戦場の採掘地-1
近衛兵の兵長をしている男はエドワード・クリークというらしい。
年齢は50代前後だけど、年齢に似つかわしくないほど筋骨隆々としている。
南の国の誰かを思い出すいで立ちだ。
何故か会議に参加する。
上役の人間たちは今後の戦争方針を話し合っているらしい。
会議ののち、エドワードに呼び止められる。
「君たちは何を目的にしているんだ。」
「王国技術者のノイマンと呼ばれる男の確保です。彼が人体魔石の制作者です。現状、彼以外に魔石の生成はできないようです。」
「なるほど、戦力の縮小は大切だ。目標を共有しよう。我々もその男の確保を優先する。現状の戦力を共有しておきたい。」
それから共有された情報をまとめる。
両軍は問題の採掘地を挟んで駐留している。
帝国軍と王国軍はそれぞれ同数の兵士がいる。
帝国は魔導四輪や他の魔導兵器を活用し、王国は人体魔石を使って進行している。
現状は王国軍に押されており、劣勢である。
特に暴走した人体魔石は強力で、魔導兵器が放つ攻撃など簡単に飲み込み兵士丸ごと圧倒されるとのことだ。
偶発的に戦闘が開始されるため、休息の暇がなく、戦闘も勝ち目が薄いとのことだ。
かなり劣勢に立たされている。
それでも戦闘状況が均衡を保っているのは人体魔石の性質によるものだろう。
あの魔石は高位の魔術使いでなければ扱いきれず、暴走すれば自滅してしまうのだ。
結果として両国ともに兵士の数を減らし、損害を大きくしていた。
「君たちは敵兵の撃滅は行わず、ノイマンをさがしてほしい。」
「・・・えらく高く評価してくださいますね。自分でいうのも変な話ですが、私の力を使えば大きな戦果を挙げられるのでわ?」
「もちろんタロウ君の力は評価しているよ。しかしだね。力を使うことに迷いのある人間は戦場では生き残れない。」
やはりプロにはわかるのだろう。すべてを見透かされている気分である。
「気分を悪くしないでもらえるかな。君の実力は本物だと思うよ。そうだね。少し言い方を変えよう。ノイマンに対する覚悟は本物のように見えた。」
俺はわかりやすいといわれていたけど、そんなところも出ているのかな・・・
「それに君の意見は至極全うなものだ。このまま戦い続けても活路は見えてこない。ならば根本をたたくのは理にかなっている。相手の実力を知り、人相も知っている。ノイマンを停めることができるのは君だけだ。そんな戦力を適切に配置するのは普通ではないかね?」
「理解いたしました。私たちも当初の予定通り、ノイマンをとらえることを第一目標とします。」
その日から帝国陣地を活動拠点として、ノイマンの探索を開始することとなった。
王国軍と帝国軍は一進一退の攻防を続けている。
塹壕や隠れられる壁面を作りながら攻撃を行っている。
炎が巻きあがり、爆発音が鳴り響く。
高位の魔術使いも参加しているようだ。大量の水を操って、悲惨な戦場を作り出していた。
俺はそんな状況を上空から見ている。
敵兵の上空へ移動し、望遠鏡を使って施設を観察する。
テントや兵器の駐留地は見えるが、目的のノイマンは探せない。
一体どこにいるんだ?
事前情報では確かにノイマンらしき人物が目撃されているのに・・・
その日も大きな成果を上げられず、駐留地に戻る。
「ダメだ。全然発見できない。」
「こちらもです。戦場を駆け回りましたが該当の人間を見つけることはできませんでした。」
俺とアレクはそれぞれの方法で、ノイマンを探していた。といっても力業だ。
二人とも人探しに関して特別な能力を持っているわけではない。
そこにコイルがやってくる。
「全く・・・お前らダメダメだな。」
「なんだよ。情報収集なんて、まともにやったことがないんだからしょうがないだろ・・・」
「そうですよ。こんなにも人が入り乱れているのですから、地道に探していくしかないではありませんか。」
「探すのはともかく。お前らは目立ち過ぎだ。」
それなりに上空を飛んでいたはずだから、わからないはずだけど・・・
「お前の持ってるその道具。タロウだけが持ってるものだと思うか?」
望遠鏡。
確かに王国兵が持っていても何らおかしいものではない。
戦闘中に空を飛んでいるだけで、何もしてこない俺を気にしている暇はないと思うけど・・・
「何もしてないとか考えてるだろ。違うぞ。わけもわからないのに、何もしてこないから恐怖なんだ。」
俺は何も言えなくなる。
「王国兵からは魔獣と似たようなものと考えられているみたいだな。」
「な!俺はあんなのとは違うぞ。」
コイルは俺の話を無視してアレクに話しかける。
「お前もだアレク。特に攻撃することもなく、戦場を走り回るだけ。にしては派手な装備をしているし、王国の攻撃は当たらない。何を目的としているのかわけのわからない連中。終いには帝国兵からも不振がられている。」
どうやら、俺たちは相当、情報収集が下手らしい。
「いいか、そんなに目立つ行動をしていたら、敵さんだって出たくても出られないってもんだ。」
「コイル、お前はどんな情報を持ってきたんだよ。」
「焦るなって、いいか。敵兵の陣地にもいない。戦場にもいない。しかし、確実にこの周辺にいる。どこだと思う?」
考える・・・この周辺地域にいることは確かだ。しかしめぼしい場所にはいない。ということはこんな場所にはいないだろってところにいる。
そうか!
「ど真ん中!」
「その通りだ。」
アレクはまだわからないという表情をする。
「王国が一部占領しているが、採掘場はまだ誰のものでも無い。もしかして・・・」
「そのまさかだ。ノイマンは地下採掘場の中にいる。この目でしっかりと確認してきた。」
「どうやってそんな事を」
「簡単だ。誰かさん達が思いっきり暴れててくれたからな、全員注意を引いてくれていたお陰で不自然に地下に掘られた通路を確認できた。そこを警備していた兵士の会話によるとノイマンは今は採掘地の奥で研究をしているらしい。」
実はコイルって物凄い奴なのでは?
「なら、そこに侵入してノイマンを捕まえよう!」
「どうやって入るんだ?」




