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船の上2

潮風が吹き付ける甲板の上、あまり長居はしないほうがいいだろう。

「タロウさんあなたは奇術使いと呼ばれていますね?」


「そう名乗ったことはないですけど、そう呼ばれることが多いですね。確かに私です。」


「そうですか。昨日の件でお話したいことがありますので、ついてきてもらえますか?」

おつきの者たちがにらみを効かせる。

拒否権はなさそうだ。

「わかりました。」


昨日ぶりに少しだけ豪勢な部屋に来た。

「アンネは、ここで待っていてください。」


「しかしウィリアム坊ちゃま、それは危険です。護衛だけでもつけてください。」


「いい!ここで待っていてください。」

少年にしては、しっかりとドスの効いた声だ。


メイドの名前はアンネというらしい。分かりやすく落ち込んでいる。

貴族の子供の後に続いて部屋の中に入る。メイドとすれ違いざまに、何かしたらもぐぞと脅された。な、なにを?・・・少しだけ腰が引けた。


部屋に入り貴族の坊ちゃんは向き直ると

「昨日はありがとうございました。命が助かりました。」

目を見開き、トーンが少しだけ高い声で礼をいう。

ウィリアムと呼ばれた’貴族’は打って変わって、少年のウィリアムが出てきた。


「タロウさん、本当に助かりました。ありがとうございます!すごいです。回復の魔石まで使えるなんて、いったいどうやって魔術や魔石を使っているのですか?タロウさんが使っている、うわさの雷の魔術ってどんなものなんですか?」


「ちょっと待ってくれ、いきなり多くの事を聞かれても答えられない。大体、君はそんなだったか?」

似たようなことが以前あった気がした。少年たちには派手な技が人気なようだ。


「貴族モードの僕は僕じゃありません。でもやらなきゃいけないのでやっています。そんなこと、どうでもいいじゃないですか。だからメイドだって追い出したんです。それよりどうやって魔術を使えるようになったのですか?」

貴族っぽく振る舞ってはいても、中身は子供か。というより強制されることに対する反発かな?


「わかった、わかったから。答えられることは答えるから一つずつな。」

自然と俺の話し方も貴族に対するものから、子供に話しかける口調に変わっていた。


それから俺はウィリアムから質問攻めにあった。驚くべきことに彼は炎の魔術が使えるらしい。ただ全く制御ができないということだ。


「すごいです。タロウさん!そうだ僕の魔術の先生になってもらえませんか。」

・・・なんと面倒で、角が立ちそうな依頼だろうか。何とか切り抜けないと


「機会があったらな、まずは安全に帰らないと。まだ病み上がりだろ、ほら今日はもう休もう。」


そう言いながら強引に話を終わらす。せびる子を寝かしつけ(全然寝てないけど)部屋を出る。

扉を開けると、なぜかアレクとメイドが戦っていた。勘弁してくれ・・・

「何してんの、お前ら?」

あきれた声を出す。かなりいい勝負をしているみたいだ。二人とも肩で息をしている。


「坊ちゃま、やはりこやつらただのゴロツキです。今お助けします。」

とメイドが頓珍漢なことを言う。メイドはロングソードを掲げ、ものすごいスピードで俺に向かって突っ込んできた。


「避けろ!タロウ!」


アレクが叫ぶも、もともと戦闘経験が浅い俺はどう良ければいいかわからない。ということでいつも通りあれを発動する。

俺はポッケに忍ばせておいた、光の魔石に触れ雷の魔術を発動する。

目の前に複数の青白い電気が走り、複雑な模様を作り出す。最近はこの電気バリアを使いまくっている。対人戦では意外と使い勝手がいい。


メイドのロングソードが、この電気に触れた瞬間、メイドが感電する。

「うっ」


小さなうめき声をあげ、メイドは倒れこんだ。息をしている、うまく意識だけを刈り取れたみたいだ。とっさの発動でも、かなり狙い通りに制御できるようになってきた。


しかし、今はやはり避け、魔術は使うべきではなかっただろう。後ろから、キラキラとした視線が飛んできた。


それから俺たちはウィリアムの部屋にいた。

メイドはすぐに起き上がり、反撃してくるかと思ったらメチャクチャにウィリアムに怒られていた。

アレクに事情を聞くと俺が貴族に連れていかれたと、船員に聞いてどういうことかと貴族の部屋を訪ねようとしたところ、やたらと気の強いメイドのアンネと言い争いになり戦闘に発展したらしい。


なんともめんどくさい。

メイドはメイドでいくらたっても部屋から二人が出てこないのを心配してイライラしていたらしい。

今回のケンカ。本来であれば貴族側に有利なように判断されるパターンが多いが、看病のかいあって喧嘩両成敗となった。


「それでは俺たちはこれで失礼します。」

そう言って颯爽と部屋を出ようとすると


「待ってください。まだお話は終わってませんよ!」

ウィリアムが叫ぶ。


「何か?」

アレクが振り返る。


「あなた方は水魔石の奇病に携わっていたと聞いています。それから、魔術の師匠の事も」


「坊ちゃま、それはいけません。あと魔術の師の話は何ですか」


「いいんだ。ここで逃がしたら姉さんが助からないかもしれない。」


何やら重そうな雰囲気だ。

「タロウさん!追加の依頼を提示します。お話を聞いていきませんか?」


「タロウ・・・」

アレクはどうするかゆだねるようだ。


あぁ、全く

「あなたが俺に何を期待しているかわからないけれど、俺はそんなに多くの事はできない。あなたが困っていることを解決できるかどうかは分からない。それでも良いというならば、お話を聞かせていただけますか?」

ウィリアムは子供には似つかない真剣な顔から子供らしい笑顔に変わった。


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