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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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海の上-2

リナは天守の前に出て、しっかりと見据える。


「天守様は最近、腕に力を籠めましたか?」


「・・・何の話?腕を動かすなんて普通のことじゃないか。」

天守の目が一瞬だけ見開いたように見えた。


「どうやら、そのご様子だと、かなり進んでいるようですね。もしかして体にも現れて・・・」


「だから何の話をしている?・・・!、お主、エントシの・・・」


「私の事をご存じなのですね。しかも王国の田舎に過ぎなかったころのことなんて・・・失礼します。」


リナは強引に近づき、天守の腕をとる。

天守はされるがまま、腕を引っ張られた。とっさの事に対応できなくなっていたのかもしれない。


天守の腕を覆っていた長手の手袋をまくる。


「随分と、厚手と思いまして。」


天守の腕には魔石が埋め込まれていた。よく見ると腕にもところどころ見受けられる。

俺も、リナもよく見たことある。

あれは魔石病。


周囲も気づいた。たちまち魔石病という声が聞こえてくる。

「手を放せ!」


天守はリナの手を振りほどき、手袋を直す。

「天守、そんなになっていたのか・・・そこまで行ったら」


刀幻は仮面をしていたのに、絶望したように顔をゆがませた事がわかる。


「やってくれたのぉ、銀の魔女よ。この責は重いぞ。」


俺はリナの目の前に飛び出す。

「体よ 舞え」


天守の言葉とともにリナを吹き飛ばすように衝撃波がたつ。

衝撃波はリナには届かない。


同じ衝撃波をぶつけ相殺する。

土埃が晴れ、彼女の姿が現れる。


目や、爪、皮膚から髪に至るまで、魔石色に変色し魔素があふれる。

「やめるんだ。天守!その力は使うな、そら!」


目の前の女性の目が見開かれると同時に力が解き放たれる。

海から何本もの水の柱が立つ。


「海蛇よ 頭をたれよ」

言葉を起点に魔術が発動している!?

柱はまるで生きている様に、空中でぐにゃりと曲がり、先端が頭上へと迫る。


ノアがすぐに対応し、全く同じ規模の水柱を発生させ、打ち合う。


なんという力だ。魔法使いにも匹敵する力。

だけど魔素の流れがいびつだ。とても無理をしている様に見える。


どちらにせよ。

彼女を止めないと、船が沈んでしまう。


「総員!戦闘用意!天守の攻撃から船を守れ。天守の攻撃は防御せよ。だけど殺すな」


船中から了承を告げる掛け声が聞こえると同時に、あわただしく動き回る。


「風よ 舞いあげろ」


天守の体はゆっくりと持ち上がり、宙へ浮く。

自然と船の外へずれていった。

「波よ とまれ」


天守の声とともに海面が一気に氷が張る。

船が止まり、慣性を受けて、大きく揺れる。


「リナは船の中へ!火の魔石を使って氷を解かせ!船の動きを止めちゃだめだ。」

「僕が行きます。」


ウィリアムが率先して張られた氷の上におり、得意の炎の魔術を使って氷を溶かしていく。


「ふん、無駄なことを、私は気分が悪い。その船ごと沈めてくれよう。」

「風よ 切れ」


くそ、風の魔法で大量の空気を動かし、天守を襲う。

刃物のような、天守の攻撃と俺が起こした風がぶつかる。


刃物は船を襲い、マストや取っ手を傷つける。


「おや、外してしまったか。」


一体なんだこれは、傷口を見ると、わずかに濡れている様に見える。これは氷か?

うかがっている暇に次の一撃が来る。


しかし、それは船に届くことはなかった。

刀幻が撃ち落とした。


「何故じゃ、何故邪魔をする。」


「僕は君を助けに来たんだ。彼らと争う必要はない。何故、魔石病を治そうとしないんだ?」


「どこの誰ともわからないヤツの治療なぞ、受けられるはずが無かろう。それに私は天守、ニッホンを守るもの。そのためなら死するも本望。」


「この、分からずや!こうなったら、手足切り落としてでも止めてやる。」


「なんて愛じゃ、ならば船を沈めた暁にはもいでやろう。」


物騒な会話をしているところ悪いが、痴話げんかに付き合っている暇はない。


「天守の相対をよろしく頼む。攻撃が来たら防いでくれ!俺は船が動けるようになったら、一気に抜ける準備をする。」

「承知しました。」

海に降りていた水の魔術師に天守をたくし、ウィリアムの様子を見に行く。


「兄さん。船の周りの氷全部とかせたよ。」

「よし、一気に船を進めるぞ。」


俺は船に手を置き、船の動力系にアクセスする。

備え付けられていたパドルが勢いよく周りはじめ、ぐっと船は加速を開始する。


困難というものは一つではないらしい。

船のすぐ後ろで爆発が起こる。


「今度はなんだ!?」

「タロウ兄さん、人です。なんか変な音が出ている人が氷の上に立っています。」


あいつは・・・ニッホンで戦ったタカガネ・トシロウだ。確か振動を武器にしていたはず。

「すまない。ウィリアム、アイツが船に攻撃してこないように対処してもらえるか?いいか絶対に触れるな。」


「なんだかよくわからないけど。分かりました。要するに遠くから攻撃すればいいですね。行ってきます。」


大丈夫か?・・・心配だけど、気にかけている暇はない。海のど真ん中では逃げ場がなさすぎる。

船だけでも逃がして後はまとめて吹っ飛ばす。


「天守様に刀幻どの・・・さすがにおいたが過ぎますぞ。こんな海のど真ん中まで来た上に喧嘩ですか?」

軍人は近くの船など視界に入らないようで、二人しか気にしていない。


軍人は手の振動を発生させ、刀幻を狙う。

刀幻は今も船に乗っている。

つまり軍人の攻撃は船に当たるということだ。


ウィリアムは近づいてくる攻撃の意図を明確に感じ取っていた。

殺す気はない、でもある程度ダメージを与え、気絶を狙っている。


その過程で船が壊されるかもしれない。

この船は国の職人さんが丹精籠めて作ったんだ。壊させるものか!


両手に大量の魔素を集中させる。

一気に炎に変換する。でもまだ・・・ここからさらに炎の温度を上げる。


両手の炎は白くともる。

戦争でどんなことでも学んだ。どんな悲しいことも乗り越えた。


だからこそ、せっかくつかんだ平和、守らないといけないんだ。


炎弾を迫りくる超振動のこぶしに向けて、放つ。

宙に浮いて簡単には身動きをとれないはずなのに、簡単に体をひねり炎を殴る。

炎は爆散し、タカガネは海の上に立つ。海には細かい波紋がたっていた。

ウィリアムは炎で宙に浮き、タカガネの前にたつ。


「ほう、小粒じゃが、宝石の詰まった船じゃったか。面白い。」

「お強い方、この船を壊されるわけにはいかないのです。お覚悟を・・・」

「よろしい。変に邪魔をされる前に、前菜をいただくとしよう。」


船が氷を押しながらゆっくりと進み始める。

船の周りで戦闘が繰り返される。


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