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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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魔王の国Ⅰ-4

海の魔獣が現れた。

今回はサメ型だ。

海の魔獣は大抵、大型化しどんなに堅牢な船も沈めてしまう。厄介な存在だ。


ほとんどの魔獣はその巨体を満たすほど食糧がなく、息絶えるか。

わけもわからず陸地に突進して息絶える奴らが多いが、まれに船を破壊しよいうとする魔獣が現れるのだ。


いつもなら様子を見て、放置か討伐か選択するが、このままでは帝国の船は出られない。

帝国も気づいたようだ。

兵士たちはすぐに展開するが、手の届かない場所にいる魔獣をどうしようかと手をこまねていている。


「ウィリアム。この国は魔術にたけた者が多くいるのが最大の強みだ。剣では負けても、一番得意な魔術は負けないところ見せてやるべきなんじゃないか?」

「! はい、行ってきます。」


ウィリアムから凄まじい魔素が放出される。

炎魔術に関しては俺に匹敵する程の実力を持つ。


一瞬にして空高く上昇し、海側へ移動する。

ウィリアムは右手を掲げ巨大な幾何学模様が現れる。

模様に反し、作られる火球は非常に小さい。

まさに手の平サイズだ。


しかし、驚くほどに光り輝いていた。白い光があふれていた。


1秒とたたず、魔素の収束は終わり、次の瞬間には魔獣のもとへたどり着いた。

とてつもない速度で火球は迫り、魔獣は避ける暇もなく、着弾する。


強烈な光が半球状に広がり、遅れて鈍い腹の底から響くような音が聞こえる。

すぐに光の半球は消え去り肉体の半分以上を吹き飛ばした魔獣が現れた。


帝国の誰もがその姿に絶句する。


「タロウさん、やりましたよ!全力で。」

「お前な・・・誰が全力でやれって言ったよ。ちょっと派手に見せてやればよかったんだ。」

「ええ、そうなんですか!」

「あと、どうするんだ。あの爆風で巨大な波が迫ってるぞ。」

「ああ、どうしよう・・・どうしよう・・・」

「はぁ~しょうがないな。」

俺は足元に集中する。

街とつながる感覚がある


感覚を海まで伸ばしていく。

荒々しい波が平たんに、そして島の周りへ移動していくようにイメージを重ねる。


爆風によって発生した波は自然では考えられない勢いで、自然に低く、周囲へ拡散していった。

まるで意志を持って波が自らしゃがみこむように低くなった。


多くの帝国兵はその様子を見て安堵の溜息を吐く。

しかし一部の者たちはより戦慄する。

海から全く魔素を感じなかった。にも拘らず考えられない現象が目の前で起こった。


誰が起こしたか、そんなものは考えるまでもない。

魔王。

彼の魔法は自然そのもの、そんな領域まで至ったのか!?


帝国の船は港を出て順調に進む。

「すごかったですな。先ほどの技は・・・」

「爆発のことですか?それとも波が来なかったことですか?どちらにせよ、あなたがそんなことを言ってもよろしいですか。」

騎士団長は楽しそうに話す。


「もちろん、いけませんぞ。しかし、勝てるとお思いですかな?」

「全く思わないわ。・・・以外ね。どうやったら勝てるか考えてるかと思ったわ。」

「それは違いますぞ。私たちは決して勝つためや戦いたいがために頭を使っていえるわけではありませんぞ。」


女帝がこちらを見つめる。本当に美しく育った。

自分の娘が立派に育った感覚を覚える。


「私たちは帝国を守るために存在するのです。あなたは帝国です。あなたを守ることはすなわち帝国を守ることになります。」

「そう、ではかの国と戦うことになったらどのように戦いますか?」

「真正面から戦うことは致しません。内部からゆっくりと人を入れ、経済に介入し切り崩します。戦いなど、所詮交渉の一手段なのです。」

「始めるならば、早めに始めないといけませんね。その時はよろしくお願いしますね。」

帝国までの帰宅は非常に快適な航海であった。


魔王の国。

夜になると、他国にはない居酒屋と呼ばれる店が開く。

この世界では珍しい文化だ。


「よろしいのですか?このような大衆店に訪れて?」

「問題ないだろ。ここは俺の店みたいなものなんだから、店主も顔見知りだ。」

「存じておりますよ。」


アレクと俺は同じものを頼む。

「昨日、またサメの魔獣が出た。これで合計3体目だ。出現の感覚も短くなっている。」

「多いですね。」

「あの調査はどうなった?」

「結論から言いましょう。ほぼ確実にあると思われます。海底に生成されたダンジョンです。」

「はぁ~、当たってほしくない予想は悉く当たるものだな。」


あまりにも海洋性の魔獣が多かった。彼らはどこから来るのか。

そこから海底にダンジョンがあるのではと考えられていた。


それが見つかった。

しかし自然を考えれば当たり前のことだ。

ダンジョンの生成は自然現象だ。

どこにできたっておかしくはない。


困った事はどう対処するかだ。


「どうしますか?」

「どうしようね。海の底となると手の出しようがないな。」

「珍しいですね。いつぞやの時のように破壊してしまえばいいではありませんか。」

「あのな・・・何でもかんでも破壊できるわけじゃないんだよ。大体壊したらもったいないだろ。」

「ではどうやって海の底の魔石を取りに行くのですか?」

・・・


「まあ、出てくる魔獣に対処しつつ、入口をふさぐくらいしかないな・・・」

分かり切っていた結論に改めてたどり着き、いつもの飲み会が始まった。


一年後、女帝のいう通り、世界会議への招集依頼が届いた。


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