を下げていました。こんな姿は他の誰にも見せられませんね。

変わらず、「実際に見てみないと分からない。でもできる限りのことはしよう。」

短い回答でしたが、確かにしっかりと答えてくれた。僕はそれだけで目元が緩みました。


それから数日が過ぎました。その間、僕は果敢に魔術の指導してくれるようにアタックし続けました。

明らかにめんどくさそうという感じでしたが、メイドのアンネと協力して無理をして教えていただきました。おかげで、色々なアドバイスをいただきました。

今までは安定して魔術を発動することすらできなかったのに、それが安定し、さらには炎の形を変えられるようになってきました。

今までと比べればすごい進歩です。とても自信につながります。今なら誰だって倒せるでしょう。魔獣でも来ないでしょうか?

今日も魔術の練習に付き合ってもらい、休憩のため船内に入っていました。数分もたたずに外が騒がしくなっていきました。

何かあったのでしょうか?船内の窓ガラスから巨大な水柱が上がるのを見ました。少しの恐怖と興味を持って外に飛び出しました。


メイドのアンネが怒りながら、追ってきます。

「今のは何ですか!」

「いけません坊ちゃま!中にお戻りください。」

僕は、メイド達に無理やり船内に連れ込まれました。

護衛隊の多くが外に出て、迎撃の準備をしています。船内からも背びれが見えます。

相当な大きさであることが分かります。


魔獣ですね。初めて見ました。

しかしそのうち姿が見えなくなりました。何処へ行ったのでしょう。外の護衛団も探しているようです。

僕も見えるはずがないのに辺りを見渡します。見えるものは船内に残った人です。

いつものメイドたちと視線が交差します。

瞬間、僕は宙へ浮いた。


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