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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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アカウ村6

旧採掘場の中では虫や蝙蝠なんかも亜獣になっていた。これらの生物は亜獣になるケースは少ないと聞いていたが、どうやらそんなこともないみたいだ。

しかし、どいつもこいつも採掘場に流れる水を飲んでいて反応が悪い。

かなり近づかないと襲ってこないのだ。だから撃退は容易で、数は多いが、全く脅威ではなかった。


「数もさることながら、こんなに多くの種類の亜獣を見たのも初めてです。奥には何があるのでしょう?」

「亜獣達は我を忘れたように水を飲んでいる。彼らにとってこの特殊な水は麻薬のように働いているのかもしれない。少しもらっておこう。」

「だとするといきなりこの水の供給を止めると我に返って、ここの亜獣が外に出るということになりませんか?」

「確かに・・・そうなる前に一回殲滅したほうがいいかもしれない。後は定期的に来て駆除を繰り返すしかないな。」

「ならば、今ここでなるべく数を減らしておきましょう。」

アレクはそう言うと、バトルアックスを手足のように使い、辺りにいた亜獣を一掃する。相変わらず、素晴らしい技量だ。

亜獣を可能な限り倒しながら、奥に進む。

いくつかの分岐点に出たが大体の道がふさがれている。

都合がいいのか悪いのか、問題の水は一か所の道から流れていた。まるで誘いこまれているような気分になる。


進むしかない・・・より注意を図りながら進んでいく。

通路がかなり細くなってきた。記録に残っている情報によればそろそろ最深部のはずだ。

よし!ここらへんでもう一回、探査魔術を使おう。

探査ランプは、また真っ赤に光る。

だけど亜獣は結構倒してきた。

通路は、行き止まりなのに、この先にたくさんの亜獣がいるのだろうか?

探査ランプが故障したのかと疑いながら、足を進めると、だんだんモキュモキュという音が聞こえてきた。


アレクは長年の勘が働いたのだろう

「タロウ、止まってください。」

そう言うと光の魔石を取り出し、それを目の前に放り投げた。

小さな光が放物線を描き、地面に落ちる。この瞬間見えた物は、信じられない物だった。


見た目は幼虫・・・だろうか?

だけどサイズが違う。

3メートルはあろうかという長さに、それに負けないぐらい太い図体。足の様に見える複数の突起物。

薄青色の体色に不気味な模様が光る。正直、とても気分が悪くなる見た目だ。

そいつは亜獣をバリバリと食べていた。

「なんですか?・・・あいつは・・・」

アレクは驚きのあまり、魔石を投げた姿勢で固まっている。

「知らん。だけどはっきりとわかることがある。ヤツは亜獣じゃない。魔獣だ。」

幼虫の魔獣は食い終わったのだろうか?振り返ると俺らと目が合った。

・・・目、いっぱいあったけど


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン」

「うっくっ」

魔獣から耳をつんざくような缶切り音が鳴り、洞窟に反響する。

耳を塞いで何とか乗り越える

アレクは俺の肩を叩いて何か言ってくる。

「・・・・ここ・・・・」

「なにぃ!聞こえない!」

「ここは狭い!広いところまで行きますよ!」

何とか聞き取り、顔を見合わせてうなずき走り出す。

来た道を全力で引き返す。幸いにも道はほぼ平坦なので、全速力が出る。

幼虫の魔獣は器用に体を波打たせながら迫ってくる。体が大きいから、あちこちを壁にぶつけながら走る。おかげで意外と遅い。

耳も治ってきた。

これなら距離をとって遠距離から攻撃すれば撃退できる。

「よし、タロウ!開けたところが見えてきました。もう少しです。」

魔獣はどこだ?振り返るとまだ追ってきてはいるが、かなり距離は開いている。

図体のでかさには、びっくりしたが何とかなりそうだ。

そう思っていた矢先。魔獣の口元が膨らんだ。


「アレク! 避けろ!」

二人して左右に飛び込んだ。直後、真ん中を魔獣の粘液が飛び込んでいく。

粘液がかかった場所は、激しい煙を上げながら、急速に溶けていく。

自然と両者の目が合う。

「タロウ、一発も当たらないでくださいね。」

「言われなくても!」


二人同時に、ザッという足音を鳴らしながら走り出す。幼虫魔獣の粘液をギリギリで躱していく。

飛び込むように広場に出た。

魔獣に向き直ると、幼虫の魔獣がゆっくりと現れた。俺たちが逃げないと分かったからか?

少しでも俺たちを有利にするため、辺りに光の魔石をばらまく。広間は薄暗く照らされた。

魔獣の全体像が見える。


体のいたるところにくすんだ魔石の鱗のような構造がみられ、大きく縦に裂けた口から粘液が漏れている。

体毛がうっすらと生えている。

斑点模様と魔石の組み合わせが異様に不気味だ。

「タロウ、見たところそこまで動きが速いように感じません。それに攻撃手段もあの粘液以外に持っていないようです。」

「油断大敵だ。動きをよく観察しよう。」

「では、私は陽動で走り回ります。あなたは遠距離から攻撃をお願いします。」

「いいのか?前で」

「ええかまいません。ようやく動き回れるってものです!」

そう言うとバトルアックスを軽やかに回し、構える。

いつもは冷静なフリをしていたのに、いきなりギラついた表情に変わる。楽しそうだ。


アレクは駆け出す。

幼虫の魔獣は粘液を飛ばし、ぶつけてくる。

アレクは体を回転させ近くにあった大岩を軽々と割断し、粘液側にバトルアックスの柄を使って大岩を勢いよく飛ばす。

粘液と大岩はぶつかり、激しい音を出しながら岩が溶ける。粘液は四方に飛び散った。

そのかげに隠れ、アレクは魔獣のわきに移動し、飛び上がる。


幼虫の魔獣がアレクに気づいたころには、アレクが真上にいた。

アレクのバトルアックスが魔獣の体にヒットする。

すんでのところで頭を外された。意外と運動能力が高い!

だけど・・・魔獣の体はかなり柔らかいようで、深い切り傷ができていた。


「頭をギリギリ外してしまいましたが、かなりの致命傷を与えられたはずです、、、くっ」

「その腕どうした!」

アレクの腕に、やけどができていた。

「どうやら魔獣の血液そのものも、物を溶かす効果があるようです。少し痛みますが問題ありません。」

「体中が毒まみれということか。次は一人で突っ込みすぎるなよ。」

あの巨体を電撃で倒すには、かなりの出力を出さなければならない。

それには大きな隙ができてしまう。それに1~2発が限界だ。

一瞬で体全体に充てる必要がある。

さて、いかにして倒したものか。

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