帝国Ⅶ-2
「どうしたもこうしたもありません。」
「そうですよ。タロウさん。」
「しっかり説明してくれ。」
「王国相手にどう戦うのか。」「今後の私達の生活について。」「一体何なんだこいつらは」
互いが互いに顔を見合う。
何言ってんだ?という顔をする。
「いいですか。まずはどうやって王国と戦っていくかを考えなければ、安心して明日も寝れません。」
「戦うにも休憩は必要ですよ。生活を安定させなければいけません。」
「お前たちは一体何なんだー!」
ワイワイとそれぞれが騒ぐ。
夜だというのに元気だな・・・
というか元気過ぎないか?こっちは結構疲れているのに
「あーうるさい!今日は疲れているんだ。部屋は好きに決めろ。明日のことは明日考える。みんなで明日自己紹介しよう。そして俺は・・・」
「俺は?」
「寝る。」
一言だけ言い残し、すぐにいつも使っている部屋に入り、ベットにダイブした。
長く使っていなかったが、しっかりと管理されていた。
きっとリルカがやってくれたのだろう。
明日お礼を言わないとな・・・
気づく間もなく簡単に意識を手放していた。
そのころ両隣の部屋を二人の女性がタロウを挟むように陣取っていたことは、のちに知ることとなる。
朝から、話し合いが始められた。
といっても自己紹介と、王国に行ってから何があったかという経緯を話すところから始まる。
ちなみに知恵を借りるために、コイルにも来てもらった。
一人で過ごすには広すぎた家は、大所帯となっていた。
「というと、タロウは王国の上級研究員に大立ち回りを決めて、完全に王国の敵となったということか?」
コイルが実に簡単にまとめてくれる。
そして、今自分の置かれている状況の厄介さに嫌気が指す。
「そう、みたいだな・・・」
「はぁ~相変わらず、問題に巻き込まれているようだな。それで、お前としては王国とどうありたいんだ。」
・・・難しい。王国に恨みなんてない。当たり前だが、戦いたくはない。
「戦いたくはないが、新型の魔石を使わせないようにしたい。それに、ウィリアムのことも気になる。」
「となると、もう一度、王国に行くことになるな。ということはいついくか・・・だな。」
視線を動かす。目線の先にはケガから回復して、何とか動きまわっているリナの騎士がいる。体調はだいぶいいらしい。
何とか全員が生き残った。
しかし、新天地での生活。慣れるまで時間がかかるだろう。少し近くにいてサポートするべきだろう。
「タロウさん。私たちのことは気にしないでください。」
何かを察したリナはすかさず、言葉をかける。
「だけど、ここら辺のことは知らないだろ。」
「はい、だけど、いつまでも頼ってはいられません。それに、弟のことを探していただけるのです。自分の生活ぐらい自分でこなして見せます。」
「うーん・・・わかった。もう一度王国に行くにあたって、入念に準備をしなければいけない。それまではサポートさせてくれ。」
「はい、わかりました。」
「私は今度は王国に行くぞ。なんだか危ないヤツがいるみたいだからな!」
ノエルが仁王立ちで宣言する。
「いやっ戦争なんだぞ。危ないんだぞ!」
「今回のお前は危なくなかったのか?」
「・・・危なかったけど・・・」
「そうだろ。タロウ、お前は強い。だけどそれは、魔法使いとしてで、戦士としては弱い。だから私が一緒について行ってやろうということだ!」
「いいのではないでしょうか。」
珍しくアレクが意見を口にする。
「これからウィリアムを探しに行く予定です。聞くところによると彼は戦闘地域で戦果を挙げているとのこと。ということは必然的に戦闘地域に赴くことになります。彼女の言う通り戦闘経験は重要な役割を果たすと思います。」
「みんながそういうなら・・・ノエル、一緒に来てくれるか?」
「もちろん!」
「よし、一旦まとめるぞ。」
コイルが取りまとめに入る。
「まずはタロウはもう一度戦闘地域に戻る。これはウィリアムとかいう男を助けるためだ。だが、場所が場所なだけに入念な準備をする。
その間、リナさんの世話もする。」
こんな感じだな・・・
当面の方針が決まったことで、その場は解散となった。
帰り際アレクが静かに話してくる。
「次の遠征ですが、私も同行します。が、場合によっては単独行動をさせていただくこともあるかもしれません。」
俺はなんとなく思うところがある。
「お前は家族の敵討ちがしたいのか?」
「・・・どうでしょうか。・・・」
「どうって・・・」
「もちろん家族を失った悲しみはあります。しかし、時間が経ち過ぎて恨みを忘れたような気がします。ただ許せないという記憶だけが残っている・・・気がします。」
「気持ちが動かないってということか・・・でもそれなら・・・」
「もう復讐など考えてはいませんよ。」
「だったら・・・」
「ただ、少し問いただしたい男がいます。どうやら王国の中枢にいるようなので・・・」
「そうか、願わくば、思惑の男が現れないことを願うよ。」
少しだけの会話を残して、アレクは去っていった。




