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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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王都Ⅱ-4

魔石に大部分が覆われた体。

おそらくあれではもう・・・よく見ると片腕がない?

「おお!さすがの観察眼ですな。彼のおかげで私の腕が復活したしましてな。」


ノイマンは無くなったはずの左腕を見せる。肩から先に魔石で覆われた左腕がくっついていた。

「肘を動かしたり、物をつかむことはできませんが、こんなことはできるのですよ。」

魔石の腕を近くにあった桶に突っ込んだかと思うと、水の表面から高速で飛来する塊があった。


すぐ真横に着弾する。

ただの水だ。


しかし超高速で放たれる水は鉄板すらも打ち抜く。

あれは水の魔石だったのか!?どうやって空気中で維持しているんだ?


・・・と考えている暇はない。急いで物陰に隠れる。

俺がいた場所を打ち抜くように複数の弾丸が通り過ぎる。

硬い石の壁を深くえぐりながら破壊していく。


あんなもの一発もくらえない。水の弾丸を無効化するにはどうすれば・・・


まずは、空気弾を打ち込む。

しかし水の弾丸はいとも簡単に空気弾を貫通し迫りくる。


幸いにも空気弾のおかげで、軌道が変わりギリギリでかわしていく。

頬を伝わる生暖かい感覚が、背中に汗を流す。


こんなものではダメだ。・・・火の魔石を取り出す。

ウィリアムほどではないが、俺だってコイツは結構使ってきた。


自分の目の前に厚い空気の膜をイメージする。

この膜に火の魔石を突っ込み、魔素を流す。

途端に空気の膜は加熱され温度をどんどんと上昇させる。


凄まじい温度まで上昇した空気は景色をゆがめる。

さらに小瓶に詰めていた水の魔石を取り出す。

すぐに色が変わり始めるが、その変化は途中で止まる。

加熱した空気中にある水蒸気を水の魔石に集めたのだ。

水の魔石をコーティングするように水の魔石が湿り気を帯びる。


「何をしているかよくわかりませんが、動きを停めたなら好機。」

ノイマンは再び、水の弾丸を放つ。


弾丸は空気膜に触れた瞬間から急激に加熱され沸騰し始め、やがて全て蒸発してしまった。

周囲にはジュッという音だけが残る。


「ほうっ加熱ですか!道理であなたの顔がゆがむわけだ。全ての弾丸を蒸気には代えられないはず。これならどうだ。」

ノイマンは樽の水をすべて使い切る勢いで弾丸を放つ。

しかし全ての弾丸が蒸発し、そしてタロウの持つ水の魔石へ集まった。


「とてつもない力ですね。魔法使いというものは、まさしく自然そのものといえましょう。到底、人ではたどり着けない領域に軽々と踏み込む。実に憎たらしい。」


「お返しだ。」

俺は足や腕を狙うようにノイマンをまねて、高速で水を射出した。


「それは想定内です。」

ノイマンはとっさに左手を掲げ、炎を放出した。


炎と触れ合った水は激しい音を上げながら、蒸気となり部屋中へ拡散した。

水蒸気は一瞬だけ両者の視界を遮った。


ここだ!俺は魔法で、加速してウィリアムの父に触れる。

ずっしりと来る重みを感じるが、全て空気で支え、一気に外に向けて加速した。


「逃がすものですか!」

蒸気の煙はすぐに晴れ、ノイマンによる水の弾丸の追撃が来る。


当たるな!当たるな!

祈りながら、ジグザグとした動きを繰り返す。

ここではこれ以上戦えない。


「アレク!退避だ!」

アレクを見つけ出すと、いたるところから、出血していた。


「アレク、お前弱くなったな。まるで獣だ。思考がない。」

「まだまだこれからです。」


アレクは目の前の男に煽られ、まだ戦おうとする。

「何言ってんだ!もう終わりだよ!」


アレクに触れ、全てを覆うように空気をまとう。

突如、脇腹に激しい痛みが走る。


「歩みを止めるべきではなかったですね・・・」

ニヤつくノイマンが視界に入る。


打ち抜かれた。

痛い。痛すぎるけど、まだ大丈夫だ。我慢して自分が触れている物を空気の力で持ち上げる。


雷撃を放ち、壁に大穴を開ける。

一瞬にして加速し、上空へ逃げる。


天井に空いた穴を見つめながら、ノイマンはつぶやく。

「研究室がびしょ濡れですな。」

「自業自得だ。」

「ひどいですな。かなりピンチだったのですぞ。それを撃退したのですから、ほめてほしいぐらいです。」


「そもそも、お前がすぐに会合に来れば、接敵もしなかったはずだが?」

「それは仕方のないことですな・・・」

「どうせ奴らの狙いも我々を殺すことにない。捕縛が目的であろう。」

「そうですかな?わりと本気の殺意を感じましたが・・・」

両者は何も言えなくなった。


上空へ逃げたタロウは、すぐさま回復の魔石を使用する。自らの腹に空いた穴とアレクの傷を治していく。

「すみません。恩に着ます。熱くなり過ぎました。」

「珍しいな。反省するなんて。」

「思うところがあるのです。」

「そうか・・・」


アレクの傷は浅かったおかげで、苦労することなく、回復することができた。

予定通り、ノエルのもとへ降り立つ。

「おいどうしたんだタロウ。その持っているものはなんだ。」

「説明している暇はない。今すぐ王国をでるぞ。」

「なんだかよくわからないけど、分かった!」


ノエルとグレッグ、そしてアレクにウィリアムの父。全員を覆う球体をイメージし、風の魔法で、その球体を花火を打ち上げるように上空へ打ち出した。


遠くへ映る王宮からは複数人の兵士たちが出動を始めていた。王国から離れる必要があるな・・・


空気でできた球体を操作し、コイルとウィリアムが待つ場所へ移動を始める。

二人には王国から離れた場所で魔導四輪の中で待機してもらっていた。


陸上を行けば、かなりの距離だが、上空を高速で移動すればどうってことはない距離。

すぐに魔導四輪を発見し、降り立つ。


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