【幕間】もう一つのアカウ村
村には以前来たことがあります。
水の魔石の有名な産地で飲み屋や風俗といった大衆店が多く立ち並び、明るくにぎやかな街でした。
しかし村に着くと焦るほど静かになっていました。この時間はもっと多くの人がいていいはずです。
ギルド支部に行き事情を把握します。聞いた事情はなかなか厳しいものがありました。我々にできるのは亜獣の討伐ぐらいでしょうか?少しでも力になりたいと思いました。
荷物を借りた宿舎に置き、準備を進めます。外に出て追加の装備や消費した物資を回収しようとしたとき、例の奇病に罹った患者を診ました。
苦しんではいないようですが血の気が悪く、かなり弱っていることが分かります。
これは確かに片田舎に住んでいる住民なら、不気味に思って呪いとか言い出しても不思議はないですね。私自身呪いなのではないかと思ったほどです。
タロウを見ると真剣な目をしています。
数日間、一緒にいてわかったことですがタロウはちょっとお人よしの性格のようです。今もどうやったら救えるか必死に考えているのでしょう。
次の日は朝から周辺の調査に出かけました。
しかしタロウが全然、集中していません。
「タロウ、何を考えているのですか?あの奇病の事を考えているのですか?。我々は医者じゃないんです。戦闘の事を考えてください。」
「わかってるよ。だけどあんなの見たら何とかしてあげたいと思うじゃないか。」
やはりタロウは昨日見た、奇病の事を考えていたみたいです。
まぁ、考えてしまう気持ちもわかります。昔、王都で聞いたおとぎ話に出てくる話そっくりでしたから理由のない恐怖を覚えました。
「確かにそれには同意できます。まるでおとぎ話見たいです。」
「おとぎ話?」
タロウはおとぎ話が気になったみたいなので教えることにしました。
話しているうちに、我々は現在使われている採掘場に来ました。
採掘場の中に入ります。中は非常にきれいに作られていて、広いです。しっかりと明るく、いつでも採掘を再開できるようになっています。
今でも時々、集団を作って数時間採掘作業を行っているそうです。ところどころ採掘した後が残っています。よくよく見るとあれは水の魔石でしょうか?採掘場にあるものは初めて見たので手に取ろうとしました。
「まった! それに触ってはいけない。」
「? どうしてですか。」
タロウに確認すると触ってはいけないと注意されました。彼はこの魔石にも原因があるかもしれないと考えているようです。
タロウは慎重にサンプルとして魔石を回収していました。その姿はまるで研究者のようです。水の魔石をはくすんだものと水の中に沈んでいてまだ劣化していない魔石とさまざまにありました。
帰り道にて亜獣に遭遇しました。難なく倒すことができましたが、タロウはここでキャンプしたいと言っていますがそれは危険すぎる。
全く、研究者気質の人はどうしてこう熱中すると周りが見えなくなるのでしょうか?
困ったものです。
ギルド支部に帰ると、ギルド支部長のアランに頼まれて周辺に現れた野獣を討伐することになりました。亜獣だけではなく、通常の獣も多くなっているようです。
ギルドに紹介されて事情を知っている村人の家を訪ねます
「すみません。ギルド支部長に依頼されて支援に来た。冒険者のアレクです。」
扉が開きガタイが良い、壮年の男性が出てくる。心なしかやつれている様に見える。
「おお、あんたが帝都から来た冒険者か。アランから支援依頼を出すことは聞いていたよ。中に入ってくれ。」
家の中に入り、話を聞く。
「例の奇病が現れたのは1年ぐらい前か、そのくらいだ。ある日、若者の体に魔石のような物が現れて取れなくなるという事がおきた。すぐに村の医者が治療に当たってくれたんだが・・・」
「事情は聴いています。帝都の方でもギルドから医者に依頼が出ていて、少し調べてみましたが新しい病気だそうです。」
「そうか・・・すまないな、私は昔、帝都に住んでいて病気というものを多く見てきたんだが、村の外に出たことが無い者が多くいてな。そういう者達からすると未知のもので恐怖しかないんだよ。彼らは今、祈りをささげてこの災厄が無くなることを待っている。その間、周辺の亜獣や凶暴な野獣を討伐してほしい。場所は・・・」
壮年の男性から聞いた望みを無碍にするわけにはいかなかった。私は村人からもらった地図をもとに野獣がよく出るという場所に行った。
! あれは大型のオオカミですね。今は繁殖期でもなんでもないので追い払えば簡単に退かせることができそうです。
細い枯れ木を見つけました。これにしましょう。
いつも使っているバトルアックスを振り回して根元から枯れ木を断ち切る。枯れて中身がスカスカなので簡単に断ち切れます。これと破裂魔石を使いましょう。
魔石はあまり得意ではないので発動までに時間がかかります。
! オオカミが走ってきました。木を切った音がオオカミに聞こえていたようです。
数匹がこちらに向かってきます。しかし問題はありません。
時間はかかりましたが、うまく魔石を起動できたようです。あと数秒したら数個の破片に破裂します。
これを折った枯れ木と一緒に投げます。オオカミの頭上で破裂し枯れ木も木っ端みじんに飛び散り、辺りにぶつかって大きな音を立てます。オオカミにもいくつかの破片が当たっているようです。
オオカミたちは大きな音や衝撃に驚いて、四方八方に逃げていきます。これでしばらくは寄り付かないでしょう。それにあれだけ細かい破片ならケガもないでしょう。




