【幕間】少年の旅~帝都から港まで~
僕はウィリアム・ローリング
王都のはずれにある街の貴族です。
正確には王国に所属している港に近いエントシ地方一帯を治めているローリング家の次男です。
お国事情により帝都に留学していましたが、突然呼び戻されることになりました。
何かあったのでしょうか?最近、帝国と王国は関係が悪化しているしその関係かな。港にも兵士を集める話が出ていて、腹違いのお兄さんがあたふたしていると聞いています。
なんにしろ、呼び戻されたからには帰らなければなりません。
だけど今は冬。帝国に来た時みたいに山を通ってくることはできません。
いろいろ検討した結果、海路を使って帰ることになりました。
冬の海は相当荒れると聞いています。今から少し不安です。
ギルドに護衛依頼を出したところ、帝国から圧力があったみたいでギルドが保有するかなり大きい船とベテランの船員を出してくれることになりました。
今度は安心です。
久しぶりに帰郷できます。病床に伏せる姉に久しぶりに会えます。姉の病気は原因が分かっておらず治療方法も判明していません。幸いにして今は十分な栄養をとれていれば生活は可能です。
僕は力をつけて、自分の価値を示さなければなりません。街に帰ってからも努力を怠らずがんばることにしましょう。
エントシに帰るため、準備を進めていると水魔石の一大産地に魔石研究の研究者が集まっていると聞きました。
どういうことでしょうか?詳細をお付きのメイドが調べてくれます。このメイドたちは帝都に来る前からお世話をしてくれているメイドたちです。どうしてここまでしてくれるのでしょうか。なんとなく想像は尽きますが、ありがたいです。
メイドたちの話によると研究者が集まっているアカウ村では亜獣の増加と謎の奇病が流行っていたそうです。
しかしギルドから派遣された冒険者たちの活躍により奇病の原因特定と亜獣増加を食い止めたそうです。魔獣の討伐も行ったとか、すごい人がいたものです。
魔術使いらしいので僕の魔術を教えてくれないでしょうか。
しかし僕は奇病の症状を聞いた時、耳を疑いました。その症状は姉が抱えている症状にすごく似ています。
僕はすぐに奇病について情報を集めるように指示しました。治療方法は確立していないが
有効な手立ては立てられているようです。今もかかわった冒険者が現地に行って協力したりしているみたいですし徐々にではありますが解決に向けて進んでいるみたいです。
この冒険者は奇想天外な発想で次々と問題を解決しているようです。遠距離であれば魔術使いとしての実力も高い。ぜひこの方に会いたい。
僕の好むところではありませんが、僕はローリング家の力を使ってギルドに依頼しました。この方が今回の護衛任務に同行できるようにと。
幸いなことに、護衛任務にこの方もついてくれることになりました。もう一人王都出身の実力者が案内役兼護衛隊のリーダーとして同行してくれることになりました。
冬の長距離移動は心配でしたが最近の帝国と王国の状況を鑑みてギルド側が手厚くサポートしてくれるみたいです。
安心の船旅になりそうですね。
帝都から出発の日、あの冒険者が挨拶にやってきました。
しかしこの方が本当に数々の問題を解決してきた方なのでしょうか。手入れがされていない黒髪に質素な恰好、それなのにかなり立派な魔石ランプと頑丈そうなクロスボウ、変な恰好です。
「ウィリアム・ローリング殿、今回護衛に着かせていただくサトウ・タロウでございます。護衛隊の中で魔術を使える者です。どうぞ、ご期待ください。」
「はい、期待しています。頑張ってください。」
どうしよう実際、会ったらなんと話しかければいいのでしょう。わかりません。
ああっ行ってしまいました。
港までの道中は、話かけることはできず、うまく奇病について聞き出すことはできませんでした。
どうしたらいいのでしょう?メイドたちは心配して気にかけてくれます。メイド長のアンネだけは別に話しかけることは無いと言ってきますが、僕は可能性があるなら何でもかけたいのです。
とうとう港に着いてしまいました。
未だに有力な話を聞けていません。しかし今はそれ以外の不安でいっぱいです。冬の海は荒れることで有名。そのため護衛の兵やギルドが用意してくれた船と船員は入念な準備をしています。船長が挨拶しに来てくれました。
精悍なガタイのいい男性で頼りになります。少し安心しました。
船は沖に出ます。
案の定、海は荒れ、船は大きく長く揺れ続けました。あの頼りになるメイドのアンネも少し気持ち悪そうにしています。
当の僕は吐きまくっていました。気持ち悪くてたまりません。
メイドたちが慌ただしく何か言ってくれますが意味を理解できません。意識がもうろうとして起きているのか寝ているのかあやふやです。なんだかすごく寒くなってきました。室内は火の魔石を使って温めていたはずなんですけど。・・・眠くなってきました。・・・
ふと目を覚ますと、あの冒険者のタロウさんがいました。タロウさんから柔らかい光が降り注ぎます。その光のおかげでどんどん気分が楽になっていきました。
口に水が入ってきました。のどが渇いていることに後から気づきました。寒いのにのどが渇くなんて変な感じです。
悪寒がまたしてきました。
こういう時は寝るに限ります。そう思って強く目を閉じました。
気が付くとまた寝ていたようです。メイドのアンネが心配そうにのぞき込んでいました。そんな顔をしなくても大丈夫なのに。
起き上がってアンネから僕が寝ている間に起こったことを聞きました。
僕は気づきませんでしたが結構危ない状態まで行っていたそうです。
アンネや他のメイドそして護衛には悪い事をしました。
領地に帰ったら、特別に報酬を出しましょうか。それに夢かと思っていましたが冒険者のタロウさんが回復の魔石を使ってくれたそうです。
これはお礼を言う口実に話しかけるチャンスです。さっそく作戦を考え始めました。




