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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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山間の戦地2

メガネのように装着した望遠鏡から炎の中心が見えてくる。まちがいないウィリアムだ。

なんだか懐かしいとともに、心なしか大きくなったようにも感じる。

成長期の男の子はちょっと見ない間に大きく変わるな。


関心していると、ウィリアムがだいぶ迫っていた。


というよりもウィリアムとは別の塊が飛んで来ていた。

望遠鏡を外し全体を見ると、ただの炎の塊だった。

ウィリアムが帝国軍に向けてはなったものだ。


とっさに空気の塊を作り、ぶつける。

炎の塊は空中に拡散し、突如としてその勢いを失った。


ウィリアムは今までにないことに驚き、空中で動きを停める。やがて目の前の炎が晴れて二人は対面する。

「久しぶりだなウィリアム。」

「なんで、どうしてここに・・・」


俺とウィリアムはゆっくりと下降を開始する。

両者ともに高速で移動したため、誰もいない野原に降りようとしていた。


「お前の姉さんとメイドから依頼があってな、お前を連れ戻すように言われているんだ」

「姉さんは、姉さんは今どうしているんですか!?」


「今は帝国で過ごしているよ。安全は確保されている。」

「そう・・・ですか。タロウさんが救い出してくれたのですね。良かったです。」

「救うなんて大それたことはしてないよ。・・・ウィリアム一緒に帝国に行かないか?」

「えっ」


ウィリアムは俺の言葉が信じられないようだ。

少しの迷いのあと、はっきりと口にする。

「大変嬉しいお誘いですがいけません。僕はまだ戦わなければならないのです。」

「何故だ?お前の姉はもう王国にはいないんだぞ」


「姉だけじゃないんです!・・・父もいるんです・・・」


なんということだ。

ウィリアムの父は王に直訴をしたと聞いていた。正直、そんな無謀なことをすれば命はないと思っていたが・・・

正直、最悪の展開だ。


「それに僕は貴族だ!今戦っている兵士たちを置いて一人だけ逃げ出すなんてできない!」

ウィリアムは覚悟を決めて両手に炎をまとう。


「まて、ウィリアム。俺は戦いに来たんじゃない!よく考えるんだ。」

「タロウさんこそ、よく考えてください。今は戦争中で、ここは戦場なんですよ!。そんな誘い、信じられるわけないじゃないですか!」


やるしかないのか・・・

「だいたい本物のタロウさんかどうかも分からないのに・・・タロウさん、僕をどうしても連れていきたいというならば、僕を倒して捕虜としてとらえてください。」

涙を流しながら唯一とも思える解決策を出す。

敵兵に捕えられれば、命がないかもしれないというのに、俺を信じてこんなことを言うのだから・・・

こうなったら勝つしかない。


ウィリアムに勝ってウィリアムを捕虜にする。

個人的に尋問でもする体でも何でも理由をつけて連れ帰る。


俺は覚悟を決め、体の魔素に意識を向け、さらに周囲の魔素を吸収し始める。

互いのすぐ後ろには、両軍が迫りつつある。もう時間もなさそうだ。


目の前のウィリアムに意識を向けると、炎の塊が迫っていた。


「うわぁあぶねぇ」

自分に風を吹いて急加速する。


「すみません。次行きます!」

謝罪とともに攻撃が飛んできた。


空気の塊をぶつけ、炎を止める。

ぶつかった二つは周囲に拡散して辺り一面に火をつける。


「くそっこのままじゃ、火の海だ。」


片腕で風を放ちつつ、空いた腕に電撃をまとう。

ウィリアムに狙いを定め、放つ。


ギラギラと光って目立つが、高速で移動する電撃だ。避けるすべはない。


と、思っていたがウィリアムは自分の周囲に炎を纏い雷撃を防ぐ。なんという反射神経なのか

炎の扱いだけならば魔法使いにも劣らない。

素晴らしい。


ウィリアムは2人を取り囲むように炎の檻を作り出す。

なんという熱気だ。大量の熱で蒸されてしまう。

周囲の空気を操り、炎の檻を吹き飛ばす。


「さすがですね。タロウさん。何をやっても跳ね返される。これならどうですか。」

ウィリアムは両手、両足に炎をまとい、高速で飛来する。炎の力で自己強化をしているようだ。


上空へ飛行し、ウィリアムの攻撃をかわす。

ウィリアムが殴りつけた部分が爆発し、焼きつく。

ウィリアムも上空へ飛行し、追ってくる。


腕を伸ばすように炎の塊が伸び、燃焼する。

電撃を使って麻痺させようとするも、炎の防御によって防がれる。もちろん出力を上げれば防御を突破できるが、ウィリアムもただでは済まない。

となれば炎を無効化しウィリアムに直接触れて、電撃を流すしかない。


どうする!?

炎を防ぐための知識を頭の中から探し出す。


ひとまず思いついたことを試してみよう。まず安全にウィリアムに近づくためにアイツから出る大量の炎を無効化しないと!


「行きますよ!タロウさん!」

さっきまで泣いていた気がするのに、今は笑っている。本気を出しても傷一つつかない相手にスポーツでもやっている気になったか・・・

喜怒哀楽が激しい。まだまだ子供なのだ。


ウィリアムの攻撃をかわしながら、急下降し地上に向かう。


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