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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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帝国Ⅸ-6

一方屋敷ではタロウが窮地に立たされていた。

それはノエルの質問から始まった。

「ねぇタロウ、そろそろ考えてくれた?」

一瞬何のことか分からず、呆けていたが、すぐに思い出し、そして思わず口に出してしまった。

「あっ」


口だけではなく表情にも出ていたのかも知れない。


それを見たノエルは一瞬にして、怒り、悲しみ、目に涙を貯めて何処か走っていった。

すぐに追いかければ良かったのだが、問題というのは重なるものだ。


「タロウさんやっぱり・・・」

リナが見ていたのだ。

何かを理解したリナも、そそくさとどこかへ行ってしまった。


俺はどちらも追いかけることができず、あたふたしていた。

一人で住むには広い屋敷だけど、今は多くの人が住む屋敷だ。

簡単に話は広がり、おれの意志とは関係なしに事態は動く。


ノエルの話は最終的に副団長の耳に、リナの話は最終的に騎士団長の耳に入る。


結果として、俺は大部屋に正座していた。

首元には二本の剣がかかっていた。

「やはり危惧していた通りだ。お前は危険な奴だ。お嬢様に手をかけるばかりではないく。ノエルにも手をかけるとは・・・」

騎士団はノエルと仲良くなれたんだな、そういえば一緒に訓練していたことあったな・・・半ばあきらめの境地に達したのか、全然関係ないことを考えてしまう。


「タロウ、俺はよ。ノエルことは娘のように思っているんだ。ノエルはお前のことを楽しそうに話すんだよ。そんな子を泣かすなんてな・・・覚悟はできてるだろうな?」

ノエルは愛されているな。人当たりはいいからな。

やはりあきらめのせいか、全く実感がない。


「はい」


「「で、どっちと結婚する?」」

副団長と騎士団長の言葉が重なる。

どちらかの名前を答えれば、もう片方の刀が俺の首をはねるだろう。二人の目が全く笑ってない。本気だ。


辺りを見る。

噂を聞きつけてか、色々な人がいる。

まずは目の前の二人リナとノエルだ。

二人は椅子に座ってこちらを見ている。リナはニコニコとしてこちらを見ている。何も心配がないようだ。

でも長く過ごしたからわかるようになった。ああ見えて内心は悩み事でいっぱいだ。


ノエルは興味深々といった感じでこちらを見ている。一途でまるでそれ以外のことを考えていないように見えて、視野は広い。さっきからリナの方を見て、様子をうかがっている。

とても優しい子だ。


他の面々もいる。

額に手を当て、目も当てられないと呆れているアレク、ゴミでも見るような目をしているリルカ、ニヤニヤと面白そうなコイル。どうなるかとあたふたしているウィリアム。

商団メンバーや騎士団等がいる。


こう見ると多くの人と関わってきたな・・・

感慨にふけっていると、首元に冷たい感触がある。

答えをせかしているようだ。


「俺は・・・」

「どちらも選んじゃえばいいのでは?」


俺ではない声に振り返る。

そこにはここにいるはずのない女帝がいた。ニコニコと非常に楽しそうだ。

何がそんなに楽しいのか?


さすがに女帝がいる場で痴話げんかはできないので、一旦中止である。


「こんな時にどんな御用でしょうか?」

「ふふっ本当に楽しそうな時にごめんなさいね。でもあなたが悪いのですよ。」

女帝の言葉に回りの人々はぴりつく。

今、その言葉遣いはやめてほしい。


女帝は分かっていたように本当に楽しそうに笑っている。

「さて訪問の理由は戦争の報酬についてです。あなたは私からの依頼を達成したばかりか、戦争終結に向けて多大なる貢献をしてくださいました。よって褒美を渡します。」

事前に聞いていた話では爵位をもらうことになっていたはずだ。


「あなたには爵位を・・・と言いたいところですが、色々と問題がありまして。」


わざとらしく手を頬に当て、悩んだような表情をしている。

まるで煽っているようだ。

何が隠されているかわからない。言葉に惑わされず、冷静な判断をしなくては


「あなたの功績はあまりにも大きすぎるのです。爵位では収まりません。さらに今回の戦争では新しい領地を手にしたわけではありません。つまりあなたに与える領地をどこからか分譲しないといけないのです。」


なるほど、そういうこともあるのか。

貴族というのは領地運営を行い、その力を蓄える。


「有力な貴族たちはあなたを近くに置きたがりません。自分の領地が減るというデメリットもありますが、魔王と呼ばれるほどのあなたを恐怖して近づきたがらないのです。」


何もしていないはずなのに、とてつもなく嫌われているな・・・


さらにですね!

と女帝は続ける。

「あなた禁術を使いましたね。」


「はて、何のことでしょうか。」

おどけてみせたが、もちろん調査済みだろう。

隠しとおせるとは思っていなかったからここからが勝負だ。


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