アカウ村への道すがら
小人数で会議を開けるであろう小部屋にやってきた。
グラハムさんが話し始める。
「さて話を聞こうかマリー」
「何故おまえが仕切るんだ。たくっ タロウ、商団をやめてからは自由に活動していると聞いてるが本当か?」
「ええ、本当ですよ。今はこだわりを持たず、色々な仕事を請け負っています。」
「そうか、なら商会として仕事の依頼をしたい。」
俺に?商会なら優秀な冒険者を抱えていそうなものだけど。
「仕事内容を伺っても?」
「もちろんだ。仕事内容はここより西にあるエントシ山脈、そのふもとにアカウ村がある。この村はとある魔石の一大産地なんだ。それが何かわかるか。」
「水の魔石ですね。魔石の資料でいくつかの記述を読みました。かなりの高純度だとか。」
「そうだ、水の魔石は水流を制御する機能を持つ重要な鉱石だ。純度が高いものほど多くの水量を操ることができるが、水の中から出すと急速に劣化する。そんな水の魔石だが急激に産出量が減った。」
「ということはその調査ですか?」
「いや、調査は行ったんだが、その、なんだ」
どうしたのだろう?歯切れが悪い。
こんな姿は似合いそうにないが・・・
「調査をしたがわからなかったんじゃよ。というより問題が一つじゃない。」
静かに聞いていたグラハムさんがいきなり口出しをしてきた。しかし原因が分からないとは?
「原因が分からないことの一つ目は魔石そのものの産出量が少しずつ減っていることがある。」
魔石の出現要因は未解明だ。
「まぁ、この問題は今に始まったことではない。それより突然現れた問題が二つある。一つ目は健康問題だ。よくわからない奇病が流行っているみたいだ。私も聞いたことがないものだ。検討もつかない。なんでも体が結晶化するらしい、まるで魔獣のように。」
! 人の魔獣化 確かに野生動物が魔獣化するなら人も魔獣化する可能性があるか・・・すっかり失念していた。話を詳しく聞くと暴走することは無いらしい。
マリーさんは続ける。
「もう一つはこの奇病を嫌って現地の人が作業をしなくなったことや冒険者や護衛が寄り付かなくなったことがある。正直、医学者に任せるしかない・・・
なぜか亜獣の出現が増えているのに冒険者や護衛がが減っては移動もできないというものだ。依頼は増えた亜獣の討伐と原因の調査、できれば魔石の生産量の回復だ。どうだ、できそうか?」
「・・・それでグラハムさんがこの場に介入してきたわけですね。」
「察しがいいな、小僧 いや奇術使いタロウ。」
「奇術使い!? なんですかそれ?」
俺は驚いて思わず訪ねる。
マリーさんが答える。
「なんだ知らなかったのか? もう少し自分の評価を知ったほうがいいぞ。雷のような魔術を使い、変な杖を使う。さらにはその杖がどうやら敵の居場所を察知しているらしい。更には変な布を飛ばすクロスボウ。これで目立たないほうがおかしい。」
「ついたあだ名が奇術使い。あとは遠距離戦では、それなりに強いということか。」
グラハムさんが続ける。
「ギルドとしても追加報酬、いや支援を出したい。力だけがあるやつを送ったところで解決しそうに無いからな。お前の発想力や意外性に期待してのことだ。」
マリーさんから今回の報酬額を示された。
高純度の魔石を大量に買える額だ。
「もちろん金銭の保管庫付きだぞ。どうする?」
ぶっちゃけ先立つ物がほしい今日この頃。はっきり言って選択肢はない
「その依頼、受けます。」
マリーさんはにっこりと笑って、契約書を取り出した。
「グラハムさん、支援とはどのようなものなのでしょうか?」
「ああ、それはな・・・・」
・・・・・
「初めまして、アレクと言います。ギルドランク3の冒険者です。武器はたいてい使えますが、バトルアックスが一番得意です。」
そう、グラハムさんが用意した支援というのは冒険者そのものだった。戦闘能力はすごく高いとのことだ。金髪のサラサラヘアーで眼鏡をかけている。かなり重厚な装備をしている。
ものすごく頭がよさそうだ。
「どうも、サトウ・タロウです。ギルドランクは1です。ランクは最低ランクですけど色々あって、今回の依頼をされました。一応、魔術を使うことができます。」
様子を伺いながら自己紹介をする
「はい、しっかりと聞いています。奇術使いですよね? 有名ですよ。」
まただ、意外と俺は有名らしい。
「今回は問題が不可解な部分が多いのでしっかりと準備していきましょう。リストを作ってきました。印をつけた物は用意が終わっています。」
仕事ができるな~
確かに、ほとんどの物が準備できていた。
後は自分の物を用意するだけだ。
リストを見ていて追加したいものを見つけた。
「アレクさん少し持っていく物を増やしたい。きれいな水です。」
「それ以上持つと、重たくて移動が大変になりますよ。」
「それは分かっているけど、病気が流行ってると聞いています。だから水ぐらいは綺麗にして衛生環境上げとかないと自分たちが病気にかかったら元も子もないですし。」
「了承しました。そうしましょう。」
アカウ村に向かう道中、アレクと話していた。結構フレンドリーで直ぐに打ち解ける事ができた。
「ということは、その魔石ランプ似た物がたくさんついている杖がないと敵の位置が分からないというわけですね。片手がふさがるとは、以外に不便ですね。」
「そういうことだ。あと不便は余計だ。」
今はお互いの戦い方を教えあっていた。
「アレクはバトルアックスで一網打尽か、イメージと全然違うな」
「よく言われます。なぜか皆さん僕が知的だと思われるようです。」
そう言いながら腕の装備を外し、整備をしていた。見えた二の腕は装備の上からではわからなかったが驚くほど太い。
「アレク好きなことは?」「体を鍛えることです。」
決まりだ。
こいつは典型的な脳筋タイプだな。
「それにしても、その杖は本当に使えるのですか?事実なら戦略的に非常に価値あるものなのですけどね。」
「まだ疑ってるな、いいだろう実演してやる。今ここには俺たちしかいない、人しかいなければ白く光る。もし魔獣でもいようものなら赤色になる。」
俺は見せつけるように杖を突き出し、探査魔術(また勝手に名前を付けた)を発動した。
すると杖は光った。
アレク側が白に、頭上側に赤く。
「赤は魔獣でしたっけ?」
そう言いながら二人は空を見上げた。




