アカウ村8
村のみんながお見送りに来てくれている。
おれは部屋にずっといたため、村のみんなと関わっていなかったが、アレクが外に出にくい村人の代わりに力仕事を手伝っていたようだ。
「よかったのですか?もう少し村にいなくて。」
「ああ、大丈夫だ。今、俺が残るよりもいい方法がある。」
幸いにして、奇病は即死するようなものではない。何とか栄養を与え続ければギリギリ延命できる。
それに患者はもう増えないだろう。
「そのいい方法を実現するために、帝都に早く変える必要があるのですね?」
「そういうこと、急ぐぞ!」
俺たちは馬車で、可能な限り早く移動し帝都には、アカウ村に来る時のほぼ2倍近い速さで帰ることができた。
着いたその日のうちにグラハムさんやマリーさんに相談する。
幸いにも二人ともすぐに会えた。
グラハムさんには以来の達成を報告し、後の詳細な報告はアレクに託した。
俺はマリーさんのところへ行き、報告を行う。
「それでタロウどうだった?」
「水の魔石の供給不足については鉱夫が働けるようになったので、じきに解決できると思います。」
「そうか、何が原因だったんだ?」
「それも含めてお話したいことがあります。」
マリーさんの顔が一気に険しくなった。
流石、歴戦の商人だ、俺が何を言いたいか一瞬で察したようだ。
俺は事の顛末を話した。
「それで、タロウ少年はどうしたいのかね?」
ニヤついた顔で演じたように大げさに聞いてくる。
「今回、俺に支払われるはずの報酬を使って、お願いしたいことがあります。商会から研究者たちに魔石研究の依頼を出すことはできませんか?」
「魔石・魔術の研究は貴族たちがほとんどの実権を持っている。お金を支払ったからと言って小さい村のために動いてくれる者はいないぞ。」
「はい。そこで、あなた方フジワラ商会です。この帝都でも一番に大きい商会なら顔をきかせたり、動いてくれそうな一般市民出身の科学者を知っていませんか?その科学者たちに奇病の解決方法を研究していただきます。もちろん成果は発見者の物です。」
マリーさんは少し考えた後、しっかりと目を見据えて聞いてきた。
「その依頼を受けることはできる。しかしなにが君をそうまでさせる?タロウ、君にはほとんど得がないだろう。」
「確かに俺への実利益はありません。だけど研究は時に、純粋に自然への理解という気持ちで向き合わなければならない時があるのです。」
「理想はそうだ。だけど私たちは飯を食べていかなければならない。食べるためには他人の得にならなければならない。自然を理解しても飯は出てこない。」
「得にはなりますよ。100年後に、科学者は100年後の他人のために働いていますから。」
「フッ、アハハハハハハハハッ甘い、甘すぎるぞ。タロウ!まるで違う世界の住人だ。だが、その心意気やよし。私は君に免じて君の依頼を正式に受けよう。」
数日たった。
「考えましたね。確かに研究者をあの地にたくさん派遣すれば、あなたが一人いるより奇病の解決が進むかもしれません。」
「そういうこと、でもよかったのか?アレクの報酬まで使っちゃって。」
「ええ、面白そうだったので、結果を見てみたくなったのです。それにあなたに支払われる程度の報酬じゃ、全然足りませんよ」
「・・・そうか」