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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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王宮の戦場-2

俺の言葉を理解するのに時間を要したのか、しばらくは沈黙が続いたが、すぐに反論が飛んでくる。


「いまさらやめられるか!」

「国民に示しがつかぬ。」

「どこの誰ともわからぬヤツに指図される覚えはない。」


その他、千差万別だ。

「お前たちは戦闘地域を見たのか?」


投げやりに話す。演技力の見せ所だ。

力を見せつけて、わからせなければいけない。彼らに戦争は止めなければと・・・そう思わせなければならない。


俺の質問など、意に介さぬと言わんばかりに答えになっていない言葉が返ってくる。


一気に力を解放する。

部屋の中に雷鳴が飛び交い、吹くはずのない突風が吹き荒れる。


衝撃で部屋中にヒビが入る。

「これは警告だ。戦争をやめよ。」


何人かは腰を抜かし座り込み、何人かは立ち尽くし、何人かは震えている。


「その力、噂の魔法使いだな。その魔法使いがなぜ停戦を呼びかける。」

王と思わしき人が聞いてくる。

覇気はなくとも、よく通る声だ。


むっ!勢いよく動き過ぎたせいで、深いところまで考えていなかった。ここは適当にでっち上げておくか。

「このまま、戦争を継続すれば厄災が降りかかる。起こしてはならないものが、起き上がる。」


パッと思いついたものがこれだった。我ながら全く意味の分からない理由だ。

しかし、直前に見せた派手な技がよっぽど効いたのか、だれもが、でたらめな嘘を信じ始めた。


ルイスは極めて自然に話を持っていく。

「仮に王国が戦争をやめたとして、帝国が攻め込んできた場合はどうする。結局戦争は止まらぬぞ。」

「ならば、私は帝国と戦おう。」

「今、王国と戦い。場合よっては帝国と戦うという。君は一体何者なんだ。」


「コイツは魔法使いの王・・・魔王だ。」


俺が話し出すよりも先に、ボナパルトが俺の存在を明かす。


魔王などと名乗ったことはないが、この戦争で定着しそうだ。先が思いやられる。

しかしボナパルトに依頼していたのは、戦争の停止に加担してもらうこと。その方向性に舵を切ってもらうことを約束していた。


「魔王?」

「まおうだと!」


よくわかっていないはずなのに、驚いている。


ボナパルトは俺の強さ、戦争における王国の圧倒的不利を伝える。

王国兵たちによって俺のもとから引き離され、回復を受ける。


「ボナパルトよ。何があった。」

「採掘地は魔王の力によって完全に崩落した。採掘は続行できない。戦場は・・・兵士、兵器が枯渇して、特攻するしかなくなりつつある。」

この言い方だと、まるで、俺が全部悪いみたいだ。大体採掘地の崩落だって戦闘の結果であって、故意に壊したわけじゃない。


「帝国は・・・帝国はどうなった。」

ボナパルトのつらそうな様子など意に介さず、続けざまに質問をする。

「帝国は依然として、逐次投入を続けている。いまだ戦力は健全だ。」


ボナパルトからもたらされた情報は、王国幹部たちを絶望させるには十分であった。

何より圧倒的な戦力差、戦争目的である採掘地の損失、主力であったノイマンの死、指揮官であるボナパルトの負傷。


もちろんまだ戦争を継続することは可能である。しかし、続ける意味があるだろうか。これ以上何を得られるだろうか。


「王様、謹んで進言いたします。これ以上王国は戦えません。ここで兵力を失うより、終戦し和平の道を歩むことを提言いたします。」

ルイスは王様に向かって話しかける。


「なっ、貴様勝手な行動は慎め!」

貴族の一人がリリカの父に向ってくってかかる。

「では、これ以上どうするというのだ。結果は明らかだ。」

「何、まだ戦力は残っているではないか。」

「使い切ってどうする。この戦いが終わったらしばらく戦争が起こらないなどと保証はないのだぞ。」

俺を目の前にして言い合いが始まる。


「静まれ」


ただ一言だけだったのに、だれもが声を静める。

王が声を発した。


「終戦せよ。戦争は終わりである。」

短い一言で、これからの行く末は決まった。


これ以上この場にいる必要はない。すぐに退散しよう。

「帰ろう。」

アレクのうなずきだけが返ってくる。


「魔王よ。王とはなんだ。」


王が何かなんて考えたこともない。

どうしよう、せっかく終戦を考えてくれているのに・・・何か答えないと


「進む道を指し示す者のことでしょうか。」

これで答えになっているのか?・・・


目の前の老いた男は、少しの間をもって視線が合う。

「違わぬ者にとっては異国ぞ。」


ど、どうしよう、よくわからない。なんて返すべきなんだ。

と、都合がいいタイミングで、多くの兵士が攻め込んできた。


兵士から逃げるためにアレクと自分に空気をまとわせて、王宮の外に出た。結果的に王の問いかけには何も答えることはできなかった。


そのまま、帝国へ帰りたいところだけど、寄る場所がある。

ノイマンの研究室だ。

ここも前回訪れたことがあるから、迷うことなく侵入する。


ノイマンにいわれた通り、彼の書き残した書物をいくつか持ち出し残りは火をつけ完全に消去した。


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