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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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王都Ⅱ-3

「まさかの人物が出てきたな・・・」

俺のつぶやきにノイマンは即座に答える。

「そうですかな?ここは王宮の中なのですぞ。私がいて当然ではありませんか。」


ノイマンは分かりやすく、おどけて見せる。


どちらにしろ最も会いたい人物に会うことができた。アイツをとらえて、人体魔石の開発を停める。これは絶対だ。

俺は両手に電撃をまとわせる。


「お待ちくだされ。大方、私をとらえに来たのでしょう。ここで本当に、私を捕えてしまってもよろしいかな?タロウ殿。あなたには見せたいものがあるのですよ。こちらへ。」

ノイマンは手招きして俺たちを呼んでいる。


「どうしますか?」

アレクが耳打ちするように聞いてくる。


「罠かもしれないが、人体魔石に関する情報をつかめるかもしれない。行ってみよう。」


俺はアレクに施されていた手錠を破壊し、アレクに小刀を手渡す。

これで、アレクも少しは戦えるようになる。


アレクの準備を待ってノイマンについていく。

彼についていくと誰も入っていない檻が続き、部屋の奥に上階へと上がる階段があった。

ちょうど一階分上り地下一階についた。


光が少なく、様相が全く分からない。ノイマンが部屋の明かりを灯したことで一気に全貌が明らかとなる。

そこはノイマンの研究室だった。


何が何だかわからない液体が詰められた色付きガラス瓶に、乱雑に置かれた資料。そしておびただしいほどの人体魔石。

目を伏せたくなるほど、様々な体の部位を使って人体魔石が生成されていた。


「これは・・・こんなにも・・・」


うめき声のような言葉が出る。

「いかがかな、私の研究結果は、素晴らしいだろう。」

「あんた、こんなにも人体魔石を作って一体何人犠牲にしたんだ。」

「人体魔石?ああ、この魔石のことか、いい名だね。直観的でわかりやすい。何人犠牲にしたかなんて覚えていないなぁ。すべて罪人だからね。」

「罪を犯したからって殺していい理由にはならないだろ!命なんだぞ。」

「変なことを言う。ここは王国なんですぞ。王国に仇名す者は必要ありませんな。」


理解できない。

「狂っている。」


「そうですかな?私とあなたは似ていると思ったのですがね・・・」

似ているだと・・・一体何を言っているんだ・・・


「科学に目がないところとか、研究のために、なりふり構わないところですかねぇ?あなただって技術を完成させるために人を使って実験したではありませんか。」

そういってノイマンはひとつの資料を取り出す。

きっとあの論文だ。


「魔石間の魔素移動。この現象を利用した魔石病患者の体表魔石の排除。未完成の技術を根拠や検証なしに・・・いや、根拠を得るためにあのお嬢さんに・・・」

論文にはリナ個人のことまで記載していなかったはずだけど・・・研究者の感か、予測か。どちらにしろ、かなり情報をつかんでいるようだ。


「俺は、だれかを殺すために研究していたのではない。それにあれは助けを求める依頼があったからやったんだ。」


「どんな風に使われるかは本質的に重要な論点ではありませんな・・・それに無責任というものです。自分のやった研究の可能性には多かれ少なかれ責任を持つべきです。」


頭はくるっているけど、国の重役。

少しだけ、ほんの少しだけ理解できてしまった。と同時に怒られたような気分になる。

だからこそ聞いてみたくなった。


「あなたはどのように、この戦争に責任を取るつもりだ。」

「それは国の重役としてかな、それとも研究者としてかな?どちらにしろ答えは決まっていますなぁ。この人体魔石を完成させ、戦争に勝利する。それが私の務めです。」

そういってノイマンは大きい棚に手をかけ、扉を開ける。

そして俺は目を見開く。


「ノイマンの言う通りだ。我々は戦争に勝ってこそ、その役目を果たせる。」


新しい声が後方から聞こえるが反応できない。

アレクだけが振り返り、そしてアレクも目を見開く。


棚の中にあったのは人間丸々一人分を覆いつくす人体魔石。

サイモン・ローリングと名付けられたタグ、あの見た目、胸についている家紋。

間違いない彼がウィリアムの父親だ。


アレクの目線の先にいたのは、アレクの家を破滅へと追いやった張本人だ。

アレクと同年代であり、同じような背丈をしている。違うのは髪色ぐらいで黒色だ。

しかもバトルアックスを得意とするところまで同じだ。まるで本当の兄弟のように育ったのに、目の前の男は家族を殺したのだ。


にらみ合いが続く。

先にアレクが動く。

手に持っていた小刀で、現れた男に切りかかる。男は手に持っていたバトルアックスを巧みに動かし、アレクを受け止める。


「全く会合の時間になっても来ないと思って来てみれば、厄介な人間が侵入しているではないか。なぁアレクよ。」

「あなたはどうして、どうして戦争なんか・・・」

「仕方のないことさ。国を運営するということは、ただならぬことなのさ。お前にはわからないことだろうけどな。」

謎の男はアレクの攻撃を完全にいなしきり、どころか反撃すら加えている。アレクは得意としている武器ではない、さらに間合いも狭く攻撃力は低い。完全に不利な状況となっている。


しかし、実力は拮抗しており、すぐに決着がつくことはなさそうだ。


俺は目の前のノイマンを睨みつける。

「おお、怖い怖い。この男は王様に向かって文句を言ったのです。罪に問われて当然でしょう。」


何が当然な物か。しかし、今の発言より、確信した。サイモンは王に直訴しているはずだ。

魔石に包まれた男は自分の発言を実行し捕えられた。

そしてノイマンの実験材料にされてしまったのだ。なんて無謀な。


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