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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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211/222

帝国Ⅹ-5

次の日から世界会議が始まる。

「さて、今回皆さまにお集まりいただきましたのは、とある案件について話し合いの場を設けたいがためです。」

ヴェロニカ全員の様子を見回して話し始める。


「昨今、全世界的に魔獣の活動が活発化しています。これに対し、我々は対処しなくてはなりません。そこで帝国からは各国による共同軍を提案いたします。」


帝国が提案したもの。

それは各国の軍は一時停戦し、魔獣に対処するため、共同軍になる。

そして魔獣の活動量が収まるまで共に戦い続けるというものだ。

当然、様々な意見が飛び交う。


「停戦中に後ろから刺されないという保証は?」

「明確な物はありませんわ。強いてして言えば、反乱を犯せば袋叩きに会うことでしょうか?」

「いつまで続くのか」

「分かりませんわ。今のところ魔獣が増加しているという事だけがわかっています。」


誰もかれもが質問を口にするが、分かりやすく、感触のいい返答は返ってこない。

当然である。

この問題は、ここ最近になって顕在化した事で、分からないことだらけなのだ。

その問題に、誰もやったことのない方法で立ち向かおうとしている。

このような惨状になることは分かり切っていた。


当然、何のうまみもないこの提案は受け入れられそうになかった。

女帝もこの現状になることは想定済みであった。


しかし、彼女の狙いはすでに半分以上達成済みである。

まずは各国の有力者たちを集める。そのうえで、腹のうちを探りあう。

何を目的にしているか分からないから、戦闘になる。


だからこそ、話し合い腹のうちを探りあう。

誰も戦いたくはない。

可能ならば戦わず問題を解決したい。

これは、そのチャンスなのだ。

誰もがそれを理解している.だから帝国までやってきたのだ。

皆考えは同じ、だからこそ共通の何かを定められなくても別にいい。もうすでに話し合えたから・・・


女帝はさらに思考をめぐらす。

共同軍の提案は受け入れられないことなんて想定済み。でも共同軍という考え方はみんなに共有できた。

これで、誰もが考えることになる。

いざというときに選択肢に、あるかどうか、これはとてつもなく重要なことだ。


よしよし・・・ここら辺が幕引きね。

「皆さま、思うところがあるようですし、一度提案を保留にいたしますわ。」

「それがよかろう。まずは調査が必要じゃ。」


ロールが賛成する。

「そもそも、何故魔獣が増加しているか分からないのだからな・・・」

「それについては、一定程度予想がつくかもしれんぞ。」

ロールの言葉に俺の目の前に座る男が反論する。

ボナパルトだ。


ボナパルトは王国再建のおり、王のお目付け役に躍進している。

王国の古い重鎮が戦争の責任を取らされ、一斉に退役した。


同時に新しい人材を雇用したが、そのとりまとめ役が必要である。それを実行しているのが、ボナパルトである。


「過去の記録をあさると、禁忌級の魔獣が活発化するとき、必ず他の魔獣も活発化するといわれている。現に王国ではここ数年になって、禁忌級の魔獣である。白いトラの魔獣の目撃例が相次いでいる。」

「それは誠か!?」

プエトジの王がわざとらしく驚いている。


「それにもう一つ多くなる現象がある。迷い人の増加だ。これは暗に迷い人の増加が魔獣の増加を促しているのではないか?」


ボナパルトは話しながら俺を睨む。まるで、お前が悪いといわんばかりだ。

確かにそう読み取れなくもないデータをニッホンで見た。

ボナパルトは俺の事が恨めしいみたいだな。当然と言えば当然だけど・・・


さて疑念の目が向けられた。どうやって反論しようか。

話し始める直前、先に言葉を発する者がいる。

「それは違う。」


誰もが予想しない人物だった。

天守である。

「迷い人はいつでも魔獣が活発化とは関係なしに表れる。一番ニッホンが迷い人を受け入れているからな・・・あやつらの大半は誰にも見つけられず、餓死する。されど近年は魔獣もそれに相対する人もあちこちを歩き回る。自然と迷い人に会いやすくなっているだけじゃ。」


以外なアシスト・・・ボナパルトにとっては反論か、

どちらにせよ、天守のおかげで、迷い人と魔獣の活発化の関係は否定された。


ふと、天守を守るように横に座っている刀幻と目があったような気がした。

なるほど、これが彼の言うアシストか・・・

その後の議論でも適度にニッホンのアシストを受け、俺は世界の敵にならないように会議に参加した。


結局、予想通り、議論はまとまらないまま、終了となった。

思惑がうずめく、世界大会は閉会を迎える。


帰りの準備をしているさなか、懐かしい人物が屋敷を訪れた。

「久しぶりだな、クララ、ケニー」

「本当に久しぶりですわね。せっかくですから少しお話でもいかがかしら、屋敷のな・か・で」


玄関で迎え入れると、全く目が笑っていないクララが、屋敷の中に入るように促してきた。

クララに押し込まれるように屋敷の中に入ると、すぐにクララは怒り出す。

「アンタ、バカ!?一国の王が易々と外で話してんじゃないわよ!」

「と言われてもな・・・ここは俺の屋敷だぜ。」

「誰が聞き耳立ててるかわかんないだから、ちょっとは自重しなさい!」

「クララ、ちょっと静かにするっす。大声だしたら意味無いっす。」


ケニーの真っ当な指摘で、歯ぎしりをしながら押し黙る。


「それで、何しに来たんだ?」

「単純よ!商売の話をしに来ただけよ。」


「商売、そうか、いい感じに使い回されたわけか。」

「ええ、癪なことにね。王国はあなたをひどく恐れている。恨みすら持っているといっても過言ではないわ。でも現実的に高い海運能力を持つあなたの国と交易を開かないわけにいかないわ。」

「そこで、過去に交友関係のあるクララ達が交渉役として選ばれたわけか・・・」

「ちょっと違うわ。私たちの役目は最初だけ、最終的にはあなたにはしっかりと王国と国交を開いてほしいのよ。」

「・・・理解はするが、長い道のりになるだろう。・・・俺が言うのも変な話だけど、利益を独占することもできたんじゃないか?」

「私たちだって色々学ぶのよ。簡単な話、欲張りは身を滅ぼすのよ。」

「そうか、まあ、それでいいなら、問題ない。さて、話を詰めよう。」


それからというものクララと詳しい段取りを決めた。クララ達は今後も俺たちの国へきて、交流を進める役割をになった。


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