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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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帝国Ⅶ-4

「な、なぜここに」


「失礼ですね。この国は私の国ですよ。たまの息抜きです。」

女帝ヴェロニカ・アダムズ その人である。


「さて、帰ってきたというのに、報告の一つも上げずに、のうのうと過ごし、挙句の果てにはまたどこかへ行こうという。さすがは魔法使い様でございます。ですから、息抜きがてらお話を聞きに来たのでありますよ。」


すっかり忘れていた。確かに中間報告ぐらいはした方が良かったかもしれない。

「報告書のまとめに時間がかかっておりましてね・・・ノエルすまない。俺の部屋から適当に用紙を持ってきてくれないか?」

「いいよ。でも先に戦わないでよね。」


誰が戦うか・・・ノエルは目線を外すことなく屋敷の中へ入っていく。数分ののち、ノエルが紙の束をもって出てくる。

その間、女帝との会話はなく、外に備え付けられた椅子に座り、テーブルに肘をつく。

はたから見れば、全くこの国の王には見えない。


ノエルから紙の束を受け取る。

「あった、あった。簡単にですが、これまでの情報をまとめましたよ。」

良かった。報告事態は忘れていたが、メモはしっかりと残していたのだ。


丸められた紙をテーブルに置く。

女帝は紙の封を解き、文章を読んでいく。


この人自身がしっかりと呼んでいくのだな。正直なところ、傀儡の王で、国家の運用は側近の貴族たちが行っていると思っていたから驚きだ。


「なるほど、人をベースとした魔石ですか・・・それに予測される製造方法までわかっているとわ。恐るべき結果ですね。・・・概ね予想通りです。」


「! 知っておられたのですね。」

俺は女帝の目の前に座る。

この行動がいいかどうかわからないが、女帝から話を聞き出さずにはいられない。


「ならば、あの私の発表した論文が使われていることも知っておられたのですか?」

「知っていたわけではありません。しかし、もしかして・・・とは思っていました。お怒りになられましたか?」


「・・・いいえ、予測を立てて行動に移すことはよくあることだ。それよりも、その結果で十分ですか?」

「うふふ、ご冗談をおっしゃられますね。さらなる調査を希望いたします。製造方法から、その破壊まで」


どこからか現れた執事が紅茶を持ってくる。継がれた紅茶を優雅にすする。

前にあってからは時間が経っていないはずなのに、何処か自信のようなものを感じる。

戦争が彼女を急速に成長させているのかもしれない。


「気のせいでしょうか。依頼内容が増えている様に感じますが。」

俺の言葉に反応するように、彼女は屋敷の方を見る。

もちろん、彼女は屋敷の中に誰がいるか知っているし、この視線の意味するところはわかる。


「守るものが多いと、苦労いたしますね。」

「ヴェロニカ様には及びませんよ。」

冷静を装い、目の前の女性を見つめる。


俺の言葉を聞いたヴェロニカは頬を膨らます。

「もう少し動揺するかと思いましたのに、私の罪悪感を返していただきたいですわ。」

「罪悪感を感じるぐらいならやらなければいいのに・・・・」


感想を言うと、女帝の後ろで構えている騎士の帯剣に手がかかる。おちおち雑談もできない。


「息抜きの時間もありませんし、正式なお話をいたしますわ。」

女帝は立たずまいを直し、真剣な顔つきとなる。


「王国が開発した新型の魔石を破壊してください。また製造方法から製造工場の破壊、そして開発者の捕縛を依頼します。開発者に至っては生死を問いません。」


「中々難しい依頼ですね。そう簡単にはいきませんよ。」

「もちろんただとは言いません。あなたに爵位を与えます。爵位を持っているあなたは自分が納める領地をもち、人々を集めることができます。もちろんあなたが集めたい人々を領民としてもかまいませんわ。」


なるほど、そういうことか。

実際には広い領地を持たず、この屋敷だけでも領地として領民をかくまってもいい。

強引な方法だけど、確固とした居場所ができるというわけか。


「いいのですか。いうことを聞かない領主ができても。」

「完全な忠誠を誓っている貴族の方が少ないですわ。みな利益と保身のために駆け引きをしているだけです。もちろん逆もしかりですが。」

「なるほど、理解いたしました。どこまでできるか分かりませんが、その依頼をお受けいたします。ただし、わかっていますね。」


「ええ、この屋敷にいる方には不干渉とさせていただきますわ。殿方ですものね。」


? 何かとんでもなく勘違いをされている気がするが、とりあえず安全が確保できたなら、良しとしよう。

念のため、腕に覚えのある人間たちを傭兵として雇うか。

これで心置きなく、ウィリアムを探しに行ける。


「それでは私はここら辺でお暇しますわ。」

「ヴェロニカ様、最後に一つだけ聞きたい。あなたはこの戦争をどうやって決着をつけるのですか?私は戦場をこの目で見て、混沌を極めていると感じました。手の付けようがないほどに・・・」


女帝は少しだけ笑顔になる。

「私にそのような質問をするなんて、まるで、王様のような事を考えますね。冒険者だったはずなのに」


ん?何かまずいことを言ったか?


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