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【幕間】もう一つのアカウ村2

辺りには静かな空間が広がりました。

オオカミを撃退し、村に戻ると入り口に定期便で運ばれてきた荷物がたまっていました。

どうして中まで運び込まないのでしょう?


ギルド支部長に後で聞いた話ですが、行商人が奇病の噂を怖がって村の中まで入ってこないそうです。

このままでは、荷物を狙って、せっかく蹴散らした獣が寄ってきてしまいます。

放置もできないので、私が村の仲間で荷物を運び入れることになりました。

村の中央に荷物を積み上げていくと、村人がぽつぽつと現れ荷物を受け取り、そそくさと帰っていきました。そのたびに“荷物を持ってきてくれてありがとう”とお礼を言われます。

悪い気はしませんね。

しかし本当におびえているようです。いくら病気だと言っても未知への恐怖はぬぐえませんね。荷物を受け取りに来た一人にこの村のはずれに荷物を届けてくれないかと頼まれました。

「構いませんが、ここまで荷物を取りに来られないのでしょうか?」

「あぁ、ちょっとばかし遠くてね。亜獣がさ、ほら、多いだろ・・・

夫婦で暮らしているんだが、旦那さんが足を怪我しちまってね。奥さん一人じゃ水や雑貨も運べないのさ。同じような事情を何人か抱えているんだが俺も、その人たちに荷物を届けなくちゃいけねぇ、あんた虫が良いのは分かってる。どうか配達を頼めねぇか?」

「ええ、いいですよ。元々この村の支援をするように依頼されてきています。これぐらいの事は依頼の範囲です。」

私の主な任務は亜獣の討伐です。


正直、任務の範囲外と言えば範囲外ですが、どうにも中途半端に体を動かしたせいで体が余っています。ちょうどいいストレッチですね。

村のはずれにあった家に水や食料を届ける。荷物を届けると高齢のおばあさんが元気に迎えてくれました。

「あら~持ってきてくれたの。疲れたでしょ。中に入って休んでいってちょうだい。」

確かに意外と距離があり、少し疲労を感じた。お言葉に甘えることにしましょう。中には優しそうなおじいさんが座っていました。

「ここまで来るの遠かったから大変だったでしょ?いつもなら二人で散歩がてらに行くけどねぇ。今はあんな感じだから動くのも大変でね。たまにギルド支部長が運んでくれるけど最近は忙しいみたいね。」

「亜獣の増加や、村の物資輸送など問題が増えているようです。」

私は、村の状況を簡単に伝えてあげました。


「そんなことになっていたのか。ワシたちがもう少し若かったら、村の若いもん説き伏せて外に連れ出してやったんだけどね。」

とおじいさんが答えます。

「怖くはないのですか?未知の病気ですよ。」

「長く生きていたら、こういうことはよくある。またいつか忘れてしまうもんさ。」

「若者は長く生きていないので、そう考えるのは難しいと思いますよ。」

「若いもんが長く生きてないとは、面白いことを言う兄ちゃんだな。まぁそのために年寄りがいる。うるさいと思われながら昔話を聞かせてやるのさ、そうすると心のどこかで安心するだろ。」


私はいつの間にかもらったお茶を飲み干していた。

「ふふっそうですね。お茶、ありがとうございます。おいしかったです。」

「また来てね。」

帰り際にお菓子を貰いました。

ギルドの宿舎に戻るとタロウがまだ熱心に研究していました。私も私のできることをしなければなりませんね。


次の日は、村周辺のパトロールをしていました。

今回は鹿の亜獣と接敵し、これを討伐する。そのあとは川から引いている水場に溜まった泥を掻き出す。中々いい運動になりました。


また次の日は力仕事をこなす。ここ最近の日課になってきました。

次の日にはタロウに呼ばれました。

調査の結果が出たみたいです。しかし結果は振るいませんでした。? 何もわかっていない自然現象を相手にしているのに、結果が出ないからと浮かない顔をしていますね。これだから研究者資質の人は・・・

「現地調査もまだまだ残っていますし、今日はそちらをしますか」

「そうだな、気分転換になるし行こうか。」

タロウは切り替えが早くて助かります。


採掘場周辺を探索していきますが、ここ最近ここら辺をうろちょろしていたので何もない事は知っています。気分転換が目的ですし、いいでしょう。

見晴らしがよく、休憩にはもってこいの場所です。

採掘場より少し小高い崖の上まで来ました。やはり亜獣増加の原因は何もありませんでしたが、天気は晴れていて、いい景色です。

タロウを見ると、ぼーっとしています。ここまで来たのはいいものの、頭の中はぐるぐると回り続けているようです。ここはガツンと一発お見舞いが良いですね。

「なんで小川はあんなにキラキラしているんだろう。」

「何を言っているのですか?頭が溶けましたか。」

さっそく、かましてやりました。

しかし、タロウの集中力はどんどん強くなっているようです。

こちらなど見向きもせず、二つの小川を見比べています。


そして、その瞳に火がともるのを見ました。

「アレク、試したいことがある。手伝ってもらってもいいか?」

「手立てもないですしいくらでも手伝いますよ。」

どうやら、ことが進みそうな予感がします。

村に帰って調査を進めると異様にきれいな水が原因とわかりました。私はこの事実をギルド支部長のアランに報告します。

「水が原因ですか・・・困りました。水が無いと生きていけません。亜獣のために小川を止めるようなこともできませんし、井戸の水だけでは村全体の生活用水を賄うことはできません。うーん・・・」

確かにいきなり水が使えないなんて言われたら困ります。こういうとき自分に学がないことを悔やみます。全然いい方法が思い浮かびません。

「いや、しかしあなた方に来ていたただいてよかった。全く分からなかった原因をつかんだ。このままでは村を捨てるしかなかったから、本当にありがとう。村を救うために一歩前進したよ。」

これは一つでも多く、問題を解決しなければなりませんね。


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