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オタク、線をまたぐ  作者: 物理試す


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ホッカ6

城の裏にはへんてこな物体があった。

がちがちに金属の板で固定された車列だ。

このままではまともに、曲がることは難しいだろう。


しかし、曲がる気は毛頭ないので、問題ない。

さらに、長方形の薄い板が前方上側に取り付けられていた。

誰が見てもいびつな形だが、取り付けた本人は、大変満足そうだ。


「よし、準備ができたら、早速出発するぞ。」

近くにいた人々に話かける


今から俺は憲兵をなぎ倒し、街の女性を誘拐して去っていくという筋書きなのに、見送りに来ている人が多数いる。


大部分が、リナのファンである。

やはり彼女はカリスマがあるようだ。

たった数日でこんなにも人々を魅了するなんて・・・


そんなリナと彼女の騎士たちは荷台につかまって体を固定している。

ここ数日の改良で、荷台には体を固定できるように取っ手やベルトが取り付けられていた。

もちろんアレクもいる。


しかし、ここまで旅した二人組は魔導四輪には乗っていなかった。

見送りの側にいたからだ。


「馬子にも衣裳だな。」

「馬鹿にしてんじゃないわよ。ぶち抜くわよ。」

「怖い、怖い」

クララは貴族のお嬢様としてふさわしい格好をしていた。

昨日の決定からたった一日で、ここまでなるか。さすがだな。

というか、謹慎はどうしたんだ・・・


「謹慎なら、お父様に貴族としてふるまっていくと言ったら解かれたわ。やっぱり駄目駄目ね。」

娘に甘い・・・なんだか、クララのルイスに対する評価が低い理由を垣間見た気がするぞ・・・


「何はともあれ、そろそろ出発する。全員離れてくれ。」

俺の掛け声とともに、見送りに来ていた者たちが離れていく。全員が離れたことを確認して、杖を立てて目を閉じる。


今回は高出力だからな、入念にイメージを広げていかないと。


魔法の領域まで集中力を高める。

周囲の魔素を集め、風の操作に変換していく。


大部分を車列を持ち上げるために、車両から地面に吹き付けるような空気の流れをイメージする。

地面に跳ね返った空気の流れが周囲に拡散されていく。

作用・反作用の法則をにより、車列は浮き上がり始める。


ルイスは周囲よりは高い場所にある自分の部屋から外を眺めると、本来はあり得ないことが起こっている。

事前に聞いていたとはいえ、目の前の現象に驚きを隠し切れなかった。

「これが魔法というものか。この世のすべての物理現象を意のままに操り、その力は一国の軍事力を優に超える力。」


「親父、やっぱり敵対しなくて正解だったな。あんなのと戦っていたら、今頃欠片も残っていなかったぜ。」

彼と一緒に見ていた二人の息子のうち、長男から声をかけられる。


「そうだな。」

目の前では上昇した車列が空中で静止し、その場で方向転換を始める。

本来は持ち上げることもできない重たい物が軽々と宙に浮いている。

操っている本人は集中しているのか、難しい顔をしている。

一体何がどうなっているのか・・・


方向を定めた車列はより上空へ向けて加速を始める。

どんどんと高度が上がり、速度も矢より速くなる。


「恐らくこの戦争は負けるだろう。」

「珍しいね。父さんがそんなこと言うなんて」

2番目の息子は少し驚いたように質問する。


「目の前であんな物を見れば、誰だって納得する。理由も分からない原理で飛翔する物体。その速度、禁忌の森から帰還する実力。どれをとってもこの国に対抗する手段は無い。」


そんな男が帝国にいる。

「確かに彼だけならどうにでもなったかも知れないけれど、優秀なリナさんがぴったりと横についているしね。調査結果によると、帝国側の優秀な人々とも交友関係があるみたいだし・・・」


帝国の姫は、経験が少ない。だが、彼女は天才的なカリスマを持っている。人の上に立つ存在だ。

ともすれば、あの魔法使いすら使いこなすようになるだろう。

将来が楽しみであると同時に、大変な脅威だ。


「やはりこの戦争には負けるだろう。しかし、戦争には負けても、地獄には落ちない方法を模索する。」


どういうことかわからないという表情をする息子たち。

「戦うだけが戦争ではない。むしろ戦争の本質は始まる前と終わり方にある。非戦闘戦争こそが大切なのだ。」


「具体的にはどうする?」

「始まり方を間違えた王国は終わり方に全てをゆだねるしかない。重要なのは仲間作りだ。まずはこの戦争に対し、否定的な貴族と連絡をとる。さらに、ニッホンともコンタクトをとれ。仲間に引き入れるのではない。交渉相手として手数を増やすのだ。この戦争も帝国の不景気が発端となっている。」


「了解。それにしても随分とかわったな~リナさん。」

息子たちがくだらない話を始めた。

「好みだった?」

「いや、僕の好みはもっとグラマラスなほうが好みだな・・・」

「わかってないな。細い子のほうが・・・」


全く、先が思いやられる。

成長したのは図体だけのようだ。少しは頭が使えるようになるとマシなんだがな・・・


ルイスの目線の先には完全に点になった魔導四輪の車列があった。


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